金融庁 損害保険大手4社に追加報告命令 企業向けに価格調整か

損害保険大手4社が私鉄大手向けの火災保険料などを事前に調整していた問題でこのほかにも価格調整が疑われるケースが複数あったことがわかり、金融庁は4日、4社に対して追加の報告を求める命令を出しました。すべての営業部店を対象にすると通告していて全社的な調査を求める異例の命令となっています。

追加の命令を受けたのは「東京海上日動火災保険」、「損害保険ジャパン」、「三井住友海上火災保険」、「あいおいニッセイ同和損害保険」の大手4社です。

この大手4社をめぐっては、リスクを分担して引き受ける「共同保険」について、私鉄大手「東急」向けの火災保険などの保険料を事前に調整したとして金融庁がことし6月、詳細な報告を求める命令を出していました。

関係者によりますとその後、4社が社内調査を進めた結果、ほかの鉄道会社や空港の運営会社などを対象にした「共同保険」でも価格調整が疑われるケースが複数あったことがわかりました。

このため金融庁は4日、4社に対し、詳細な報告を求める追加の命令を出しました。

これについて金融庁は、すべての営業部店を対象にすると通告し、独占禁止法に抵触する可能性がある事案だけでなく、法律の趣旨に照らして不適切な行為があった事案についても幅広く調査するよう求めています。

全社的な調査を求める異例の内容で、金融庁は大手損保の間で価格の調整が常態化していなかったか徹底して調べる方針です。

価格調整発覚の経緯

損害保険大手4社が事前に企業向けの「共同保険」の価格を調整した疑いがもたれている問題。

去年12月に私鉄大手の「東急」が提示された保険料の水準に疑問をもち、損保側に指摘したことから発覚しました。

各社が調査した結果、「東京海上日動火災保険」の担当者が中心となって、4社の間で保険料が同じ水準になるよう、価格を調整していたことが分かりました。

その後、再び入札が行われ、不適切な保険料での契約は行われていないとしていますが、金融庁はことし5月から6月にかけて大手損保4社に対し、価格を調整した経緯について報告するとともに、ほかにも同じような価格調整が行われていなかったかを調査して報告するよう命じました。

4社がそれぞれ外部の弁護士などによる調査を行った結果、各社はいずれも価格調整の疑いがあるケースがほかにも複数見つかったとしています。

「共同保険」とは

「共同保険」とは、複数の保険会社が共同で引き受ける保険契約です。

工場や商業施設などをもつ企業が火災保険や賠償責任保険、それに地震保険などを契約する場合、保険会社1社で巨額の保険金を引き受けるリスクが大きいため、リスクを分担する「共同保険」がたびたび活用されます。

今回はこの企業向けの「共同保険」で顧客が支払う保険料について、各社が事前に価格を調整した疑いが指摘されています。