中国電力 「中間貯蔵施設」の建設 山口 上関町で調査の意向

中国電力は、原子力発電所で使い終わった核燃料を一時保管する「中間貯蔵施設」の建設に向けた調査を、山口県上関町で行う意向を明らかにしました。調査は関西電力と共同で行うとしています。

使用済み核燃料をめぐっては、搬出先となる青森県の再処理工場が完成せず、全国の原発の燃料プールにたまり続けている状況で、貯蔵場所の確保が課題となっています。

こうした中、中国電力は2日午後、記者会見を開き、使用済み核燃料を一時保管する「中間貯蔵施設」の建設に向けた調査を、山口県上関町にある中国電力の敷地内で行う意向を明らかにしました。

調査は関西電力と共同で行う予定で、町の理解が得られれば、少なくとも1か月の準備期間を設けたあと、半年程度かけて文献調査や現地でのボーリング調査を行うとしています。

中国電力によりますと、中間貯蔵施設の調査は町がことし2月に求めた新たな地域振興策への回答で、調査が始まれば町には国から交付金が出るということです。

関西電力は、原発の敷地内にある核燃料を保管するプールの82%がすでに埋まり、福井県から県外への搬出を求められていて、ほかの電力会社よりも貯蔵場所の確保が切実な状況となっています。

中国電力の大瀬戸聡常務は記者会見で「町の地域振興や島根原発の安定した稼働に資することに加え、原子力事業者の連携による貯蔵能力の拡大に向けた取り組みの強化につながる」と述べ、今後、住民に対して施設の必要性や安全性などを説明する考えを示しました。

関西電力 中国電力と共同で設置に向けた調査行う

関西電力は、中国電力と共同で施設の設置に向けた調査を行うとした上で、「原子力発電所の将来の安定運転に必要な使用済み燃料の搬出容量を確保するため、引き続き、あらゆる可能性を追求して最大限、取り組んでまいります」とコメントしています。

関西電力は、現地での調査の期間を半年程度と見込んでいて、文献の調査やボーリング調査などを行いたいとしています。

中国電力の今後の手続き

中国電力は、原子力発電所で使い終わった核燃料を一時保管する「中間貯蔵施設」を上関町に建設することが可能かどうか調べるとともに、計画の検討に必要なデータを集めることにしています。

調査は上関町の理解を得た上で、準備が整いしだい、始めることにしています。

具体的には、関西電力と共同で、半年ほどかけて、
▼地表や地質の調査に加えて、
▼ボーリング調査を行って真下に活断層がないかや過去の地震について調査を行う予定です。

中国電力によりますと、調査結果を踏まえて、建設できると判断した場合、具体的な建設計画を作り、上関町に示すことにしています。

そのうえで地元の理解が得られれば、設置の許可などを得るために、原子力規制委員会の審査を受ける申請を行うことにしています。

上関町 議会側の考え聞く場を早急に設ける

今回の提案を受けて、上関町は議会側の考えを聞く場を早急に設けることにしています。

具体的には、臨時議会を招集するか、全員協議会を開くなどして意見の集約を諮りたい考えで、早ければ来週にもこうした場を設ける方向で調整を進めています。

使用済み核燃料の問題と共同調査の背景

原発から出る使用済み核燃料について、政府は再処理してプルトニウムなどを取り出し、再び燃料として利用する「核燃料サイクル」と呼ばれる政策を掲げています。

しかし、青森県六ヶ所村にある再処理工場は、トラブルや不祥事などで完成時期が大幅に遅れていて、再処理できない状況が続き、各地の原発のプールには使用済み核燃料がたまり続けています。

電気事業連合会によりますと、廃炉になる原発も含めて全国17の原発のプールでの保管量は、あわせて2万1300トン余りの容量に対し、ことし3月時点で、およそ77%にあたる1万6510トンに上っています。

電力会社ごとでみると、▼東京電力が87%、▼中部電力と九州電力が86%、▼関西電力が82%などとなっていて、このまま再稼働が進むと燃料プールが満杯になり、運転が続けられなくなる原発が出る可能性もあります。

そうした状況を回避するため、使用済み核燃料を敷地外に搬出して一時的に保管するのが「中間貯蔵施設」です。

政府は建設を進めるために2015年に交付金を設け、建設に向けた調査が開始された年から都道府県知事の同意が得られた年までは毎年1億4000万円、知事の同意が得られた翌年から最大2年間は毎年9億8000万円を交付するとしました。さらに、工事が始まったあとも施設の貯蔵容量などに応じた交付金が交付されます。

電力各社は、燃料プールの容量を拡大したり敷地内に貯蔵施設を建設したりして、保管できる量を増やそうとしていますが、関西電力は、地元 福井県から使用済み核燃料を県外に搬出するよう求められ、ことし中に「中間貯蔵施設」の候補地を確定させると約束していました。

