アメリカ国債格付け 1段階引き下げ 財政悪化懸念 米格付け会社

世界で最も安全な資産とされてきたアメリカ国債。
大手格付け会社「フィッチ・レーティングス」は、その格付けについて、アメリカの財政が悪化する懸念や債務上限問題にみられる政治の混乱などを理由に、最も信頼度が高い「AAA」から1段階引き下げたと発表しました。大手格付け会社によるアメリカ国債の格下げはおよそ12年ぶりです。

「AAA」から「AA+」に 大手引き下げは12年ぶり

大手格付け会社「フィッチ・レーティングス」は1日、外貨建てのアメリカ国債の格付けを最も信頼度が高い「AAA」から「AA+」に1段階引き下げたと発表しました。

格下げの理由について格付け会社は、今後3年間にアメリカの財政が悪化する懸念や政府の借金の上限、債務上限問題にみられる政治の混乱などを挙げています。

債務上限問題を巡っては、過去20年にわたって政治対立を繰り返し、土壇場で解決が図られるのは財政運営の信頼を損なわせるものだと指摘しています。

大手格付け会社がアメリカ国債の格付けを引き下げるのは、かつてのスタンダード・アンド・プアーズ、今のS&Pグローバル・レーティングが2011年8月に最も信頼度が高い「AAA」から「AA+」に引き下げて以来、およそ12年ぶりです。

2011年に初めてアメリカ国債が格下げされたときは、世界で株価が下落するなど金融市場が動揺しました。今後の市場の反応が注目されます。

イエレン財務長官「決定に強く反対する」

「フィッチ・レーティングス」がアメリカ国債の格付けを引き下げたことについて、イエレン財務長官は1日、声明を発表しました。

この中でイエレン長官は「フィッチ・レーティングスの決定に強く反対する」としたうえで「アメリカ国債が依然として世界有数の安全かつ流動性の高い資産で、アメリカ経済が強いという投資家や世界中の人々の認識を変えるものではない」と強調しています。

また「アメリカ政府は財政が持続的になるようしっかりと取り組んでいる。債務上限に関する法律には1兆ドル以上の財政赤字削減が盛り込まれ、財政の道筋は改善された」などとして今回の国債の格下げは恣意的(しいてき)で古いデータに基づいたものだと批判しています。

アメリカ国債とは 各社の格付けは

アメリカ国債はアメリカ政府と基軸通貨であるドルに対する信頼を背景に長く世界で最も安全な資産とされてきました。

さまざまな投資商品に組み込まれ、アメリカ国債の利回りは金融市場の重要な指標となっています。

このアメリカ国債の格付けをめぐってはかつてのスタンダード・アンド・プアーズ、いまの「S&Pグローバル・レーティング」が2011年8月に初めて格下げに踏み切りました。

最も信頼度が高い「AAA」から「AA+」に1段階引き下げ、今も上から2番目の「AA+」となっています。

今回、「フィッチ・レーティングス」も「AAA」から「AA+」にに1段階引き下げたことで同じ上から2番目の格付けとなりました。

一方、別の大手格付け会社「ムーディーズ」はアメリカ国債の格付けを最も信頼度が高い「Aaa」として、維持しています。

引き下げ根拠とした財政の悪化への懸念

大手格付け会社、「フィッチ・レーティングス」はアメリカ国債の格付けを引き下げた根拠としてアメリカの財政悪化への懸念を具体的に示しています。

それによりますと、アメリカのGDP=国内総生産に対する政府の財政赤字の比率はことし、歳入の落ち込みなどを反映して6.3%と予想し、去年の3.7%から上昇するとしています。
また、GDPに対する政府の債務残高の比率はことしは112.9%と見込んでいます。

これは新型コロナの感染が拡大していた2020年の122.3%を下回るものの、コロナ前の2019年の100.1%を大きく上回るとしています。

この格付け会社では、今後10年間は、FRB=連邦準備制度理事会による利上げを受けた金利上昇と、債務残高の増加がアメリカ国債の利払い負担を増加させるうえ、高齢化と医療費の増加によって支出が増加する見通しで、中期的な財政の課題は未解決だとしています。

また利上げの影響による企業の投資縮小や消費低迷でアメリカ経済が景気後退に陥るリスクも格下げの要因としてあげています。