岸田首相 保険証廃止の方針めぐり関係閣僚と会談 対応協議か

来年秋に今の健康保険証を廃止する方針をめぐり、岸田総理大臣は関係閣僚と会談しました。マイナンバーカードをめぐるトラブルを受けた総点検の状況などについて報告を受け、国民の不安払拭(ふっしょく)に向けた対応を協議したものとみられます。

来年秋に今の健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化させる方針をめぐり、岸田総理大臣は、4日午後、加藤厚生労働大臣や河野デジタル大臣、それに松本総務大臣らと、およそ30分間会談しました。

この中で岸田総理大臣は、マイナンバーカードをめぐるトラブルが相次いだことを受けた総点検の状況などについて報告を受け、今後の対応を協議したものとみられます。

政府は、来年秋に今の健康保険証を廃止する方針は当面維持する一方、国民の不安払拭に向けた取り組みを強化する考えです。

具体的には、マイナンバーカードと一体化した保険証の代わりとなる「資格確認書」について
▽本人の申請を待たず、対象者すべてに職権で交付するほか
▽有効期間の上限を1年から5年に延ばすなど、運用を見直す方向です。

岸田総理大臣は4日夜、記者会見し、今後の対応方針についてみずから国民に説明することにしています。

公明 石井幹事長「総理の説明 意義ある」

公明党の石井幹事長は記者会見で「岸田総理大臣が会見することは、なるべく早く国民に説明し、自分の責任で取り組んでいこうということの表れではないか。国民も、マイナンバーカードと健康保険証との一体化に強い関心を持っているので、岸田総理大臣みずからが国民の不安払拭につながるような手だてを説明するのは意義がある」と述べました。

国民 榛葉幹事長「政策の方向性の不一致が国民の不安を増長」

国民民主党の榛葉幹事長は記者会見で「健康保険証の廃止時期を延長しろ、やめろと、いろいろな意見が出たが、政府内外や与党の中から賛否両論が出る、右往左往ぶりが良くない。政策の方向性の不一致が、むしろ国民の不安を増長させているのではないか。リーダーシップの問題だ」と述べました。

立民 泉代表「よけいに手間と経費かかる 一層混乱を危惧」

立憲民主党の泉代表は記者会見で「国民の声を聞くと思っていたが、メンツを優先させている。今の健康保険証をなくし資格確認書を交付するのは、よけいに手間と経費がかかるやり方で、一層混乱を招かないか危惧している。保険証を廃止する意味は全くなく、国民の理解は得られない」と述べました。

共産 小池書記局長「不安払拭の唯一の方法は保険証存続」

共産党の小池書記局長は記者会見で「あくまで既定の路線にしがみつき、岸田総理大臣には聞く耳がないことがはっきりした。保険証廃止の延期・撤回を決めるためには新たな法改正が必要になるので、責任追及されることを恐れているのではないか。国民の不安を払拭する唯一の方法は、健康保険証を存続させることだ」と述べました。

一連のマイナカードトラブル 全国知事会が提言まとめる

この問題で政府は、マイナンバーカードの取得者向けの専用サイト「マイナポータル」で閲覧可能な税や健康保険証、住民票の情報など29項目のデータすべてを、ことし秋までをめどに総点検する方針で、8月上旬に中間報告を行うことにしています。

こうした中、全国知事会のデジタル社会推進本部で本部長を務める山口県の村岡知事が河野デジタル大臣と面会し、知事会の提言を手渡しました。

提言では「マイナンバー制度はデジタル社会の基盤となるものだが、制度への信頼を損ないかねない事案が発生している。安心してサービスを利用できる環境を構築することが必要だ」などと指摘しています。

また、政府が進める総点検では、国や自治体、それに事業者が一体となってチェック体制を構築することが必要だとしたうえで
▽点検するデータの対象を整理し自治体に過度な負担とならないようにすることや
▽自治体が実施する点検作業に適切な支援を行うこと
さらに
▽自治体の費用負担が生じないよう十分配慮することなどを求めています。

デジタル庁では、知事会の提言なども踏まえ、今後の総点検の進め方を検討したいとしています。

山口 村岡知事「前向きな回答いただけた」

河野デジタル大臣との面会の後、山口県の村岡知事は、記者団に対して「点検作業については自治体の意見、実情について、よく現場の声を聞きながら進めてほしいということを伝えた。河野デジタル大臣からは、作業的にも、スケジュール面でも、少し柔軟に考えていいのではないかという話もあった。きょうは、前向きな回答をいただけたのではないかと思っている」と述べました。