CIAとMI6長官 “プーチン政権に不満抱くロシア人を工作員に”

アメリカとイギリスの情報機関のトップは、民間軍事会社ワグネルがロシアで起こした武装反乱をきっかけにプーチン政権に不満を抱くロシア人たちを情報工作員などとして取り込みながら諜報活動に生かしたいとする考えを示しました。プーチン政権内部に関わる情報の収集や分析を強化するねらいとみられます。

アメリカのCIA=中央情報局のバーンズ長官は20日、アメリカで開かれた安全保障のフォーラムに出席し、民間軍事会社ワグネルがロシアで起こした武装反乱について「これほどわれわれをひきつけたものはなかった。ロシアでは、エリート層もそれ以外の人たちも多くの不満を抱えている。この機会を無駄にはしない」と述べました。

そして、こうしたロシア人たちを情報工作員などとして取り込みながら諜報活動に生かしたいとする考えを示しました。

また、その前日の19日、イギリスの対外情報機関「MI6」のムーア長官もワグネルによる武装反乱について「ロシアの独裁政治がどうしようもなく衰退していることを露呈した」と指摘した上で「われわれはいつでも待っているし、秘密は必ず守る。流血を終わらせるため、ともに力を合わせよう」と述べ政権に不満を抱くロシア人たちとの協力関係を生かしたいとしています。

こうした協力についてCIAのバーンズ長官は「MI6と同じ方向に向かっている」として連携する姿勢を示し、プーチン政権内部に関わる情報の収集や分析を強化するねらいとみられます。

一方、バーンズ長官とムーア長官は、いずれも、ウクライナ軍が続けている反転攻勢について「楽観している」と述べ、ロシア軍は、政権や軍内部の混乱が弱点となり今後、戦況はウクライナ側に好転する可能性があるとしています。

CIA「ヒーローになるということは立ち向かうこと」

CIAはプーチン政権に不満を抱くロシア人たちを情報工作員として取り込もうと、ことし5月、ロシアの今のあり方に疑問を抱かせるような動画をSNSなどに投稿しています。

このうち、「私がCIAに連絡した理由:私の決断」という2分近い動画では、「これが私の夢見た人生なのだろうか」とか「ヒーローになるということはきぜんと立ち向かうことだ」などというロシア語のナレーションが入っていて、機密情報を扱っているとみられる人たちがCIAに連絡をとるまでの様子が描かれています。

また、別の動画では、CIAに連絡をとる時には自宅や職場のパソコンを使わないなど、プーチン政権側に気づかれないよう安全に注意することが必要だと伝えています。

CIAのバーンズ長官は、20日のアメリカで開かれた安全保障フォーラムで、こうした動画が投稿されて最初の1週間で250万回もの再生回数があったと述べ、ロシア側にゆさぶりをかける狙いがあるとみられます。