京都 祇園祭 厄よけ「ちまき」転売相次ぐ 関係者も問題視

京都の夏を彩る祇園祭は24日、見せ場のひとつ、後祭の山鉾巡行が行われました。祭りの期間中は豪華な山鉾を見るだけでなく、厄よけの「ちまき」を買い求めることも楽しみの一つになっていますが、ことしはこの「ちまき」が転売されるケースが相次ぎ、関係者が頭を悩ませています。

京都の祇園祭では、毎年7月17日と24日に懸装品と呼ばれる豪華な装飾で飾られた山鉾が都大路を進む山鉾巡行が行われます。

それぞれの巡行の前には「宵山」と呼ばれる前夜祭が3日間行われ、道路上に建てられた山鉾の近くでは「ちまき」などを買い求める人でにぎわいます。

この「ちまき」は食べられるものではなく、祭りを主催する八坂神社の神が疫病や災難から守ってくれるとされる厄よけの縁起物です。

1本あたり800円から1000円ほどでそれぞれ山鉾で買い求めることができ、京都の民家などでは玄関に飾られています。

ところが、ここ数年は祇園祭の人気が高まるにつれてインターネットのフリーマーケットアプリやオークションサイトなどでちまきの転売が相次いでいます。

ことしもフリマアプリで「祇園祭」と「ちまき」のワードを入れて検索すると、たくさんの出品が見つかり、実際の値段の2倍から3倍ほどで売られているものもあります。

祭りを八坂神社とともに主催する祇園祭山鉾連合会の木村幾次郎理事長は「ちまきは1年間健康でありますようにという願いを込めてお渡ししている。それを商売として考えられるのは非常に残念。(転売されたちまきを)買う人には『第三者を通して買うのは本来の意味とは違うのではないか』と考え直してほしい」と話しています。

購入数を制限する山鉾も

祇園祭の後祭に参加している山鉾の1つの鷹山は去年、江戸時代以来、196年ぶりに巡行に復帰して、話題を集めました。

ことしも7月21日に前夜祭にあたる宵山が始まると朝早くからちまきを買い求める人の列ができるなど人気を集めました。

こうした中、鷹山ではネットでの転売を防ぎ、多くの人に買ってもらおうと、ことし、ちまきの販売を1人あたり最大10本までに制限しました。

鷹山保存会の山田純司理事長は「ネットで安易に買うのは疑問を感じます。そうして買ったちまきに御利益があるとは思えません。直接、山鉾に足を運んで買い求めてほしいです」と話しています。

「現場の対策には限界がある」

祇園祭の後祭の山鉾巡行で最後尾を務めた大船鉾も人気の山鉾です。

大きな船の形が特徴で、幕末の「蛤御門の変」で焼けて以来、巡行に参加していませんでしたが、9年前に再建されて150年ぶりに復帰したことで話題を集めました。

ちまきも前夜祭にあたる宵山期間が終わるまでに用意した数が売り切れるほど人気があるということです。

しかし、ことし転売対策として販売数を制限することなどはしませんでした。

四条町大船鉾保存会の木村宣介理事長は「転売は悲しいことですが、仮に制限をしても転売目的の人はアルバイトを雇って並ぶ可能性もあり、いたちごっこだと思います。現場の対策には限界があるので、フリーマーケットサイトの運営会社などがちまきが出品されたら転売できないようにしてほしい」と話しています。

フリマサイト メルカリ “ちまきの出品 禁止ではない”

多くの「ちまき」が出品されているフリーマーケットサイトの「メルカリ」は、ちまきの出品は現在、禁止されていないとしたうえで、NHKの取材に対し「出品物は、多様な価値観によるさまざまな意見があるものと認識しています。法令やユーザー保護の観点からガイドラインの改定、アップデートは随時行ってまいります」とコメントしています。

専門家「営利目的 高値で転売は問題だ」

ちまきの転売が相次いだことについて、祇園祭綾傘鉾保存会で理事も務める佛教大学歴史学部の八木透教授は「ことしは予想以上になくなるのが早く、転売されていると聞いて驚いた。営利目的で高値をつけて転売するのは問題だ」と指摘しました。

そのうえで「コロナ禍でオンラインでの授与が普遍化したが、できれば実際に足を運んで、ちまきが祇園祭の営みの中の一部だということを感じてもらいたい」と話していました。