【詳しく】ラグビー 日本 トンガに競り勝つ 今季初勝利

ラグビーの日本代表は、9月に開幕するワールドカップに向けた強化の一環として29日、大阪の花園ラグビー場でトンガ代表とのテストマッチに臨みました。日本代表は前半をリードして終えると、後半もセミシ・マシレワ選手のトライなどで突き放し、21対16で勝ちました。

記事後半では試合の詳しい経過をお伝えしています。

《試合概要》

世界ランキング12位の日本代表は、9月にフランスで開幕するワールドカップに向けて強化を進めています。

29日は今シーズン2戦目のテストマッチとして世界15位のトンガ代表と大阪・東大阪市の花園ラグビー場で対戦しました。

日本は序盤、攻め込めない時間帯が続きましたが、20分にスクラムからテンポよく左サイドに展開し、ウイングのジョネ・ナイカブラ選手が先制のトライを決めました。

ジョネ・ナイカブラ選手

このあと3分後にトンガにトライを奪われますが、40分にロックのアマト・ファカタヴァ選手がキックパスを拾ってトライを決め、13対5で前半を終えました。

(左)セミシ・マシレワ選手のトライ

後半は13分にセミシ・マシレワ選手のトライで得点を重ねますが、17分にトライを奪われ、18対16と2点差に迫られました。

それでも日本は途中出場のスタンドオフ、松田力也選手のペナルティーゴールで追加点を挙げ、ピンチで松島幸太朗選手がタックルを決めるなどしてリードを守り21対16で勝ちました。

日本代表は今シーズンの強化試合とテストマッチで初勝利を挙げました。1週間後の8月5日にはワールドカップ前の国内最後のテストマッチとして世界13位のフィジー代表と対戦します。

《試合データ》

日本 21-16 トンガ
 (前半13-5)
 (後半8-11)

【トライ】
日 本3(前半2/後半1)
トンガ2(前半1/後半1)

【PG】
日 本2(前半1/後半1)
トンガ2(前半0/後半2)

【コンバージョンゴール/DG】
両チームとも 0

今季ようやく初勝利

試合終了後、花園ラグビー場のファンから温かい拍手が送られると選手たちの表情に笑顔が戻りました。ここまで苦しい戦いが続いていましたが、ようやく日本のラグビーがかみ合いました。

日本は今シーズン、ニュージーランド代表のセカンドチーム、All Blacks XVに2連敗。その後、先週のサモア戦も敗れ、3連敗のスタートでした。ただ、敗因を分析すると、まったく歯がたたなかったというより、自分たちの「ミス」で勝利を逃したとも言えました。

チャンスでボールを落とすノックオン、重要な局面でのペナルティーなどを多発。随所でタックルが決まったり素早い攻撃が展開できたりしていたので「自滅」を食い止めることができれば十分勝つチャンスはありました。

ミスを減らすことが課題となった29日の試合、試合を通してノックオンや密集でのペナルティーはありました。それでも試合を左右するような場面ではしっかりと守り、攻撃ではボールをキープすることができました。

対するトンガは、世界ランキングでは日本よりも下の相手ですが、フィジカルのレベルは高く、そこに勝つことができたことは今後の自信につながります。

ワールドカップ前に国内で行う試合は8月5日のフィジー戦が最後です。サモアやトンガと同様、フィジカルが強い相手に対してどう戦うか、日本の力が試されます。

《ヘッドコーチ・選手談話》

ジェイミー・ジョセフHC「まずはひと安心」

試合後、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは「まずはひと安心。気温も高い中でフィジカル的にもタフに戦いながら速いラグビーをしてくれた選手たちにおめでとうと言いたい。今シーズンは連敗で苦しいスタートだったが勝つことができて、すごくよかったと思う。次のフィジー戦も難しい試合になると思うが、とても楽しみにしている」と話していました。

姫野和樹 共同主将「最後まで戦った仲間を誇りに思う」

この試合で共同キャプテンを務めた姫野和樹選手は「前回のサモア戦ではスクラムで苦戦したので1週間フォーカスしてやってきた。気力を振り絞って最後まで戦った仲間を誇りに思う。ここ最近苦しい試合が続いていたが、チームの絆は深まっていた。それが最後の頑張りに繋がった」と試合を振り返っていました。

