日本対スペインの試合データです。
【解説】なでしこ 保持率23%の勝因は “カウンター攻撃”
「ボール保持率23%」
にもかかわらず、日本代表「なでしこジャパン」は強豪スペインに4対0で快勝しました。
戦前の予想を覆しての圧勝。ゴールラッシュを生んだのはチームに浸透した“カウンター攻撃”の意識でした。
【詳しくはこちら】日本4-0スペイン
試合データは劣勢でも…
【シュート数】
日本:8/スペイン:10
【ボール保持率】
日本:23%/スペイン:65%
明らかに相手がボールを持つ時間が長く、チャンスらしいチャンスも少なかった「なでしこジャパン」。その勝利を引き寄せた“カウンター攻撃”の意識が形になったのが、前半29分の2点目のゴールでした。
“カウンター攻撃”の形が追加点に
細かいパスでボールをキープするスペインに対して自陣に押し込まれていた日本。
攻撃のスイッチが入ったのは、ディフェンダーの南萌華選手が相手の前線の選手へのパスをクリアした瞬間でした。
クリアボールをフォワードの植木理子選手がキープして長野風花選手につなぐ。
ほぼ同時にスペースに駆け上がった宮澤ひなた選手に巧みなスルーパス。
宮澤選手が快足を生かして持ち上がり、最後は走りこんできた植木選手がパスを受けて守備の選手をかわしてシュートを決めました。
南選手のクリアからゴールまでに要した時間はわずか15秒ほど。
速攻が鮮やかに決まりました。
さらにその11分後。
再び自陣からのカウンター攻撃。
長野選手が相手のパスを奪って攻撃に転じると、センターライン付近でパスを受けた植木選手がドリブルで持ちこみ、スピードに乗って走り込んできた宮澤選手にパス。
宮澤選手が持ち込んで豪快にシュートを決めました。
相手の戦意をそぐ3点目はボールを奪ってからゴールまでに要した時間が2点目よりも、さらに短い10秒ほどでした。
2得点 宮澤ひなた選手
「ボールを奪ったところでカウンターねらいだと思っていたので、自分の長所を出して貢献できてよかった」
“ねらい通りの試合に”
試合後「なでしこジャパン」は、ねらい通りのカウンター攻撃が決まった手応えがありました。
ディフェンダー 熊谷紗希 主将
「スペインにボールを持たれる時間が長いというのはわかっていて、その中でチャンスがあればカウンターをねらっていこうと臨んだ。これだけ完璧にカウンターが決まる試合はなかなかない。自分たちのねらいだったので本当に100点に近い、ねらい通りの試合ができたと思う」
池田太 監督
「粘り強く守備をし、カウンターでうまくスペースを使えたのがよかった。選手たちはすばらしい集中力だった。粘ってこういう勝ち方ができたのは自信になると思う」
元なでしこ 永里亜紗乃さん「いい守備が攻撃につながった」
サッカー女子の元日本代表で2015年のワールドカップで準優勝を経験した永里亜紗乃さんは、スペイン戦の日本代表の戦いぶりについて「しっかりといい守備ができて、いい守備が攻撃につながった」と守備面の安定を勝因に挙げました。
日本代表は細かくパスをつないでチャンスを作るスペインのパスサッカーに対して最終ラインに5人、その前に4人が横に並んでボールをキープされながらも粘り強く守り続けました。これについて永里さんは「前半からこのラインを崩さずにしっかり守ることができた。スペースがない中でプレーするのは技術が高いスペインの選手でも難しい。ゴール前のサイドのスペースからクロスボールやシュートを打ってくるのがスペインの特長だがそれを出させなかった。日本は90分間気持ちを切らさずに全員で守ることができた」と分析しました。
そのうえで4ゴールを挙げた攻撃面については「相手のディフェンスラインの後ろにスペースがあるところでのカウンター攻撃は日本の得意な攻撃パターンで、強豪のスペインを相手に得意な形で結果を出せたのは大きい。シュートの本数が少ない中でも決めきっていた。しっかりといい守備ができて、いい守備が攻撃につながった。日本としては100点以上の試合だったのではないか」と話しました。
そして決勝トーナメント1回戦のノルウェー戦に向けて「ノルウェーは身長が高い選手が多く、ポストプレーをどう止めるかが鍵になる。シンプルにいちばん怖いところにボールを入れてくるので、日本はいいクロスボールをあげさせないことが大事になる。マークする選手を受け渡す際は声をかけあうなどほころびがでない守備を継続することが重要になる」と話していました。
3戦全勝のグループ1位で決勝トーナメント進出を決めた日本。
この先、負けたら終わりの戦いの中でスペイン戦で自信を深めたカウンター攻撃が大きな得点源になりそうです。