逆転呼んだアギトとヒビキ 鳥栖工 兄弟バッテリーが勝利に貢献

夏の全国高校野球に初出場を果たし、富山商業との延長12回の接戦を制した佐賀の鳥栖工業。チームの甲子園初勝利を呼び込んだのは「互いの良さが引き出せる」という兄弟バッテリーでした。
(甲子園取材班 記者 並松康弘)

鳥栖工業のキャッチャーで、4番を打つ3年生の、松延晶音選手とリリーフでマウンドに上がった1年生の響投手は2つ年の離れた兄弟です。

高校からキャッチャーに転向した兄とバッテリーを組みたいと、響投手はこの春、鳥栖工業に入学し、2人がバッテリーを組むことのできる最初で最後の夏に甲子園出場を果たしました。

富山商業との9日の初戦、1対1の同点の6回に2人目としてマウンドに上がった響投手は「ゴリゴリに緊張していた」と最初のバッターにフォアボールを出しました。

すると、すかさずタイムを取ってマウンドにかけよってきた兄から「ストレートで押していく自分のピッチングするだけだ。腕を振ってこい」と声をかけられました。

これで力をもらった響投手は次のバッターを、力強いストレートで見逃し三振に打ち取り、スタートを切っていた一塁ランナーを晶音選手が、鋭い送球でアウトにして、ダブルプレーをとりました。

「さすが頼りになる」と兄に助けられた響投手は、このあと自分のピッチングを取り戻し、自己最速を更新する144キロのストレートで相手打線をねじ伏せていきました。

晶音選手もピンチのたびに声をかけ、低めの変化球は体を張って止めて弟を助け、9回まで相手に得点を与えませんでした。

試合はノーアウト一塁、二塁から始まる延長タイブレークに入り、11回、晶音選手のパスボールで1点を失った際には、「しっかりしろ」と兄にげきを飛ばしたと笑った響投手。

その後、同点に追いつき、12回はしっかり無失点に抑え、チームはそのウラ1点を取り、3対2でサヨナラ勝ちしました。

試合後、お互いのプレーについて、晶音選手は「大舞台でも堂々としていて、たくましい弟」と話せば、響投手も「ピンチでも冷静で、自分の持ち味を最大限引き出してくれる兄」とたたえ合いました。

アルプス席には両親と妹も応援に駆けつけ、父親の慎一郎さんは「自分の子ども2人が甲子園でバッテリーを組んでいることが信じられません。自慢の息子たちです。帰ってきたら焼き肉です」と目を細めていました。

それぞれの名前は特撮ヒーローに由来しているという兄弟バッテリー。

「1日でも長くバッテリーを組みたい」と口をそろえた2人のヒーローの夏は、まだまだ終わりません。