マイナンバーカード総点検 中間報告 11月末期限にさらに点検へ

政府は8日、マイナンバーカードをめぐる一連のトラブルを受けた総点検の中間報告を公表し、カードと一体化した保険証に誤って他人の情報が登録されていたケースが新たに1000件余り確認されたことなどを明らかにしました。

2023年11月末を期限にさらに点検を行い、最終的な結果を公表するとしています。

誤って他人の情報登録 新たに1069件

政府の「マイナンバー情報総点検本部」は、カード取得者向けの専用サイトで閲覧できる情報がマイナンバーに正確にひも付けられているか、点検を進めています。

8日は岸田総理大臣も出席して総点検本部の会合が開かれ、中間報告が行われました。

それによりますと、カードと一体化した保険証に誤って他人の情報が登録されていたケースが新たに1069件確認され、これまでの累計は8441件に増えました。

また、公務員などの年金を運営する「共済組合」でもあわせて118件、マイナンバーと年金情報のひも付けに誤りがあったほか、障害者手帳とのひも付けでは、事務処理を担う都道府県などの自治体のおよそ2割にあたる50の自治体で、適切な方法で作業を行っていなかったことが確認されました。

政府はこれまでの点検状況を踏まえ、マイナンバーと本人の情報をひも付ける際に照合する情報の種類が少ないなどトラブルが懸念されるケースでは、今後、すべてのデータを点検するとしています。

さらに再発防止策として、マイナンバーの登録事務で新たなガイドラインを策定するほか、情報の正確性を定期的に確かめる仕組みの導入を検討するとしています。

政府は2023年11月末を期限としてさらに点検を行ったうえで、最終的な結果を公表することにしています。

マイナンバーカードの総点検とは

マイナンバーカードをめぐる一連のトラブルを受けて、政府は2023年6月、河野デジタル大臣をトップとする省庁横断の「マイナンバー情報総点検本部」を設けて運用面の課題の把握や再発防止策の検討などを進めています。

総点検では、マイナンバーカードを取得した人向けの専用サイト、「マイナポータル」で閲覧することができる税や健康保険証、住民票の情報など29の項目について、マイナンバーへの情報のひも付けが正確に行われているかを確認します。

これまでに政府は、情報のひも付けを行う自治体や健康保険組合などの機関を対象に、ひも付けを行う際に利用者のマイナンバーをどのように取得しているかや、マイナンバーを本人の情報と照合する際に氏名や生年月日、住所など何種類の情報で確認したかを調査しました。

そのうえで、少ない種類の情報で照合してひも付けをした場合など、今回の中間報告で示したトラブルが懸念されるケースについては、今後、すべてのデータを点検して誤った情報を修正するほか、情報の漏えいが起きていないかなどを調査し、2023年秋までをめどに公表するとしています。

また、再発の防止に向けては、新たに健康保険証の申請を行う際などにマイナンバーの記載を義務づけたほか、データを機械的に照合するシステムの整備などを検討するということです。

保険証と国民・厚生年金は

マイナンバーカードと一体化した健康保険証をめぐっては、全国に3411ある健康保険を運営する組合のうち、情報を手順どおりに確認していなかったなどトラブルが懸念されるおよそ4割の組合でデータの点検が行われました。

その結果、他人の情報が登録されていたケースが、新たに1069件見つかりました。このうち5件では、医療費や処方された薬などの診療情報が他人に閲覧されていたことが確認されました。すでに判明していたケースと合わせると、他人の情報が登録されたのが8441件、診療情報が他人に閲覧されたのが15件となりました。

原因としては、新しく組合に加入する人が、間違ったマイナンバーを申請していたり、申請時にマイナンバーを記載しておらず、組合が住民基本台帳システムで照会した際に、手順どおりに確認せず、他人の情報を登録したりしたことなどが考えられるとしています。

このため今後、登録済みのデータすべてを住民基本台帳システムと照合し、誤りがないか確認するとしています。

一方、厚生労働省によりますと、日本年金機構が管理している国民年金や厚生年金については、誤って登録されたケースはないということです。

生活保護・介護保険も個別点検

「マイナポータル」で閲覧できる29項目のデータのうち、厚生労働省が所管する生活保護の情報についてもおよそ80の自治体で適切な方法でひも付け作業が行われていなかった可能性があることがわかりました。

生活保護の情報は、福祉事務所を設置する都道府県や市町村がひも付けの実施機関となっていて、支給額や支給年月などの情報がひも付けられています。政府は今後、情報のひも付けに誤りがないか個別情報の点検を求めることにしています。

介護・高齢者福祉分野では介護保険証に記載されている、要介護状態の区分や介護サービスを利用した際の自己負担額などの情報がひも付けられています。

ひも付けは市町村や広域連合が行いますが、このうちおよそ90の自治体で適切な方法で行われていなかった可能性があることがわかり、今後、さらに精査した上で個別情報の点検を求めることになりました。

児童手当60の自治体で個別点検

「マイナポータル」で閲覧できる29項目のデータのうち、こども家庭庁が所管する児童手当の情報についてもおよそ60の自治体で適切な方法でひも付け作業が行われていなかった可能性があることがわかりました。

児童手当の情報は、全国の自治体がひも付けの実施機関となっていて、支払額や支給年月などの情報がひも付けられています。政府は今後、情報のひも付けに誤りがないか個別情報の点検を求めることにしています。

課税情報 誤ってひも付け初確認

総務省によりますと、沖縄県浦添市で住民の課税情報が、別人のマイナンバーに誤ってひも付けられ、専用サイト「マイナポータル」を通じて、情報が閲覧されたケースが1件確認されたということです。

