南海トラフ被害想定見直しへ「災害関連死」など重点的に対策

南海トラフ巨大地震の被害想定の見直しに向けて、国が設置した専門家による検討会の会合が開かれ、地震や津波から逃れたあとに避難生活などで亡くなる「災害関連死」や被災後の復興を事前に計画する「事前復興」について、重点的に取り組む対策として盛り込む方針を確認しました。

南海トラフ巨大地震について、国は最新の研究結果や防災対策などを踏まえて被害想定を見直す方針で、地震や防災の専門家らで作るワーキンググループによる検討を進めています。

27日、都内で開かれた会合では、前回・10年前に公表された想定で大きく扱われていなかった防災上の課題や対策について話し合われました。

1つは地震や津波などによる被害は免れたものの、その後の避難生活による体調の悪化などが原因で死亡する「災害関連死」で、もう1つは被災したあとの街作りをあらかじめ計画し、準備を進める「事前復興」の取り組みなどについてです。

委員からは「広域で甚大な被害によって介護や医療が破綻し、被災者と支援をする人のバランスが崩れると災害関連死が増えるが、行政側だけで防ぐことは難しい」とか「市町村単位で作成する事前復興の計画は、南海トラフのような巨大災害の場合には都道府県や広域ブロックごとに作る必要があるのではないか」などといった意見が出されました。

新たな想定では地震発生からの経過時間ごとに複数のシナリオを作成する方針で、災害関連死についてもそれぞれ具体的な犠牲者の予測が可能か検討を進めていくことを確認しました。

とりまとめ役を務める名古屋大学の福和伸夫名誉教授は「コロナ禍を経験して医療の限界もわれわれは学んだ。この10年間に学んだことと、従来からの課題について見直し、災害関連死の対策や事前復興の難しさを知った上で、あらゆる国民が当事意識をもって被害を減らすための取り組みを進めるべきだ」と話していました。