先制トライ ジョネ・ナイカブラ「初勝利できよかった」

先制のトライを決めたジョネ・ナイカブラ選手は「本当にいいトライを取ることができてよかった。日本も今シーズン初勝利ができてよかった」と話していました。

山中亮平「チームとして自信になるし勢いに乗っていける」

山中亮平選手は「きょうはタフなゲームだったがそれぞれが役割をしっかり果たして勝利できチームとして自信になるし勢いに乗っていける。準備していたサインプレーを遂行して(トライを)取り切れたし、相手の裏のスペースにボールを転がしながらプレッシャー与えられたところはよかったと思う。ここまで結果が出ていなかったが、さらに成長できると思う」と話していました。

稲垣啓太「勝ち切れたことに意味がある」

稲垣啓太選手は強化試合とテストマッチで今シーズン初勝利を挙げたことについて「結果がすべてだと思っているので、きょうは勝ち切れたことに意味があると思う。チームがやってきたことが間違っていなかったという意味でもみんなが納得いく勝利だった」と話しました。その上で「課題はまだまだある。スクラムは大幅に改善できたが、反則が多いし、ボールロスも多い。リスクを減らして少ないチャンスをいかにスコアに繋げられるかと、どう失点を抑えていくかにフォーカスしていきたい」と次の試合を見据えていました。

◆試合詳細◆

《先発メンバー》

日本代表

【フォワード】
1.稲垣啓太/2.坂手淳史/3.ヴァル アサエリ愛/4.アマト・ファカタヴァ/5.
ヘル ウヴェ/6.ジャック・コーネルセン/7.ベン・ガンター/8.姫野和樹(共同キャプテン)
【バックス】
9.齋藤直人/10.李承信/11.セミシ・マシレワ/12.長田智希/13.ディラン・ライリー/14.ジョネ・ナイカブラ/15.山中亮平

【リザーブ】
16.堀江翔太/17.クレイグ・ミラー/18.具智元/19.ジェームス・ムーア/20.テビタ・タタフ/21.流大(共同キャプテン)/22.松田力也/23.松島幸太朗

トンガ代表

【フォワード】
1.ジークフリート・フィシイホイ/2.サミウエラ・モリ/3.ベン・タメイフナ/4.ハラレバ・フィフィタ/5.シティベニ・マフィ/6.バエア・フィフィタ/7.シオネ・ハビリ タリトゥイ/8.ロペティ・ティマニ
【バックス】
9.ソナタネ・タクルア(キャプテン)/10.ウィリアム・ハビリ/11.カイレン・タウモエフォラウ/12.ピタ・アーキ/13.アフシパ・タウモエペアウ/14.ソロモネ・カタ/15.サレシ・ピウタウ

【リザーブ】
16.パウラ・ヌガウアモ/17.フェアオ・フォトゥアイカ/18.デイビッド・ロロヘア/19.タンギノア・ハライフォヌア/20.ソロモネ・フナキ/21.マヌ・パエア/22.オトゥマカ・マウシア/23.マラカイ・フェキトア

《前半》

19:40【試合開始】

ラグビーの日本代表とトンガ代表とのテストマッチは午後7時40分に日本のキックオフで始まりました。NHKでは総合テレビで中継するほか、NHKプラスで配信しています。

フォワード 平均体重

▽日本:113.9キロ
▽トンガ:117.6キロ

◇日本 リーチ マイケルは出場停止

ラグビー日本代表のリーチ マイケル選手が、今月22日のサモア戦で危険なタックルをしたとして3試合の出場停止処分となりました。このため、この試合、リーチ マイケル選手は出場できません。試合をスタンドから見守る姿が見られました。

【前半11分】日本0-0トンガ

日本は反則からピンチを招きましたが自陣ゴールライン前のトンガのラインアウトからのモール攻撃を防いで、ピンチをしのぎました。

【前半18分】日本0-0トンガ

日本は相手の反則からペナルティーゴールを選びハーフウェイライン手前の中央から李 承信選手が蹴りましたが、外れて得点はなりませんでした。

★トライ【前半20分】日本5-0トンガ

日本は敵陣、右サイドのスクラムからサインプレーをみせ、ジョネ・ナイカブラ選手が左サイドでパスを受けると一気に抜け出し先制のトライを奪いました。この後のゴールキックは決まりませんでした。

★トライ【前半23分】日本5-5トンガ

日本が先制した直後の前半23分、トンガのキャプテン、ソナタネ・タクルア選手が左サイドを駆け上がりトライを決め、日本は同点に追いつかれました。

この後のキックは決まりませんでした。

☆PG【前半32分】日本8-5トンガ

前半32分、日本は李 承信選手がペナルティーゴールを決め3点を勝ち越しました。

★トライ【前半40分】日本13-5トンガ

前半40分、日本はジョネ・ナイカブラ選手のキックを受けたアマト・ファカタヴァ選手が左サイドにトライを決めて5点を追加し、リードを広げました。その後のゴールキックは決められませんでした。

