夏休みだけど…コロナの不安 ことしは?知っておきたいこと

花火大会や盆踊り、この夏は久しぶりに参加を考えている方も多いのではないでしょうか。

新型コロナウイルスが5類に移行して初めて迎える夏です。

ただ、コロナのパンデミックが始まった2020年以降、国内では毎年、冬だけでなく夏にも感染拡大の波が起きています。

21日から多くの学校が夏休みに入りましたが、先月から子どもの感染症の流行も相次いでいます。

この夏も感染症に注意しながら過ごさないといけないのでしょうか?
今の状況と知っておきたいことをまとめました。

新型コロナ “毎年夏に感染拡大の波”

新型コロナウイルスのパンデミックが始まった2020年以降、国内では毎年夏に感染拡大の波が起きています。

2020年は、7月から9月ごろまで感染が広がり、「第2波」と呼ばれました。

その後の感染の波と比べると規模は大きくはありませんでしたが、各地の自治体が飲食店などに営業時間の短縮を呼びかけるなど大きな影響が出ました。

その翌年、2021年の夏に起きた感染の「第5波」では、7月から感染者数の増加傾向が見え始め、ピークとなった8月20日には一日の感染者数がおよそ2万6000人となりました。

第5波は比較的若い世代でも重症化しやすいとされた「デルタ株」だったこともあり、医療がひっ迫し、最大で21の都道府県に緊急事態宣言が出されました。

「第7波」となった2022年夏は、2021年とほとんど同じ時期に感染拡大が起きました。

7月上旬から急速に全国で感染の拡大傾向が始まり、8月19日には一日の全国の感染者数が26万人余りに達し、ピークとなりました。

流行の中心が比較的軽症の人が多いとされるオミクロン株だったこともあり致死率は下がりましたが、感染者の数が多かったため死者数は多くなり、一日の死者が300人を超える日もありました。

最新の感染状況 43都道府県で前週より増加

新型コロナウイルスの全国の感染状況は、今月16日までの1週間では1つの医療機関あたりの平均の患者数が11.04人となり、前の週の1.21倍となっています。

43の都道府県で前の週より増加していて厚生労働省は「感染者数の伸び幅は横ばいで、全国的には緩やかな増加傾向が続いているが、特に九州や中国、四国では前の週より増加幅が大きい県が多く、引き続き感染状況を注視したい」としています。

専門家「この夏も注意が必要」

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで東邦大学の舘田一博教授は、今後の見通しについて、次のように指摘しました。

東邦大学 舘田一博教授

東邦大学 舘田一博教授
「過去3年間、夏に大きな流行があり、この夏も注意が必要だ。これまでの夏は新しい変異ウイルスが出てきてその急激な増加で感染が拡大したが、いま流行しているXBB株は広い意味ではオミクロン株の亜型で全く新しい変異ウイルスというわけではない。ただ、第8波から時間がたって免疫も下がっているので、どこまで感染が広がるのか、慎重に見ていく必要がある」

ヘルパンギーナやRSウイルス…子どもの感染症 流行続く

夏に子どもがかかりやすい「ヘルパンギーナ」の患者数が過去10年で最多の水準となるなど、子どもの間で感染症の流行が続いています。

東京 渋谷区にある小児科の「かずえキッズクリニック」でも先月はじめごろから発熱やせきなどの症状を訴えて受診する子どもが相次いでいて、「ヘルパンギーナ」や「RSウイルス」と診断されるケースが目立ちます。

このほか、新型コロナや熱が続くだけの夏かぜのような症状の子どももいて、すべてのウイルスを厳密に調べられるわけではない中で診断が難しいケースも少なくないということです。

20日受診した2歳の男の子も、先々週から発熱を繰り返しているということですが、詳しい原因はわからず、引き続き経過を観察することになりました。

東京都医師会理事「かずえキッズクリニック」川上一恵院長
「発熱症状が出る感染症は多いですが、食べ物や水分がとれていればそこまで心配はありません。解熱剤を使って穏やかに過ごせるようであれば医療のひっ迫を防ぐためにもあわてて救急に駆け込まず、自宅で様子を見た上で、かかりつけ医をゆっくり受診してほしい」

