スポーツ

プロボクシング 井上尚弥がTKO勝ち 4階級制覇

プロボクシング、スーパーバンタム級の世界タイトルマッチが25日行われ、井上尚弥選手が2団体統一チャンピオンのアメリカの選手に8ラウンド、テクニカルノックアウト勝ちして4階級制覇を果たしました。日本の男子選手が4階級制覇を達成するのは井岡一翔選手に続いて2人目です。

井上選手は去年、バンタム級で4団体の王座統一を果たして、その後、1つ上のスーパーバンタム級に転向しました。

その初戦として25日夜、東京の有明アリーナでWBC=世界ボクシング評議会とWBO=世界ボクシング機構の2団体統一チャンピオンでアメリカのスティーブン・フルトン選手とのタイトルマッチに臨みました。

井上選手は序盤からカウンターやワンツーのパンチ、ボディーへの攻撃など多彩なコンビネーションで攻めたほか、相手のパンチを巧みなディフェンスでかわすなど主導権を握りました。

中盤は相手の反撃を受ける場面もありましたが、第8ラウンド開始早々、井上選手がボディーへのパンチから右のストレートで相手の顔面をとらえ、よろめかせたところを左のフックでたたみかけて初めてのダウンを奪いました。

相手はこのあと立ち上がりましたが、井上選手がロープ際に追い詰めて連打を浴びせたところでレフェリーが試合を止め、8ラウンド、1分14秒でテクニカルノックアウトで勝ちました。

井上選手はこれで日本の男子選手では井岡一翔選手に続いて2人目となる4階級制覇を果たしました。

井上選手「自分が最強と言えるのではないか」

4階級制覇を果たした井上尚弥選手は、1つ階級を上げて臨んだスーパーバンタム級での戦いについて、「すごくスピードもパワーものった。それでもまだ初戦ということで、練習方法や減量方法で改善するところはある。まだまだ強い姿を見せられる。ただ、自分が思うスーパーバンタム級で最強のフルトン選手を倒すことができたので、自分が最強と言えるのではないかと思う」と話しました。

WBCとWBOのベルトを獲得した井上選手は、会場に来ていたWBA=世界ボクシング協会、IBF=国際ボクシング連盟の2団体統一チャンピオンでフィリピンのマーロン・タパレス選手に向けて、「自分が持っているベルトは2本だが、この会場にタパレス選手が来ている。次戦で4団体統一戦をしたいと思う。ことし中にしましょう」と呼びかけました。

これに対してタパレス選手はリングに上がって、「自分自身がチャンピオンになることを証明したいので試合がしたい」と前向きに応じていました。

フルトン選手「素晴らしかった」

井上尚弥選手に敗れたアメリカのスティーブン・フルトン選手は「井上選手は素晴らしかった。彼はきょう勝つべき選手だったのかも知れない」と話しました。

第8ラウンドでダウンを奪われた場面については、「最初のボディーへのパンチが見えなかった。パワーというよりもタイミングだったのだと思う」と振り返りました。

これまでの歩み

井上尚弥選手は神奈川県出身の30歳。

父親の真吾さんの影響で6歳からボクシングを始め、高校生の時に全日本選手権を制するなど、アマチュアのタイトル7冠を達成して注目を集め、高校卒業後の2012年、19歳でプロデビューしました。

破壊力のあるパンチを持ち味に勝利を重ね、2014年にはWBC=世界ボクシング評議会ライトフライ級のタイトルマッチで、メキシコのチャンピオンを破ってプロ6戦目で世界チャンピオンとなりました。

その後、1つ上の階級のスーパーフライ級でもWBO=世界ボクシング機構のチャンピオンとなって、7回防衛を果たしたあと、2018年にはさらに1つ上のバンタム級でWBA=世界ボクシング協会のチャンピオンとなり、3階級制覇を果たしました。

4年前には、団体の枠を超えてその階級で最も強い選手を決める大会「ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ」のバンタム級準決勝でIBF=国際ボクシング連盟のチャンピオンに勝って2団体統一を果たしました。