課税情報が別人のマイナンバーにひも付けられたミスが確認されたのは、初めてだということです。

労災遺族年金で1件 ひも付け誤り

マイナンバーの個人番号にひも付けられている、労災保険の遺族補償年金に関する情報について、徳島県内で1件のひも付けの誤りがあったことがわかりました。

誤りがあったのは遺族に支払われる「遺族補償年金」の情報です。マイナンバーのひも付けは各地の労働基準監督署などが行いますが、支給対象者の遺族1人に別の遺族の個人番号が登録されていたということです。

入力の際に「氏名」、「生年月日」、「性別」、「住所」の4情報で照合することを怠っていたということで、マイナポータルには▽本人の給付情報が表示されなかったり、別の人の給付情報が表示されたりする状態になっていたということです。

個人が特定できる情報が表示されることや給付額への影響はありませんでしたが、誤りがあった徳島労働局鳴門労働基準監督署は遺族2人に謝罪したということです。

厚生労働省は、鳴門労働基準監督署で秋までに全件の照合を行うとともに、他の労働基準監督署でも同様の事案がないか確認を進めることにしています。

岸田首相「国民の信頼回復に取り組む」

岸田総理大臣は「マイナンバー情報総点検本部」の会合で、「ひも付けの誤りの事案が相次いで確認され、不安を招いていることを重く受け止め、マイナンバー制度に対する国民の信頼回復に政府を挙げて取り組む必要がある。コロナ対策で経験した『デジタル敗戦』を二度と繰り返さないため、歩みを止めてはならない。国民が安心してデジタル社会に移行できるよう政府、自治体、関係機関が一丸となって全力を尽くしてもらいたい」と述べました。

河野デジタル相 「期限ありきではなく丁寧に点検を」

河野デジタル大臣はマイナンバー情報総点検本部の会合のあとに開かれた会見で、「個人情報保護の観点から重く受け止めなければいけない事案だと思っている。こうしたことをなくすために総点検を行っているわけで、情報をひも付けする機関と協力しながらしっかり対応していきたい」と述べました。さらに、総点検の期限については「原則11月末を期限としてお願いしているが、個別の機関の状況に応じて期限ありきではなく丁寧に点検することを優先したい」と述べ、柔軟に対応していく考えを示しました。

これまでのトラブルは

マイナンバーをめぐっては、これまでもトラブルが相次いで発覚してきました。

デジタル庁によりますと、このうちマイナンバーカードと一体化した健康保険証の関連では、他人の情報が登録されていたケースがすでに7000件余り確認されていて、8日新たに発表されたケースを合わせると、8441件に上ります。

また、公務員などの年金を運営する「共済組合」では、他人の年金情報がひも付けられる誤りがこれまでに1件確認されていましたが8日、同様の誤りはあわせて118件に上ると発表されました。

さらに、マイナンバーに他人の障害者手帳の情報がひも付けされていたケースはこれまでに2883件確認されていました。

障害者手帳に関しては8日、事務処理を行う全自治体のおよそ2割にあたる50自治体で、ひも付け作業を適切な方法で行っていなかったことも明らかにされました。

他人の課税情報や他人の労災年金の情報がひも付けられていたケースもそれぞれ1件あったと、8日発表されました。

このほか、これまでにマイナンバーとひも付けた、国の給付金などを受け取る公金受取口座として、他人の口座が登録されていたケースが22件、その可能性が高いケースが940件、家族などとみられる名義の口座が登録されていたケースが、およそ14万件、確認されています。

また、マイナンバーカードを使って、コンビニで住民票の写しなどの証明書を交付するサービスでは、別人の証明書が発行されたり住所変更が反映されず、古い証明書が発行されたりするトラブルがあわせて60件、マイナンバーカードの取得などで、ポイントがつく「マイナポイント」が、誤って他人に付与されたケースも172件確認されています。

全国知事会「作業期限は柔軟な対応を」

全国知事会は政府の中間報告を受けてコメントを発表しました。この中では「障害者手帳に関する事務について、関係するすべての自治体が点検対象になったことを除けば、ひも付け作業の実態把握の結果を踏まえて対象が選定されており、対象を精査することを求めてきた全国知事会の提言に、おおむね沿うものであると受け止めている」としています。

その上で「今後の点検は、地方自治体の実情を踏まえて行うとともに、原則11月末までとなっている作業期限については、確実な点検を行うためにも柔軟に対応してほしい。加えて、作業にかかる費用は確実に措置してほしい」としています。

立民 岡田幹事長「岸田内閣に責任がある話」

立憲民主党の岡田幹事長は記者会見で「いろいろなミスが起こった原因については、マニュアルが十分ではなかったとか、現場に負荷がかかりすぎたということも考えられる。個人情報にも関わる話なので、ミスのないようにしっかりと進める責任が政府にある。河野デジタル大臣はもちろんだが、岸田内閣に責任がある話だ」と述べました。

公明 山口代表「メリットを丁寧に説明を」

公明党の山口代表は福岡市で行った講演で「トラブルの要因はヒューマンエラーに由来するものがほとんどと言っても過言ではなく、根本的なシステムの欠陥があるとは思えない。同じようなトラブルが起きないことを徹底し、健康保険証との一体化にどんなメリットがあるのかを国民に丁寧に知らせていく必要がある」と述べました。

共産 小池書記局長「命に関わる重大問題」

共産党の小池書記局長は記者会見で「政府が調査をするたびに問題が次々と出て、底なしの様相を呈している。マイナンバーカードと一体化した保険証に他人の医療情報がひも付けされているのは、保険診療の根幹に関わるありえないミスで、命に関わる重大問題だ。岸田総理大臣の責任も重大で、予算委員会の集中審議を引き続き求めていきたい」と述べました。