そのうえで、夏休み中の注意点として次のように呼びかけました。

「かずえキッズクリニック」川上一恵院長
「外出や宿泊の機会が増えればそれだけ感染症のリスクは高まります。特に新型コロナは高齢者にとっては今でも深刻な疾患の一つです。祖父母を訪ねる前には数日前から人混みを避けたり、早寝して体調を管理し、体調が悪ければ無理しておでかけしないということが大事です。引き続き手洗いは徹底してください。混雑した電車や屋内施設など、換気が悪い場所では一時的なマスク着用も有効です」

夏休みは休診の医療機関も 子どもが発熱したら どうすれば?

これからの夏休み、特にお盆の時期などは休診になる医療機関もある中で、子どもが夜間や休日に急に熱を出したら救急を受診するかどうか迷うかもしれません。

東京都医師会によりますと、早めに救急外来を受診してほしい事例として、
▽生後3か月未満の赤ちゃんの高熱(38℃以上)
▽激しく泣きあやしても泣き止まない、ぐずっている
▽水分を受け付けない、おしっこが半日くらい出ない
▽おう吐や下痢を繰り返し、ぐったりしている
▽眠ってばかりで呼びかけてもすぐ眠る
▽顔色が悪く、ぐったりしている
といったケースを挙げています。

一方で、発熱があっても、
▽食欲がある
▽水分がとれている
▽機嫌がよい
▽元気
▽眠れる
▽おしっこの回数はいつもと同じ
といったケースでは慌てて救急受診をする必要はないとして、家庭で様子を見て、かかりつけ医の通常の診療時間に受診するよう呼びかけています。

「かずえキッズクリニック」川上一恵院長
「子どもを心配する親の気持ちはよくわかるが、少しの発熱で皆が救急要請してしまうと、本当に重症の人を診られなくなってしまう。明らかにおかしいと思う状態は遠慮なく救急車を呼んでもらっていいが、まだ待てそうだと思う場合は自宅で経過を観察するなどご協力をお願いしたい」

薬がない… 医薬品が入手困難な状況続く

この夏は救急搬送に加えて、薬の供給についての懸念があります。

医薬品の供給をめぐっては、おととしのジェネリック=後発医薬品のメーカーの不祥事をきっかけに、医療機関や薬局で必要な医薬品が入手困難となっている状況が続いています。

日本製薬団体連合会が厚生労働省の委託を受けて行っている調査では、ことし6月末時点で製造販売業者が回答した1万7431品目のうち、出荷量を調整する「限定出荷」や「供給停止」が行われたのは22.3%にあたる3882品目でした。

厚生労働省は医薬品の供給状況について「子どもの感染症の流行でせき止めやたんを出しやすくする薬などの需要も増加しているため、一部の医薬品で品薄感が増しているのではないか。供給が安定するよう製薬会社に増産を要請していくとともに、夏休み中の感染症への対策を呼びかけていく」としています。

“ちょっと油断すると広がる マスク着用の判断も” 専門家

「5類移行」「制限の撤廃」コロナ前のような夏休みが始まりました。

ただ、東邦大学の舘田一博教授は、夏休みになって人が旅行やお盆の里帰りで移動すること、クーラーをつけていて窓を開けにくく換気を行いにくいことなど、夏場は感染が広がりやすい状況が重なるとしたうえで次のように指摘しています。

東邦大学 舘田一博教授
「私たちの周りにはまだ新型コロナウイルスが潜んでいて、ちょっと油断すると広がってしまう。お年寄りや基礎疾患のある人、免疫不全の人が感染してしまうと重症化リスクが高まるので、そういった人を守る行動が大切だ。お年寄りと接する場合や換気の悪い場所にいるときはマスクを着用するといった判断が大事になる。帰省を予定していても、体調が悪いときにはコロナかもしれないと思って自宅に待機するなど、お年寄りを感染させない行動が大事だ」