JR西日本 芸備線の一部区間について協議会の設置を国に要請へ

JR西日本は岡山県と広島県を結び赤字が続く芸備線の一部区間について、新たな法律に基づいて路線の存続やバスへの転換などを議論する協議会を設置するよう、国に要請する考えを明らかにしました。JR西日本によりますと、この協議会の設置を要請する考えを示したのは今回が初めてだということです。

これは、芸備線の沿線自治体やJR西日本が参加して、2日に岡山市で開かれた会合でJR側が明らかにしました。

質疑応答は非公開で行われましたが、このなかでJR側が、ことし10月にも国に「再構築協議会」の設置を要請する考えを示したということです。

対象としては、岡山県新見市の備中神代から広島県庄原市の備後庄原までの区間を検討しているということです。

赤字路線が多い地方鉄道をめぐっては、公共交通の再構築の議論を促すための法律がことし4月に成立し、鉄道事業者や自治体から要請があれば、路線の存続や利用促進策、それにバスへの転換などを議論する「再構築協議会」を国が設置できるようになりました。

岡山県と広島県を結ぶ芸備線は沿線の過疎化などに伴い、利用者の減少が続き、JR西日本はすべての区間で赤字に陥っているとして、今後の路線のあり方を議論したいという姿勢を示していて、新たな法律に基づく協議会の設置を要請する考えを示したのは今回が初めてだということです。

国の「再構築協議会」とは

「再構築協議会」は、赤字が続く地方鉄道のあり方の議論に国が積極的に関わるために設ける新たな協議の場です。

きっかけとなったのは、国土交通省が設けた有識者による検討会が去年とりまとめた提言です。

この中では、長年、赤字が続いている地方鉄道について、鉄道事業者と沿線の地方自治体の間で建設的な議論が進んでいないとして、国が積極的な役割を果たすことが重要だと指摘しました。

これを踏まえて、国はことし4月に法律を改正し、一定の条件を満たしていれば、地方自治体か鉄道事業者の要請にもとづいて、国土交通大臣が「再構築協議会」を設置することができることにしました。

法律はことし10月に施行されます。

協議会は沿線にまたがる複数の自治体の意見を集約したうえで、地方鉄道の利用促進や、バス転換に向けた実証実験を行うなど、地域の実情に沿った形で公共交通のあり方を検討する場となります。

JR西日本がこの協議会の設置を要請する方針が明らかにしたのは、今回の芸備線が初めてだということです。

国は道路や公園などを整備するための地方自治体への交付金について、今年度から鉄道やバスなど公共交通を見直す事業も新たに対象に加えるなど、財政面でも地方自治体を支援する方針です。

ただ、自治体側からはいったん協議が始まると、廃線に向けた議論が一方的に進むのではないかと警戒する声もあり、協議会では地元の意見をくみ取る形で丁寧な議論が求められます。

JR西日本「施行後できるだけ速やかに要請したい」

取材に応じたJR西日本の本社地域共生部須々木淳次長は「芸備線の備中神代から備後庄原までの区間は全国でも非常に利用が少ない。10月1日に法律が施行されたら、できるだけ速やかに要請をして、まちづくりの中で地域の交通をどうしていくのか、地域の人と議論したい」と述べました。

JR西日本として、再構築協議会の設置を要請する考えを示したのは今回の芸備線が初めてだとしています。

岡山県と広島県は

岡山県の浮田信太郎県民生活部長は「法律が改正されたので、JR側が再構築協議会の設置要請をされるのは想定内だ。協議会がいいものなのか、デメリットがあるのか、まだ判断できない。利用促進は引き続き取り組む必要があるが、JRが国に要請を行い、国から意見照会が来れば、沿線自治体や広島県とよく協議して対応を決めたい」と話しています。

また、広島県の杉山亮一地域政策局長は「広島県としては、住民に対する十分な説明という意味でも、すべての路線の収支や、赤字路線を維持するためのJR内部での補助の内容を明らかにするよう、引き続き求めていきたい。利用促進は大前提だが、国から意見照会があれば、沿線自治体や岡山県と対応を協議したい」と話しています。