金融庁 損害保険ジャパンに査定簡略化の検証 報告求める

ビッグモーターによる保険金の不正請求問題で、金融庁が「損害保険ジャパン」に対し、社内にビッグモーターに対応するチームを設けて損害査定を簡略化していたことに問題がなかったかを検証し、実態を報告するよう求めていることが明らかになりました。

この問題で、金融庁は7月31日に、ビッグモーターと保険代理店契約を結んでいた損害保険会社7社に対し、保険業法に基づいて取り引きの実態などについて報告を求める命令を出しました。

関係者によりますと、金融庁はこのうち、「損害保険ジャパン」が社内にビッグモーターに対応するチームを設けて損害査定を簡略化していたことなどを問題視し、それが妥当だったのかを検証して詳しく報告するよう求めていることが分かりました。

この仕組みは2019年に導入され、ビッグモーターが修理の見積もりを作成して写真を送れば、損害保険ジャパンによる損害査定の手続きを大幅に簡略化して保険金を決めることができるようになっていたということです。

損害保険ジャパンは、2011年以降に合わせて37人を出向させるなど、長年、ビッグモーターと親密な関係にありましたが、去年、不正の可能性があるという情報を得ていながら、詳細な調査をせず、いったん中止していたビッグモーターとの取り引きを再開していたことがわかっています。

金融庁は、取り引きを再開することを決めた経緯についても報告を求めています。

損害保険ジャパンの現役社員が証言

損害保険ジャパンが、社内に設けていたチームと、ビッグモーターとの関係について、損害保険ジャパンの支払い部門に在籍する現役の社員が証言しました。

社員によると、ビッグモーター側が作成した修理費の見積もりや、保険金の請求は、もともと、各地の支払い部門で査定していたということです。

しかし2019年、「現場の負担を軽くするため」などとして、東京の本社にビッグモーターに対応するチームができ、査定を行うようになったということです。

ビッグモーターに支払われる保険金が、ほかと比べて「高い」と、社員の間でも話題になることがしばしばあったということです。

社員は「会社から“ビッグモーターについては、本社の査定部門で、画像による見積もりをする”という知らせが来て、重大事故などを除き、業務が簡略化されましたが、正直、不公平だと感じていました。保険会社は本来、きちんと査定をし、契約者に公平に適正に支払いをするという立場でなければならないのに、理不尽だと思います」と話しています。

NHKの「ニュースポスト」に寄せられた情報をもとに取材しました。

損害保険ジャパンとビッグモーターの関係

損害保険ジャパンは、長年、ビッグモーターと親密な関係にあり、2011年以降、ビッグモーターに合わせて37人を出向させていました。

一方、ビッグモーターの創業者の長男で引責辞任した前の副社長が、2011年から1年余り、損害保険ジャパンの前身の企業に在籍していました。

また、損害保険ジャパンは2015年の時点ではビッグモーターの株式の7%余りを保有する大株主で、その後、株式をすべて売却したあともビジネスの面で親密な関係を続けてきました。

兼重宏行前社長は、先月25日の会見で「損害保険会社の出向者は生産の現場まで入っていない。私も損害保険会社も不正は知らなかった」と、経営陣のほか損害保険会社も不正を知らなかったと主張しました。

ただ、会見のあと、損害保険ジャパンが去年、ビッグモーターに出向していた社員から不正の可能性があるという情報を得ていながら詳細な調査をせず、いったん中止していたビッグモーターとの取り引きを再開していたことが分かりました。

鈴木金融担当大臣は、1日の会見で「顧客の被害回復に向けた対応に加え、出向者に関する事実関係や、1社だけ顧客紹介を再開した際の経緯なども確認を行う」と述べ、金融庁が今後、過去の経緯についても詳しく調べる方針を明らかにしました。