だっこひもの子どもと自転車に乗るのはとっても危険。
たとえばこんなケース。
赤ちゃんをだっこして自転車は危険・違反 どうすればいい?
だっこひもで赤ちゃんと一緒に自転車で移動。よく目にしませんか。
でも“だっこ自転車”はとっても危険。そもそも違反です。
安全に乗るにはどうすればいいのか調べてみましたが…。
1歳未満の子どもを安全に自転車に乗せる方法は見当たらないのです。
でも、子育ての中で、どうすればいいのでしょうか。
一緒に考えてみませんか?
(大阪放送局 記者 中本史)
“だっこ自転車” 4人に1人が転倒・転落!
ペダルをこぐ親の足が上がって赤ちゃんを上下に揺さぶります。
その勢いで、だっこひもの上に押し出された赤ちゃんが転落。
さらにこんなケースも。
親の両腕の間に赤ちゃんがいるので、ハンドル操作がしにくくなります。
カーブが大回りになって曲がりきれず、転倒。
赤ちゃんは投げ出されてしまいます。
想像しただけでゾッとしますよね。
実際に事故はたくさん起きています。
だっこ自転車は禁止行為
国民生活センターは「だっこひもで子どもと自転車に乗ったことがある」という1000人に去年9月、アンケートを行いました。
すると4人に1人(25%)が、子どもが転落をしたり、子どもをだっこしたまま転倒をしたりしたことがあると答えました。
事故になりかけて、ひやっとした経験があるという人は、6割に上りました。
危険がいっぱいの“だっこ自転車”。
道路交通法と各都道府県の道路交通規則で、だっこは禁止行為とされています。
だっこで自転車に乗ってはいけないようです。
安全な乗り方を調べてみたけど…
赤ちゃんと安全に自転車に乗るにはどうすればいいんでしょう?
道路交通規則に、“おんぶ”は禁止行為から除外されると記載されています。
そう。
“おんぶ”なら禁止行為にならないんです。
たしかに、ひざでだっこひもから押し出してしまうこともないし、ハンドルも自由がききますよね。
でもちょっと待って。
おんぶで自転車に乗っても、安全のため、そもそもヘルメットが必要です。
子どもにもヘルメットを着用させないと、道路交通法の努力義務の違反になります。
というわけで、赤ちゃん用のヘルメットを探してみましたが…。
ない。
ないんです。
実は1歳未満用の安全なヘルメットは日本国内にはありません。
国内で安全性が保証されている“SGマーク”の認定基準は、1歳以上用であることが条件なんです。
ヘルメットだけでなく、自転車に取り付ける子ども用の座席も同じでした。
ということはつまり…。
日本では1歳未満を安全に自転車に乗せることは想定されていないようです。
赤ちゃん用ヘルメット作れない?
今後、1歳未満用のヘルメットや座席が開発され、製品化されることはないのでしょうか。
SGマーク制度を設けている「製品安全協会」によると、ヘルメットの重さで赤ちゃんの首や腰に大きな負担がかかってしまうということです。
成長途上の赤ちゃんでも安全にかぶれるヘルメットを作ることは難しいんです。
1歳未満用の座席を作ることも難しいそうです。
自転車メーカーによると、チャイルドシートのような形や大きさが必要とのこと。
これを自転車に取り付けると、道路交通法で定められた自転車の大きさの基準を超えてしまうのです。
子どもが小さい間の一時期だから
なんとか1歳未満の赤ちゃんを安全に自転車に乗せることはできないものか…。
なんだかモヤモヤする人もいますよね?
自転車の安全な利用について研究や啓発活動をしている専門家もこう指摘します。
自転車の安全利用促進委員会 遠藤まさ子さん
「日本では1歳未満のお子さんを連れて移動する際は、なかなかつらい状況です。この年齢の子連れは、法律の穴・隙間の中にちょっと落ち込んでしまっていて、非常に苦しい状況ではないかなと感じています」
まさに、隙間。
朝。子どもと自宅を出て、保育園に預けて、出勤。
夕方。保育園に子どもを迎えに行き、買い物をして、荷物を抱えて、帰宅。
複数の子どもを連れて移動する人も。
多くの人が経験しますが、子どもが小さい一時期のみ。
過ぎてしまえば、関心も持たれなくなります。
1歳未満がいるなら、どうすれば…
さらに、こんな声も聞こえてきそうです。
「だったら車に乗ればいい」「早め行動で、少し長い距離でも歩けばいい」。
ただ、都市部では、多くの保育園で車での送迎は禁止されています。
遠くの園まで送り迎えする負担は小さくありません。
こうした中、支援事業も進められています。
たとえば駅などの利便性のよい場所に設けられた「こども送迎センター」。
ここに子どもを連れて行くと、バスで園まで送迎してくれます。
また、保育園までタクシーを利用する際の補助事業もあります。
ただ、これらは利用できる地域が限られています。
SNSではこんな声が上がっていました。
「1歳未満児がいる家庭の保護者はどこにもでかけるなと言われているよう。ベビーカーで電車やバスに乗ればいじめられる」。
親子の笑顔 増やすには
だっこ自転車はたしかに危険ですが、当事者に負担をおわせるだけでは、解決しません。
専門家は、周囲の理解や環境整備が欠かせないと訴えています。
自転車の安全利用促進委員会 遠藤まさ子さん
「例えば、両親とも出退勤の時間を柔軟に調整できたら対応できる場合もあります。そのためには、職場の理解や会社の制度整備が必要です。このように、個人で解決できる問題ではなく、社会全体で改善をはかっていく問題だと思います」
だっこ自転車から見える、余裕のない育児。
幼い子どもとの外出ストレスを1つでも減らし、親子の笑顔が増える社会にするためにどうすればいいのか。
一緒に考えてみませんか?