ロシア 27日からアフリカ各国と首脳会議へ 各国の取り込み図る

ロシアはウクライナへの軍事侵攻を受け欧米との対立が深まる中、27日からアフリカ各国との首脳会議を開きます。プーチン政権としては自国産の農産物の輸出などをはじめとする協力を打ち出し、アフリカ各国の取り込みを図ることで欧米に対抗していく構えです。

ロシアとアフリカの首脳会議は2019年に続いて2回目で、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクで27日から2日間の日程で開催されます。

ロシア大統領府のウシャコフ補佐官は25日、記者団に対し、会議にはアフリカ54か国のうち17か国の首脳が参加し、49か国から政府関係者や企業の代表などが参加すると発表しました。

また、会議では多極化に基づく新しい世界秩序やアフリカ各国に対するロシア産の農産物や肥料などの支援について重点的に議論が交わされるとしています。

ロシアは今月、ウクライナ産の農産物の輸出をめぐる合意の履行を停止すると発表し、ウクライナ南部の積み出し港があるオデーサ周辺などへの攻撃を行っていて、アフリカ各国では食料危機への懸念が高まっています。

プーチン政権としては自国産の農産物の輸出などをはじめとする協力を打ち出し、多くが中立を保つアフリカ各国の取り込みを図ることで欧米に対抗していく構えです。

ロシアとアフリカ各国との関係

ロシアのプーチン政権は、ウクライナへの軍事侵攻をめぐり欧米との対立を深める中、アフリカ各国との関係をいっそう深め、取り込みを図ろうとしています。

冷戦時代には、かつてのソビエトがアフリカでヨーロッパ諸国の植民地支配からの独立闘争を支援するなど影響力を持っていましたが、ソビエト崩壊とともに関係はいったん弱まりました。

2000年に「大国ロシアの復活」を掲げて就任したプーチン大統領のもと、ロシアは再びアフリカで、政治的な影響力の拡大や巨大市場の獲得に乗り出すようになります。

特にロシアは2014年にウクライナ南部のクリミアを一方的に併合し、欧米諸国との対立が深まると、国際的な孤立を避けようと、アフリカとの関係強化の動きを加速させていきます。

2019年には、プーチン政権ははじめてアフリカ各国の代表をロシアに招いて国際会議を開催し、幅広い分野での関係拡大をアピールしました。

ロシアはアフリカ各国との関係において、特に軍事面での協力を通じて影響力を強めてきました。

これまでに30か国以上と軍事協力協定を結んでいるほか、武器の輸出や兵士の軍事訓練などを進めてきました。

また中央アフリカやマリなど政情不安が続く国などでは、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」が戦闘員を派遣する一方で、鉱物資源の権益を拡大するなど、プーチン政権の利益と密接に結びつきながら暗躍していると指摘されています。

こうしたロシアのアフリカとの関係は、国際政治の場にも反映されています。

去年3月、国連総会でのウクライナに侵攻したロシアを非難する決議案の採決で、アフリカ54か国のうちエリトリアが反対したほか、棄権票を投じた国とそもそも投票しなかった国が25か国にのぼり、ロシアへの配慮だと受け止められています。

さらにロシアは、ウクライナ侵攻後、世界的に小麦の価格が高騰するなど食料危機への懸念が高まるなかで自国産の農産物などの供給を新たな手段としてアフリカとの関係をいっそう深めようとしています。

ロシアは今月、ウクライナ産の農産物の輸出をめぐるロシアとウクライナの合意の履行を停止しました。

ロシア側は、ウクライナ産の農産物は多くがヨーロッパなどに輸出される一方、アフリカのエチオピアやスーダンなど最貧国への供給は3%も満たないと主張し、ウクライナや欧米側を非難してきました。

その一方で、アフリカなどの国々にはロシア産の農産物を無償で提供する考えを示しています。

プーチン大統領は、今回のアフリカ各国との首脳会議を前に発表した論文の中で「ロシアはことし記録的な収穫が見込まれ、ウクライナ産の穀物を代替できることを保証したい」とも強調し、アフリカ諸国に寄り添う姿勢をみせて、取り込みを図ろうとしています。

専門家 “ロシア 東アフリカの市場に着目”

ロシアとアフリカとの関係に詳しい、「高等経済学院」のアフリカ研究センター長、アンドレイ・マスロフ氏は、NHKのオンラインインタビューで「ロシアはアフリカの多くの国に穀物、肥料、エネルギー資源、石炭を供給している。こうした経済協力は、アフリカにとって不可欠なものだ」と述べた上でウクライナ侵攻後もその協力関係について「維持している」という見方を示しました。

マスロフ氏は、ロシアがアフリカ諸国の中で戦略的な協力関係を結ぶ、エジプト、アルジェリア、南アフリカを主なパートナーとして挙げた上で「さらに東アフリカの市場に目を向けている。新しい物流の手段や倉庫などができれば、状況は徐々に変わっていく」と述べて、東アフリカのケニアなどとの経済関係を発展させていくと指摘しました。

一方、欧米側がアフリカの国々にロシアへの制裁に加わるよう圧力をかけているとして「世界情勢の中でアフリカが堅持する『中立性の維持』がわれわれの課題だ」と述べ、政治面でも関係強化が重要だという見解を示しました。

また、ウクライナ産の農産物の輸出をめぐり、ロシアが今月に合意の履行を停止したことで、アフリカの国々からも食料危機への懸念が示されていることについて「ロシアは人道的な危機が発生しうる重要な地域を特定し、2国間で解決策を提案しようと考えている」と述べ、ロシアはアフリカ各国へ直接支援していく可能性を指摘しました。

そのうえで今回の首脳会議を通して、具体的な支援策を見いだすだろうとしています。

松野官房長官「ロシアの動向注視」

松野官房長官は午後の記者会見で「アフリカで活発に活動を展開するロシアの動向を注視している。日本としてはG7広島サミットの成果も踏まえつつ、2025年に開催予定のTICAD=アフリカ開発会議に向けたプロセスを推進し、これまで培われてきたアフリカとの関係を一層深化させていきたい」と述べました。