【前半終了】日本13-5トンガ

日本は2つのトライを決めるなど13対5とリードして前半を終えました。

《後半》

20:39【後半開始】

午後8時39分、後半が始まりました。

☆PG【後半2分】日本13-8トンガ

トンガのウィリアム・ハビリ選手がペナルティーゴールを決め3点を返しました。

☆PG【後半7分】日本13-11トンガ

トンガのウィリアム・ハビリ選手がペナルティーゴールを決め3点を返しました。日本のリードは2点となっています。

【後半7分】日本 選手交代

日本は、李承信選手、ヘル ウヴェ選手に代わって、松田力也選手とジェームス ムーア選手が途中出場しました。

【後半13分】日本 選手交代

日本は後半13分、ヴァル アサエリ愛選手と齋藤直人選手に代わって具 智元選手と流大選手が入りました。

★トライ【後半13分】日本18-11トンガ

日本はゴールライン前で右に大きく展開し、最後に抜け出したセミシ・マシレワ選手がトライを決めました。この後のキックは決まりませんでした。

★トライ【後半17分】日本18-16トンガ

後半17分、トンガはラインアウトからモールを押し込んでトライを決めて5点を返しました。そのあとのゴールキックはゴールポストに当たって外れました。

【後半18分】日本 選手交代

日本は、ベン・ガンター選手に代えてテビタ・タタフ選手が、後半19分には、稲垣啓太選手と坂手淳史選手に代えてクレイグ・ミラー選手と堀江翔太選手が途中出場しました。

【後半24分】日本 選手交代

日本は山中亮平選手に代わって松島幸太朗選手が入りました。

☆PG【後半27分】日本21-16トンガ

後半27分、日本は、松田力也選手がペナルティーゴールを決めて3点を追加しました。

【後半40分】終了間際のピンチ 松島 堀江が防ぐ

日本はトンガのカウンター攻撃を受け、攻め込まれますが松島選手のタックル、その後のプレーでは堀江選手が相手ボールをジャッカルし、相手の反則を誘いました。経験ある選手たちのプレーで大きなピンチをしのぎました。

※豆知識:ノットリリースザボール

タックルされて倒された選手がボールを離さない反則です。略して「ノットリリース」と呼ばれます。ボールを離さなければならないタイミングは、一般的に「ツーモーション」と言われます。倒れてから2回動いたらボールを離さなければなりません。守備側はタックルされた選手のもとに素早く集まることで “ここでボールを離したら相手にとられてしまう”という局面をつくり、ノットリリースザボールの反則を誘うことができます。この場合、相手チームにペナルティーキックが与えられます。

【試合終了】日本21-16トンガ

日本は試合終了間際のトンガの猛攻をしのいでリードを守りきり、21対16で勝ちました。日本は今シーズン強化試合とテストマッチで初めての勝利を挙げました。

《試合の注目ポイントは》

注目のポイントは、日本がここまでの試合で目立っているミスを減らせるかどうかです。

日本は今シーズン強化試合とテストマッチで3連敗とまだ勝利がありませんが、敗因の1つになっているのがノックオンなどのハンドリングエラーの多さです。相手陣に攻め込みながら勝負どころでボールを落として攻撃を継続できない場面が何度も見られました。

29日の試合は暑さの影響で汗をかいてボールが滑りやすくなることが予想されますが、どんなコンディションでも落ち着いてボールを処理できるかが問われることになりそうです。

また、フィジカルが強いトンガ代表に対して新戦力やけがから復帰した選手がどのような働きを見せるかも見どころの1つです。

この試合では、今シーズン代表デビューを果たした23歳の長田智希選手がセンターで初めて先発出場します。長田選手はリーグワンで新人賞を獲得し、日本代表でも途中出場でたびたびディフェンスラインを突破するシーンを見せて存在感を示してきました。

28日の会見では「相手とぶつかる部分が大事になってくるので、そこで自分の役割を果たしたい」と話していて、この試合でどのような活躍を見せるか注目されます。

このほか、けがの影響で出遅れていたフォワードのベン・ガンター選手とテビタ・タタフ選手が今シーズン初めてメンバー入りしました。

ともに世界レベルのフィジカルの強さを持ち味とする選手で、体が大きく強さもあるトンガ代表との対戦で活躍すれば、今後の日本にとって大きなプラス材料となります。