【解説】ウクライナ情勢 クラスター爆弾を双方使用か 影響は

ウクライナ情勢をめぐり新たな懸念が広がっています。

ロシア国防省は、ウクライナ南部のロシア側の支配地域で、ロシアの国営通信の記者が死亡したと発表。一方、東部では、ロシア側の攻撃でカメラマンがけがをしたとドイツの放送局が発表。双方とも、攻撃に「クラスター爆弾が使われた」と主張しています。

1つの爆弾から多数の小型爆弾が飛び散る殺傷能力の高いクラスター爆弾。小型爆弾の一部が不発弾として残って民間人に被害を及ぼすおそれもあり、使用などを禁止する国際条約もありますが、ウクライナやロシア、それにアメリカなどは加盟していません。また、ウクライナに対してはアメリカのバイデン政権が供与し、使用が始まったことが明らかになっていました。

戦況への影響について、安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事に聞きました。

非難強めるロシア側の思惑は?

Q.ロシアは、ウクライナ軍の攻撃でクラスター爆弾が使われたと主張し、非難を強めている。ロシア側の思惑は?

A.(防衛省防衛研究所 兵頭慎治研究幹事)
民間人に被害が出たと積極的にアピールし、クラスター爆弾の使用に否定的な国際世論をつくりだそうという「情報戦」の側面が大きい。

ヨーロッパには、クラスター爆弾の使用に否定的な国が多く、NATO加盟31か国のうち、23か国が批准している。NATO加盟国の中からクラスター爆弾への批判を引き出して足並みを乱し、求心力を弱めたいという思惑があると思う。

クラスター爆弾の使用をめぐって、欧米諸国の意見がどの程度乱れるのかが焦点になる。

アメリカへのけん制の意味合いもある?

Q.ウクライナにクラスター爆弾を供与したアメリカへのけん制の意味合いもあるのか?

A.ロシアとしては、アメリカへの非難が強まることも期待しているのだろう。それによって、F16戦闘機の供与など、さらなるウクライナへの軍事支援の引き上げをけん制する狙いだ。

そのアメリカは、「苦渋の決断」としながら、クラスター爆弾供与に踏み切ったが、民間人に被害が出たことでコメントしにくい状況に置かれているのではないか。

民間人の被害が拡大し、ヨーロッパのみならず、国際社会全体に否定的な世論が拡大すると、アメリカはさらなる追加供与が難しくなるし、ウクライナも、戦場での使用をちゅうちょせざるをえなくなる可能性もある。

各国のウクライナ支援に与える影響は?

Q.各国のウクライナ支援に与える影響は?

A.今のところ、クラスター爆弾の問題で、ただちに欧米諸国の意見が割れて、ウクライナへの軍事支援が難しくなるという状況ではない。

ただ今後、欧米諸国によるウクライナへの追加の軍事支援にヨーロッパの世論が影響し、それによって、ウクライナが必要としている支援が得られない状況になれば、実際の戦況に否定的な影響が及ぶ可能性がある。

戦況への影響は?

Q.今後の戦況への影響は?

A.実は、ロシア自身も、これまでもクラスター爆弾を戦場で使用している。ウクライナとしても、反転攻勢がうまく進まないなか、ゼレンスキー大統領がクラスター爆弾の供与をアメリカに求めてきた経緯もある。

民間人の死傷者が出たとしても、ロシア、ウクライナ双方が引き続き、戦場でクラスター爆弾を使用していくと予想されるので、戦闘がより激しくなる可能性も出てきたと思う。