人間国宝に落語家の五街道雲助さんなど新たに12人が認定へ

伝統的な芸能や工芸の分野で高い技術を持つ、いわゆる人間国宝に、落語家の五街道雲助さんなど12人が新たに認定されることになりました

文化庁の文化審議会が21日、重要無形文化財の保持者、いわゆる人間国宝に認定するよう永岡文部科学大臣に答申したのは、次の12人の方々です。

「能ワキ方」宝生欣哉さん(56)

本名・寳生欣哉

「宮薗節三味線」宮薗千佳寿弥さん(72)

本名・山田和代

「古典落語」五街道雲助さん(75)

本名・若林恒夫

「首里の織物」祝嶺恭子さん(86)

「長板中形」松原伸生さん(58)

「能シテ方」金剛永謹さん(72)

「狂言」茂山七五三さん(75)

本名・茂山眞吾

「人形浄瑠璃文楽人形」吉田玉男さん(69)

本名・大西彰

「歌舞伎脇役」中村歌六さん(72)

本名・小川進一

「琉球古典音楽」大湾清之さん(76)

「木工芸」宮本貞治さん(69)

「竹工芸」の藤塚松星さん(74)

本名・藤塚洋史

人間国宝には技の向上や後継者の育成のため毎年、国から200万円の助成金が交付されます。
今回の12人をあわせると人間国宝の認定は109人となります。

“気負いなく 今までどおり” 五街道雲助さん(落語)

新たに人間国宝に認定される落語家の五街道雲助さんは、東京都墨田区生まれの75歳。

小さい頃から母親と寄席に通うなど演芸に親しんで育ち、大学在学中の1968年、十代目金原亭馬生に入門して、1981年に真打に昇進しました。

渋くて低い声の江戸弁で語られる長編の人情ばなしに定評があり、埋もれていた古典の大作を復活させるなど独自の芸を作り上げ、古典落語の本格派として知られています。

「古典落語」で人間国宝に認定されるのは4人目で、現役では雲助さん1人となります。

雲助さんは「文字どおり、身に余りすぎるほど光栄なことです。落語界にとって栄誉なことなので、力不足ながらもお受けしました」と喜びを語ったうえで、今後の芸については、「落語に出てくる人間は、大酒飲みで周りに迷惑をかけているとかばくちをするとか、そういう連中ばかりですから、それを品行方正な人が演じてもおもしろくない。悪いことをしようというわけではなく、了見としてはアウトローの気持ちで人間国宝ということにけおされないように、気負いなく、今までどおりやっていきたい」と話していました。

“一生修行 毎日が初日” 中村歌六さん(歌舞伎)

歌舞伎俳優の中村歌六さんは、東京生まれの72歳。

二代目中村歌昇の長男として生まれ4歳で初舞台を踏み、1981年に五代目中村歌六を襲名してからは主役を支える重要な役を数多く演じてきました。

明瞭なせりふ回しとコクのある演技で舞台を引き締め、時代物から世話物、新作の歌舞伎まで老若男女を問わず巧みに演じる豊かな表現力が高く評価されています。

歌六さんは、「私などが認定されると思っていなかったので驚きましたし、知らせを聞いた息子たちが、よかったねと号泣してくれてました。家族の力が後押ししてくれたと思って感謝しています」と喜びを語りました。

今後については「これからやってみたい役は山ほどあります。『一生修行、毎日が初日』という精神で真摯(しんし)に舞台をつとめていくのが私のできることだと思うので、まだまだ、気持ちだけは若く頑張ります」と話しました。