不適切投稿で訴追 岡口裁判官の弾劾裁判 弁護側の反論始まる

SNSに不適切な投稿を繰り返したとして訴追された仙台高等裁判所の岡口基一裁判官の弾劾裁判で、26日から弁護側の反論が始まり、裁判官を辞めさせる必要はないと主張しました。

仙台高等裁判所の岡口基一裁判官(57)は、女子高校生が殺害された事件の遺族などについて、SNSに不適切な投稿を繰り返したとして、国会の弾劾裁判所に訴追され、検察官役の訴追委員会は「遺族の感情を傷つけ侮辱した」などとして、罷免し、裁判官を辞めさせるべきだと主張しています。

去年3月に始まった弾劾裁判は、26日から弁護側の反論が始まりました。

弁護側は冒頭、「本人も不適切な投稿が多々あったことを痛感し、謝罪したいと思っている」と述べ、裁判官の職務を続けることは希望していないと説明しました。

一方で「一連の投稿が相手の評価を不当におとしめたとしても、罷免の条件である『裁判官としての威信を著しく失うべき非行』に当たらないことはある」として、裁判官を辞めさせ、法律家としての資格を奪う罷免にする必要はないと主張しました。

表現行為をめぐって裁判官が訴追されたのは初めてで、初公判から1年以上たった今も審理が続く異例の長さとなっていて、岡口裁判官は職務が停止された状態が続いています。

岡口裁判官 任期満了をもって職を辞する考え

弾劾裁判の終了後、岡口裁判官は弁護団を通じてコメントを出し、10年ごとに更新される裁判官の任期が満了する来年3月をもって職を辞する考えを示しました。

再任を希望しない理由について「私の一連の投稿などによって被害者遺族などに不快な思いをさせたことの責任をとる」としたうえで「改めて反省と謝罪の意を表明します」としています。

弁護団の伊藤真弁護士は「本人が再任せず職を辞することと、『裁判官を罷免すべきでない』と主張し続けることは矛盾しない。『罷免』という判決が出れば岡口裁判官個人への影響だけではなく、裁判官の表現の自由に関して萎縮を生む可能性がある」と述べ、引き続き、罷免すべきでないと弾劾裁判で主張していくと強調しました。

弁護団によりますと、訴追されている裁判官がみずから辞職することは法律上、認められていませんが、10年間の任期を終えて退官することは可能だということで、退官した場合は弾劾裁判所の規則に従い罷免を求める請求は退けられるとしています。