ことし6月には、使用済み燃料のうち5%程度をフランスに搬出する計画を伝え、県との約束を果たしたという認識を示しましたが、福井県は「県民にはわかりにくく、具体性に乏しい」などとして、計画への賛否などを明らかにしていません。

一方、中国電力は、山口県上関町で40年余り前から原発の建設を計画してきましたが、反対運動もあって工事が進まず、2011年に東京電力福島第一原発の事故が発生したあとは工事計画を中断したままです。

こうした中、上関町はことし2月、中国電力に対して新たな地域振興策を求めていました。

中国電力の島根原発では使用済み核燃料の保管量がプールの67%と余裕がありますが、中間貯蔵施設の建設により地元に雇用や交付金などがもたらされるとともに、保管場所の確保が喫緊の課題となっていた関西電力を助ける形にもなり、双方の思惑が一致したといえます。

求められた振興策

上関町では計画している原発の建設の見通しが立たず、厳しい財政状況にあることからことし2月、中国電力に新たな地域振興策を求めていました。

これに対して中国電力は、中間貯蔵施設をめぐる調査や建設にあたって自治体には国の交付金が出るほか、税収などが見込まれるとして、地域振興になり得ると町に回答した形です。

中国電力でも島根原発2号機の再稼働などを見据えて中間貯蔵施設の必要性が高まっていました。

また、コストの面から単独で行うことは難しいとして、中国電力から関西電力に提案し、共同で調査を行うことになったとしています。

原発建設計画に反対の住民が上関町長と会談

中国電力の申し入れのあと、原発の建設計画に反対する住民などが上関町の西町長と会談しました。

会談は町長室で非公開で行われ、会談のあと、反対派の清水康博町議が取材に応じ、中国電力の提案について町長から議会に諮ると説明があったことを明かしました。

その上で清水町議は「中間貯蔵施設についてはきのうの報道で知った住民もいて、方向性を議員だけで決めるのは町民をないがしろにしている」として、町長に住民への直接の説明を求めたということです。

また、地元の住民団体、「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の木村力運営委員は、「中間貯蔵施設の話が突然出てきて進め方が性急な気がする。中間貯蔵施設によって上関の豊かな自然といった魅力を失ってしまう。もっと住民の意見を聞くことが必要だと思う」と話しています。

上関町の住民は

中間貯蔵施設の建設に向けた調査の申し入れについて、上関町の住民に話を聞きました。

90代の女性は「高齢なので自分の意見は持たずに多くの人が望む推進の考えに合わせようと思っていますが、安全性のことを考えると心配です」と話していました。

70代の男性は「個人的には安全性の面や、いつまで使用済み核燃料が貯蔵されるかわからないことから、施設の建設は反対ですが、過疎化が進む町の状況を見ると、建設によって税金も入り、さまざまな施策を実現できるようになることから、推進する立場の気持ちもわからなくもない」と話していました。

山口県 村岡知事「まずは今後の推移見守りたい」

山口県の村岡知事は「現在は中間貯蔵施設の立地可能性調査の実施が町に申し入れられた段階であり、まずは今後の推移を見守りたい」とコメントを出しました。

全原協会長の敦賀市 米澤市長「これからの推移見守りたい」

中国電力が原子力発電所で使い終わった核燃料を一時保管する「中間貯蔵施設」の建設に向けた調査を、山口県上関町で関西電力と共同で行う意向を明らかにしたことについて、全原協=全国原子力発電所所在市町村協議会の会長を務める福井県敦賀市の米澤光治市長は、2日の記者会見で「具体的にどういう内容なのかやこれから報告があるのかどうかも分からない。これからの推移を見守りたい」と話していました。

福井県「本県としてコメントを出すものではない」

関西電力の原発が立地する福井県の原子力安全対策課は「本県として、コメントを出すものではない」としています。

福井 高浜町長「山口県と上関町は慎重に対応考えると思う」

関西電力高浜原発が立地する福井県高浜町の野瀬豊町長は、「あくまで調査段階の申し入れなのでこれをもって候補地が確定したという段階でもない。山口県と上関町はこれから慎重に対応を考えると思うので、いまは冷静に推移を見守りたい」と話していました。

西村経産相「使用済み燃料の貯蔵能力拡大は重要な課題」

西村経済産業大臣は記者会見で「今後も安定的かつ継続的に原子力発電を利用するうえで、使用済み燃料の貯蔵能力の拡大は重要な課題だ。エネルギー基本計画でも事業者の連携による取り組みの重要性を明記していて、今回の取り組みはこうした方針に沿ったものとして意義がある」と述べた上で、調査の申し入れを受けた山口県上関町の対応を注視していく考えを示しました。