ウクライナ ロシアの警告に対抗措置発表 黒海周辺で緊張高まる

ロシア軍は、ウクライナの農産物の積み出し港がある黒海に面する南部オデーサ周辺で攻撃を続け、死傷者が出ています。ロシアは、ウクライナの港に向かう船舶は軍事物資を輸送している可能性があるとみなすと警告したのに対し、ウクライナ側も対抗措置を発表し、黒海周辺でも緊張が高まっています。

ロシア政府は今月17日に、ウクライナ産農産物をめぐる合意の履行停止を発表しましたが、その後もロシア軍は農産物の積み出し港がある南部オデーサ周辺で攻撃を強めています。

オデーサ州の知事は20日、ミサイルや無人機を使った攻撃によりオデーサ市内で1人が死亡し、8人が巻き込まれたと明らかにしました。

さらに、市内にある中国の総領事館も被害が出たとしていて、地元出身の議員はSNSに総領事館だとする写真を投稿し、建物の窓ガラスが割れている様子が見て取れます。

ロシア軍の攻撃について、ウクライナ空軍の報道官は地元メディアに対し、高速で低空を飛行する対艦ミサイルが使われたとしたうえで、迎撃が困難だったとしています。

また、ロシア国防省は19日に黒海でウクライナに向かう船舶は軍事物資を輸送している可能性があるとみなすなどと警告し、アメリカ政府はロシアがウクライナの港への航路に追加の機雷を設置した情報があるとして、懸念を示しました。

これに対しウクライナ国防省は20日、声明を発表し「ロシアは貿易ルートに軍事的な脅威を生み出した。黒海でロシアの港とロシアに一時的に占領されているウクライナ領土の港に向かうすべての船舶は軍事物資を輸送している可能性があるとみなす」として対抗措置を示しました。

声明では、ロシアが一方的に併合したクリミアとロシアの間のケルチ海峡や黒海の北東部での船舶の航行についても「危険であるため禁止する」としていて、黒海周辺でも緊張が高まっています。

国連安保理 対応協議する緊急会合開催へ

ウクライナ産農産物の輸出をめぐる合意の履行をロシアが停止したことを受けて、国連の安全保障理事会では、21日午前、日本時間の21日夜遅くから対応を協議する緊急会合が開かれることになりました。

緊急会合の開催を決めた今月の議長国イギリスは、合意の履行停止による人道的な影響について議論するとしています。

国連安保理では、ロシアが合意の履行停止を発表した17日にも閣僚級の会合が開かれ、欧米各国などから世界の食料安全保障を脅かすといった意見が相次ぎましたが、ロシアは自国産の農産物などの輸出が実現しなければ合意には復帰しないと主張し、非難の応酬となりました。

ウクライナ外相 パキスタン訪問 ロシア合意復帰の必要性訴え

ウクライナのクレバ外相は20日、パキスタンを訪問し、ブット外相と共同で記者会見を行いました。

この中で、クレバ外相はロシアがウクライナ産の農産物の輸出をめぐる合意の履行を停止したことについて「世界の食料安全保障を損なっている」と非難したうえで「ウクライナから陸路では十分な穀物を輸出できず、食料価格が上昇する」と述べ、ロシアが合意に復帰する必要性を改めて訴えました。

一方、パキスタンでは2022年の大規模な洪水により経済が混乱し、食料品などの価格が上昇していることも踏まえ、ブット外相は「この問題はすべての発展途上の国々にとって関心事だ」と述べ、解決に向けて仲介役のトルコなどの担当者と話し合う姿勢を示しました。