そして決勝では、5階級制覇の経験があるフィリピンのノニト・ドネア選手と対戦し、苦しみながらも判定勝ちを収めて優勝しました。

このあと、井上選手はバンタム級で4団体統一を目指す意志を固め、去年6月にはWBCのチャンピオンだったドネア選手と再び対戦し、テクニカルノックアウト勝ちして、3団体の王座統一を成し遂げました。

そしてアメリカで権威のあるボクシング専門誌「ザ・リング」が選ぶ、すべての階級を通じて最も強い選手を決めるランキング「パウンド・フォー・パウンド」で日本選手として初めて1位になりました。

その後、去年12月にはWBOのチャンピオンだったイギリスのポール・バトラー選手にノックアウト勝ちし、日本選手では初めて4団体王座統一を成し遂げました。

このあと、井上選手は世界初となる2階級での4団体統一を目指すため、ベルトをすべて返上して1つ上のスーパーバンタム級に階級を上げ、25日の転向後、初戦に臨んでいました。

世界初となる2階級での4団体統一へ大きな一歩

「適正階級」とも言われるスーパーバンタム級の転向初戦でいきなり世界タイトルマッチで勝利して2団体統一王者となった井上尚弥選手。

世界で初めてとなる2階級での4団体統一に向けて大きな一歩を踏み出しました。

スーパーバンタム級はこれまで井上選手が戦ってきたバンタム級よりも制限体重がおよそ1.8キロ増え、井上選手よりも身長やリーチなどで勝る選手が増えてきます。

それでも、元世界チャンピオンで、所属ジムの大橋秀行会長は井上選手が4階級下のライトフライ級でデビューした時から、スーパーバンタム級が適正階級であると話してきました。

その理由について、「体重を上げてもパワーがあるし、スピードが逆に生きてくる。階級を上げれば上げるほど通用する」と説明します。

井上選手もおよそ4年半、バンタム級で戦い、日本の男子選手で初めて4団体統一を果たしましたが、時間が経つにつれておよそ10キロの減量が厳しくなり、筋力そのものが落ちてしまったこともあったと振り返ります。

そのため、持ち味の1つであるスピードを十分に発揮できないと感じたこともありました。

今回、階級を1つ上げたことで、これまでより体格が大きい選手との戦いとなる一方で、筋力を維持できたということで、試合の前には、「スピードも増していて、自分の中でプラスに働いている。すごくのびのびと安定感を持って試合に臨むことができる」と手応えを感じていました。

そして迎えた今回の試合、対戦したスティーブン・フルトン選手は井上選手よりも身長は5センチ高くてリーチも長く、足を使っての攻めを持ち味に21戦全勝の成績を残してきた実力者です。

しかし、距離の取り方で上回ったのは井上選手でした。

ステップをうまく使いながら相手にジャブを当てさせず、逆に自分の距離でジャブを当ててペースをつかみました。

父親の真吾トレーナーも、「身体能力が尚弥のほうが高かった」と驚くほど転向初戦から実力を発揮しました。

そして第8ラウンド、練習してきたという左ボディーから右ストレートのコンビネーションで狙い通りダウンを奪い、そのまま、たたみかけてテクニカルノックアウト勝ち。

「判定勝ちでもいい」と語っていたみずからの想定を上回る完勝で、「スピードやステップワークの安定感が全く違った。1.8キロプラスというのがいい方向に傾いていい試合ができた」と手応えを確信に変えました。

試合後には4団体統一戦を見据え、会場に来ていたタパレス選手に挑戦状をたたきつけた井上選手。

世界初の快挙に向けて自信をつけた試合となりました。

最新の主要ニュース7本

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

特集

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

スペシャルコンテンツ

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

ソーシャルランキング

一覧

この2時間のツイートが多い記事です

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

アクセスランキング

一覧

この24時間に多く読まれている記事です

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。