中国から団体旅行客が再びやってくる どうする日本

中国政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて制限してきた中国人の日本への団体旅行を、10日から解禁すると発表しました。

「爆買い」で知られる中国人旅行者。4年前の2019年には、およそ953万人と訪日外国人の3割を占めていました。

はたして、今後のインバウンド需要のカギをにぎるのか。
歓迎する声がある一方で、混雑を懸念する声も…

空の玄関口 成田空港に来ていた中国人旅行者は

成田空港で、来日していた中国人旅行者に話を聞きました。

「お年寄りや子どもは団体旅行を利用する人が多いと思います。どちらの国にとっても解禁はとてもよいことだと思います」(旅行で南京から母親とともに到着した女性)

「中国には日本に行きたいと思っている人がたくさんいます。団体旅行は個人旅行より安いので、解禁されたのはよいことだと思います」(北京から訪れた男性)

都内デパート「売り上げ回復加速に」

都内のデパートでもインバウンド需要がさらに伸びることに期待を寄せています。

東京・中央区のデパート「松屋銀座」ではコロナ禍からの回復に伴って去年秋ごろから外国人旅行者の来店数の増加が続いています。

この店舗ではコロナ禍の2020年度には外国人旅行者の売り上げが一時、ほぼゼロにまで落ち込みましたが、このところは円安の効果もあって欧米やアジアなどからの客が高級ブランドの商品を買い求めるケースも多くみられるようになったということです。

先月のこの店舗の売り上げは、コロナ禍前の2019年の同じ月をすでに超えていて、およそ35%のプラスとなっています。

ただ、中国からの観光客が多く購入していた化粧品は、売り上げがコロナ禍前の水準には依然として戻っていないということです。

松屋 顧客政策課の龍野由木課長は「足元ではコロナ禍前の水準を上回る売り上げになっている分野もあるが、化粧品などはまだ戻ってきていない。団体客はお土産でたくさんの商品を購入する傾向にあるので、期待したいです」と話していました。

札幌 二条市場「ホタテの貝柱 たくさん並べたい」

観光地でも期待の声が聞かれました。

札幌市の「二条市場」では、中国人旅行者に「ホタテの貝柱」を干して袋詰めにした商品が特に人気で、海産物の加工品の販売店は、できるだけ多くの商品を確保して店頭に並べたいとしています。

海産物の加工品販売店の従業員、山中すみよさんは「中国人旅行者の方々は購買意欲が高く、高価な商品もたくさん買ってくれます。ぜひ足を運んでほしい」と話していました。

このほか京都市内の旅館や神戸市内のレストランからも、売り上げの増加に期待する声が聞かれました。

民泊予約サイト運営会社「ようやく解禁された」

宮城県に本社がある、民泊などの予約サイトの運営会社は外国人利用者が4割で、中国語のサイトも作っているということです。

この会社によりますと、民泊の利用者は個人旅行が多いということですが、中国では日本への個人旅行はすでに解禁されているものの、利用者は以前のようには回復していないということです。

ただ、今回、団体旅行が解禁されたことで日本への観光需要が喚起され、個人の中国人観光客も再び戻ってくることを期待しているといいます。

予約サイトを運営する「百戦錬磨」の大野彰則取締役は「ようやく解禁されたというのが率直な感想で、歓迎したいです。個人旅行が増えて、民泊に注目が集まってほしい」と話しました。

中国 上海や北京では…

中国最大の経済都市・上海でも、日本への旅行に期待する声が聞かれました。

「海外旅行がさらに便利になるので、ニュースを聞いてとてもうれしい。行きたいところはたくさんありますが、家族で日本に旅行に行き、日本の建物を見たり、文化を感じたりしたい」(30代女性)

「子どもと日本に遊びに行きたい。大阪のテーマパークで遊んだり日本の文化を感じたりしたい」(6歳の娘がいる30代女性)

その一方で、中国政府が反対する福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する計画を理由にあげて「日本に行きたくない」という声も聞かれました。

また、首都・北京にある大手の旅行会社にも早速、団体旅行の問い合わせが相次いで寄せられているということです。

京都 嵐山では混雑に警戒

国内の観光地からは、混雑を警戒する声も聞かれました。

京都有数の観光地「嵐山」にある商店街では、売り上げの回復に期待する一方、周辺の歩道が混雑して交通事故が起きないか警戒を強めています。

歩道の混雑はコロナの拡大前から課題となっていましたが、対策は十分ではないため、来週からは警察の協力のもと、付近に設置されているスピーカーを通して、英語と中国、それに韓国語で歩道から車道に出ないことや横断歩道を渡ることなどを呼びかけることにしています。

土産物店の店主で商店街の会長も務める石川恵介さんは「商店街はコロナで大変な思いをしてきたので、中国の団体客には期待している。一方で、混雑して事故が起きれば危険な観光地と言われかねないので対策を徹底したい」と話していました。

神奈川 鎌倉では観光客増加でポイ捨て懸念

また、日本有数の観光地、神奈川県鎌倉市の小町通りにある商店街は、国内外から多くの観光客が訪れていて、コロナ禍前は外国人観光客の半数近くが中国から訪れていたといいます。

ただ、食べ歩きをする観光客のポイ捨てが課題になっていて、商店街の路地や植え込みに、食べ物の串や包み紙などが捨てられそのたびに店の人たちが拾っているということです。この商店街では、コロナ禍前には日本語と英語で書かれたゴミ捨て用の袋を配ってポイ捨てをやめるように呼びかけていたといいます。

今回の団体旅行の解禁で再び観光客が増えることで、商店街ではポイ捨ても増えるのではないかと懸念しています。

鎌倉小町商店会の今雅史会長は「コロナ禍で大きなダメージを受けた商店街としては団体旅行の方が戻ってくるのはありがたい話しです。中国の方々を歓迎しつつ、ゴミを持ち帰ってもらうためにどうしていくか商店会で話し合いたい」と話していました。