米軍横田基地内で泡消火剤漏れ 確認された3件のほかに4件発生

アメリカ軍横田基地内で泡消火剤が漏れ出たケースが過去に3件あったことが確認されるなか、このほかにも4件あったことが、NHKがアメリカ軍に対して行った情報公開請求でわかりました。

アメリカ軍横田基地のある多摩地域では、市民団体などが行った住民を対象にした血液検査で、有害性が指摘されている有機フッ素化合物のPFOSやPFOAが国の調査を上回る血中濃度で検出されるなど、住民からは不安の声もあがっています。

基地内で10年以上前にPFOSやPFOAを含む泡消火剤が漏れ出ていたケースが3件あったことが都の発表で明らかになるなか、NHKがアメリカ空軍に対して行った情報公開請求で、泡消火剤が基地内に漏れ出たケースがほかにも4件あったことが新たにわかりました。

内訳は、3年前に3回、去年に1回で、アメリカ軍はPFOSやPFOAの含まれていない泡消火剤への交換を進めていて、開示された報告書によりますと、今回の泡消火剤にはこれらは含まれていないうえ、いずれも基地の外には流出していないとしています。

20年以上にわたりPFOSなどの研究を続けている京都大学大学院の原田浩二准教授は「PFOSやPFOAを含む泡消火剤が漏れ出たことが明らかになったばかりで、不安に感じる住民もいる。日本政府はアメリカ軍と情報共有し、住民や自治体に情報提供していく必要がある」と話していました。

情報公開請求の内容は

今回、NHKはアメリカ軍横田基地での泡消火剤などの漏出事案の報告書について、アメリカ空軍に対し情報公開請求を行いました。

対象の期間を2000年から2022年までとした結果、合わせて6件の報告書が開示され、このうち、4件が泡消火剤でした。

それによりますと、2020年が3件で、このうち5月には消防車の貯蔵タンクからコンクリート上におよそ4リットルの泡消火剤が放出されました。

このほか、8月には消防車の点検の際、コンクリート上に100リットル余りの泡消火剤が放出されたほか、11月には泡消火剤が入ったタンクのふたの部分からおよそ4リットルが漏れ出たということです。

また、去年6月には、消火器装置の老朽化などで生じた亀裂から4リットル未満の量が出たということです。

一方、都の公表で明らかになっている2010年と2012年にPFOSやPFOAを含む泡消火剤が漏れ出た3件については、開示されませんでした。

多摩地域の地下水で国の目標値を超える値を検出

有機フッ素化合物PFASのうち、有害性が指摘されているPFOSとPFOAはこれまで沖縄県や神奈川県のアメリカ軍基地周辺の河川や地下水などで国の暫定的な目標値を超える値が相次いで検出されています。

アメリカ軍横田基地のある東京 多摩地域の地下水でも国の暫定の目標値を超える値が検出されていて、都内全域を対象にした地下水の調査では検出された17の自治体のうち、10が多摩地域となっています。

また、多摩地域の住民でつくる市民団体と専門家が共同で、多摩地域の住民650人を対象にPFOSとPFOAの血液検査を行ったところ、平均で国が行った調査の2.4倍の血中濃度が検出されていて、住民からは不安の声もあがっています。

専門家の見解は

情報公開請求で開示された報告書について、20年以上にわたりPFOSなどの研究を続けている京都大学大学院の原田浩二准教授に見解を尋ねました。

PFOSやPFOAは、4700種類以上が存在する有機フッ素化合物PFASの一種で、有害性が指摘されています。

今回明らかになった4件の泡消火剤の漏出について原田准教授は「漏れ出たのはいずれもアメリカ軍が交換を進めている泡消火剤で、PFOSやPFOAは含んでいないと考えられる」としています。

一方、報告書には別のPFASが含まれる泡消火剤が漏れ出たことが記されているということで「ほかのPFASについて有害性はまだ詳しくわかっていないが、PFOSやPFOAはのちに健康への影響が出る可能性があることがわかり、アメリカで基準が厳しくなった。PFASは一度、土や地下水の中に入ると分解されず、長期にわたり残ってしまうのが問題だ」と話していました。

また、4件のうち、去年6月のケースについて懸念すべき点をあげています。

ほかの3件は水路に入ったか尋ねる項目で「NO」にチェックが入って明確に否定している一方、このケースのみ「YES」にも「NO」にもチェックが入っておらず「一部が近くの雨水を流す排水溝に流入した」と記され、詳細は黒塗りで非開示となっています。

これについて原田准教授は「こうしたケースも今回情報公開請求をして初めて出てきたわけで、こうしたことがなくてもアメリカ軍と日本政府の間で情報共有され、住民や自治体にも提供されることが望ましい」と指摘しています。

小池知事「しっかりと対応してほしい」

小池知事は21日の記者会見で「都民の健康への不安を払拭(ふっしょく)させる必要があり、そのための対応策は何なのか問われている。これまで要請しているところだが、PFASの漏出が判明した場合は、速やかに情報提供してほしい。私たちの問い合わせに答えるだけではなく、都民目線でしっかりと対応してほしい」と述べました。