【解説】モスクワで相次ぐ無人機攻撃 その現状と広がる波紋

ロシアの首都モスクワで相次ぐ無人機攻撃。ウクライナ側が、これまでと違って、ロシア領内での攻撃を認めるようなメッセージを出していて、波紋が広がっています。無人機攻撃の現状、ウクライナのメッセージ、そして広がる波紋についてまとめました。

「キャッチ!世界のトップニュース」 別府正一郎キャスターが詳しく解説。

※8月2日「キャッチ!世界のトップニュースで放送」
※動画は3分33秒、データ放送ではご覧になれません。

まず現状ですが、現場は、「モスクワシティ」と呼ばれる、高層ビルが建ち並ぶ近代的なビジネス街です。モスクワの西の方にあり、クレムリンからおよそ5キロ離れています。

7月30日に、飛来してきた無人機が墜落して建物の一部が損壊したのに続いて、その2日後の8月1日、再び攻撃がありました。

被害を受けた高層ビルには、複数の政府機関のオフィスがあると伝えられています。
少なくとも1日の攻撃では、けが人は出ていないと言うことです。

注目されているのが、ウクライナ側のメッセージの変化です。
これまでもロシア領内での無人機での攻撃はありましたが、ウクライナ側が関与を認めることは通常ありませんでした。

しかし、今回は、ウクライナ大統領府のポドリャク顧問が、SNSで「モスクワは急速に本格的な戦争に慣れつつあり、まもなく、戦争を始めた側の領土に移っていく。より多くの無人機などがやって来る」と投稿しました。

また、ゼレンスキー大統領も7月30日「戦争は徐々にロシアの領土に戻りつつある」と述べています。
今回の無人機攻撃への関与を明確に認めているわけではありませんが、ロシア領内での攻撃について、これまでより、踏み込んだものだと受け止められています。

当然、波紋も広がっています。

ロシア国内では、「モスクワシティ」で働くようなエリート層への心理的な影響が指摘されています。

ロシア軍が、ウクライナの住宅や学校などに繰り返しているミサイル攻撃で多数の死傷者が出ていることからすれば、無人機の攻撃は規模が小さいとは言え、モスクワのエリート層たちがふだんの生活であまり感じることがなかった攻撃の恐怖が身近になったからです。

またこれこそが、ウクライナ側のねらいだと見られますが、ロシア国民の間で、「プーチン政権は自分たちを守ることができないのではないか」という不信感を生む効果もあると言われています。

その一方で、西側にも波紋が広がっています。西側は事態のエスカレートを強く警戒していますので、ウクライナ側によるロシア領内への攻撃が増えれば、西側としては懸念も出てくるからです。

ウクライナ側として、ロシアへの心理戦の一環で行っていると見られる無人機攻撃。

今後その規模や回数が増えるのか、その影響も含めて、注意深く見ていく必要がありそうです。