LPガス料金 関係ない設備費用の上乗せ禁止の方針示す 経産省

LPガス=液化石油ガスの賃貸住宅向けの料金で、エアコンや給湯器といった関係のない設備費用が利用者に上乗せされている問題で、経済産業省はこうした上乗せを禁止する方針を示しました。

賃貸のアパートなど集合住宅向けのLPガス料金では、ガス事業者が賃貸住宅にエアコンや給湯器などを無償で設置する一方、その費用を月々のガス料金に上乗せして利用者から回収するケースが問題となっています。

このため、消費者などからは、ガス料金の高騰につながっているという苦情や、取り引きの内容が不透明だといった指摘が出ていました。

この問題について経済産業省は、24日に開かれた有識者の会議で関係する省令を改正して、こうした上乗せを禁止する方針を示しました。

具体的には、料金として計上できるのはガスに関わる設備や点検費用などの「基本料金」と、使用量に応じて発生する「従量料金」の2つとし、それ以外は認めないことにしていて会議で了承されました。

来年の春までに関係する省令を改正し、2027年度の施行を目指すとしていて、事業者が違反した場合には立ち入り検査などを行い、罰金を科すことにしています。

LPガスは、都市ガスが供給されない地域で給湯器やコンロなどに使われ、全世帯のおよそ4割にあたる2200万世帯ほどが利用していて、経済産業省では、長年にわたって続いてきた不透明な商慣行の是正を図ることにしています。

料金上乗せの背景には

LPガスの料金は一般的に
▽ボンベやメーターといったガスに関わる設備や、点検費用などを計上する「基本料金」に加えて、
▽使用量に応じて発生する「従量料金」を合わせた金額が利用者に請求されています。

今回、問題になっているのはアパートなどの賃貸住宅向けの料金で、ガス事業とは関係のないエアコンや給湯器といった設備の設置費用が「基本料金」の中に上乗せされているケースが多く確認されているということです。

背景にはLPガスの事業者が他社との競争を有利にするため、賃貸住宅の大家に便宜を図る目的でこうした設備を無償で提供する商慣行が広がっていることがあります。

一方で、近年では賃貸住宅の大家の側からエアコンや給湯器にとどまらず、エレベーターやインターホンの一部の設備などについても設置を求められ、対応に苦慮しているケースもあるということです。

そして、こうした設備費用は利用者に説明されないままにLPガスの毎月の料金に上乗せされ、料金の高騰につながっているうえ、料金の内訳が見えないという点でも問題となっています。

このため、経済産業省は賃貸住宅向けの料金に計上できる費用を明確化してガス事業とは関係のない設備費用の上乗せを禁止することにしています。

消費者からの相談 去年は2140件

LPガスをめぐっては、国民生活センターや全国の消費生活センターにも毎年、相談が寄せられ、去年は2140件となっています。

その多くが料金やガス事業者からの勧誘に関する苦情や相談で、中には
▽「ほかと比べて料金が高く料金表もわかりにくい」
▽「『料金が安くなる』と言われて契約したのに、その後、値上げが続いて納得できない」といった事例もあるということです。

専門家QA

賃貸向けのLPガス料金をめぐる問題について、エネルギー業界の事情に詳しい国際大学大学院の橘川武郎教授に聞きました。

Q. 賃貸向けのLPガス料金、どういう商慣習になっていた?

A. 本来は家賃から回収すべきエアコンや給湯器といった設備の費用がガス料金の中に紛れ込んで請求されているケースがあり、その分だけ料金が高くなっている。

Q. どうして消費者が支払う形になっているのか?

A. 1つは、LPガスの事業者が賃貸住宅の大家や不動産会社に対し「供給を任せてくれるならエアコンや給湯器といった設備費用をこちらで負担しますよ」と働きかけるケースがある。
賃貸住宅はLPガスの事業者にとっては大口の顧客のうえ、あとでガス料金の形で利用者から回収できるという考えがある。
もう1つは、大家の側から持ちかけて拒否すれば、別のガス事業者に切り替えるという形で要求する場合で、その結果、不透明で不適切な取引慣行が定着してしまった。

Q. 今回、経済産業省が行う省令改正の実効性をどう見るか?

A. ガス料金に計上できる費用を明確化すると決めたことは正しいと思う。
ただし、すぐに実効性があるかどうかは今後の状況を見ていく必要がある。
特に難しいのはすでにガス料金に組み込まれている既存の契約のケースで、こうしたものをいかに家賃に移していけるかがポイントだ。
不適切な費用が含まれていないかを消費者が確認できる仕組みを国や自治体、さらには業界団体で考えていかなければならない。

Q. LPガスを使っている賃貸住宅を契約する消費者はどこに気をつければいいか?

A. まずは物件と契約しているLPガス事業者を確認し、事業者の評判や、不要な費用を上乗せしていないかをチェックする必要がある。
ガス料金が家計に占める重みはそれなりに大きく、電気代と同じくらいの影響があるので、しっかりと確認することが大事だ。