かばんのポケットに「十徳ナイフ」 2審も有罪判決 大阪高裁

かばんのポケットに十徳ナイフを隠し持っていたとして軽犯罪法違反の罪に問われた大阪の鮮魚店の店主に対して、2審の大阪高等裁判所は「多機能な便利グッズだが、漠然とした目的で携帯することは、人の生命に害を加える犯罪を未然に防ぐための法の趣旨から相当とは言えない」として、1審に続いて有罪判決を言い渡しました。
店主は、「仕事などで持っていたら便利だと思った」などと無罪を主張していました。

おととし12月、大阪・福島区で刃渡りおよそ6.8センチの十徳ナイフをかばんのポケットに隠し持っていたとして、鮮魚店の40代の店主が軽犯罪法違反の罪に問われました。

店主が「仕事や日常生活で持っていたら便利だと思った」などと無罪を主張したのに対して、ことし1月、1審の大阪簡易裁判所は科料9900円の有罪判決を言い渡し、店主側は控訴していました。

1日の2審の判決で、大阪高等裁判所の辻川靖夫裁判長は「十徳ナイフは人に対して使用すれば、重大な害を加える危険性が認められるもので、自宅から持ち出す必要性はなかった。多機能な便利グッズだが、漠然とした目的で携帯することは犯罪を未然に防ぐための法の趣旨からみて相当とは言えない」などとして、1審に続いて科料9900円を言い渡しました。

判決について、店主側の高江俊名弁護士は、判決を不服として上告する方針を示しました。

高江弁護士は、「店主が裁判の中で具体的な目的を答えられなかったというだけで主張は否定された。かばんのポケットに入れていたことが、『隠した』ことに当たると判断され納得できない」と話していました。

過去に “正当な理由”認められ 無罪のケースも

正当な理由がなく刃物などを隠し持つことは軽犯罪法で、規制されています。

今回と同様に十徳ナイフなどを持っていたことが軽犯罪法違反の罪にあたるかどうかが問われ、「正当な理由」が認められて無罪が言い渡されたケースも過去にはあります。

【催涙スプレー所持 最高裁で無罪に】
護身用に販売されている小型の催涙スプレーを持っていたとして軽犯罪法違反の罪に問われた裁判では、2009年3月の判決で、最高裁判所は「人に危害を加えられる道具を持ち歩くことが正当かどうかは状況や動機、道具の性能などから総合的に判断するべきだ」と指摘しました。

そのうえで、「深夜に運動のため自転車に乗っていた男性が護身用にスプレーを持っていたことは社会通念に照らしても正当で犯罪にあたらない」として1審と2審の有罪判決とは逆に無罪を言い渡しました。

【十徳ナイフをめぐって無罪も】
新潟簡易裁判所は、ことし2月、刃渡りおよそ6.2センチの十徳ナイフを車の中に隠し持っていたとして軽犯罪法違反の罪に問われた裁判で、「5年以上、車に収納され使用していないことから、護身用ではなく災害用・防災用であったと認められる。ナイフの携帯は日常生活の必要性から正当な理由があるといえる」として無罪を言い渡しました。

“正当な理由”の判断材料は

今回、十徳ナイフを持っていた鮮魚店の店主を有罪と判断した大阪高等裁判所の判決について、元刑事裁判官で法政大学法科大学院の水野智幸教授は「十徳ナイフの刃は、人を傷つけることができるので一定程度、制約する軽犯罪法の趣旨は理解できる」と指摘しました。

そのうえで、「今回は、ナイフを持っていた具体的な理由がないことから正当な理由がないと判断した。これまで日常的に使っていたもので人を傷つけるために持っていたのではないということなども正当な理由と判断する材料になるのではないか。明確に目的がないといけないという、それだけで判断をしていいのか疑問が残る」と話しています。