ウクライナ大統領府は21日、イギリスに駐在するプリスタイコ大使の解任を発表しました。解任の理由は明らかにしていませんが、イギリスメディアは、プリスタイコ氏が各国からの軍事支援への対応をめぐってゼレンスキー大統領を批判したことが背景にあると報じています。
イギリスからアメリカに次ぐ規模の軍事支援を取り付ける上で大きな役割を果たしてきたとしてイギリスメディアからは解任の影響を指摘する声も上がっています。
【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(21日の動き)
ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる21日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
駐英ウクライナ大使解任発表 ゼレンスキー大統領批判が背景か
プーチン大統領 ウクライナ反転攻勢の失敗強調
ロシアのプーチン大統領は21日、関係閣僚を招集した安全保障会議を開催し、このなかで、ウクライナ軍が先月上旬から開始した反転攻勢について「少なくともまだ結果がでていない。ウクライナに供与された戦車やミサイルなども役に立っていない。重要なことは、ウクライナ軍が多大な損失を被ったことだ。何万人もの人々だ」と述べ、ウクライナ軍の反転攻勢は失敗していて、ロシア側が撃退に成功していると強調しました。
ロシア軍「カリブル」で穀物関連施設破壊か
ロシア軍は21日もウクライナ南部への攻撃を続け、穀物関連施設が破壊されけが人が出ています。
ロシアは自国の農産物などの輸出制限の解除を狙い欧米側から譲歩を引き出すために攻撃を強めているとの指摘も出ています。
ロシア軍はウクライナ南部を連日攻撃していて、オデーサ州の知事は21日、ロシア軍が黒海から発射した巡航ミサイル「カリブル」が州内にある穀物関連施設を破壊し、爆発で2人がけがをしたとしています。
また同じく南部にあるザポリージャ州の当局は21日、ロシア軍による砲撃で市民4人が死亡したとSNSに投稿しました。
米 戦争研究所 “港湾への攻撃は譲歩引き出す努力か”
戦況について分析しているアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は20日、ロシアが農産物合意の履行を停止し、ウクライナの港湾などへの攻撃を強化していることについて「欧米各国から幅広い譲歩を引き出す努力の一環である可能性が高い」とし、自国の農産物などの輸出制限を解除させるための試みだと指摘しました。
ただ、こうしたロシアの動きはウクライナ産の農産物の輸出を滞らせ、ロシアが取り込みを図るアフリカの国々などへの食料供給を脅かすことになるとして、「ロシア側の国際的な取り組みの努力を台無しにする可能性がある」としています。
農産物合意の停止後 ウクライナの港から出港なし
トルコのイスタンブールには、去年7月からウクライナとロシア、それに仲介役の国連とトルコの担当者が合同で、ウクライナを行き来する船の検査を行う「共同調整センター」が設置されています。
「共同調整センター」によりますと去年8月から今月20日までにウクライナの3つの港から出発した船はのべ1004隻で、トウモロコシや小麦など輸出された農産物は、あわせておよそ3290万トンにのぼっています。
今月にはいってからはこれまでに8隻の船がウクライナの港から出港していましたが、ロシア政府が合意の履行停止を発表した17日以降は、出港していない状況が続いています。
共同調整センターでは、先月27日以降、ウクライナへ向かう貨物船の検査のための申請が認められなくなって、今月15日時点で、29隻が検査を待っているということです。
船舶の位置情報などを公開している民間のホームページ「マリントラフィック」によりますと、検査が行われてきたイスタンブールの沖合では、21日も貨物船などが停泊しているのがわかります。
合意の履行の停止をうけ、国連のグテーレス事務総長は17日の記者会見で「ロシアの決定は、困窮しているすべての人たちに打撃を与えるだろう」と述べるなど、世界的な食料危機への懸念が高まっています。
ロシア軍 黒海北西部で対艦巡航ミサイル発射演習
ロシア国防省は21日、海軍の黒海艦隊がウクライナ南部、黒海の北西部にある演習場で対艦巡航ミサイルを使った発射演習を行ったと発表しました。
ミサイルは標的とした船に命中したということです。
また、艦船と航空機の合同演習では航行禁止区域を一時的に封鎖する演習も行われたほか、違反した船舶を取り押さえるための一連の訓練も行いました。
黒海をめぐっては19日ロシアが黒海でウクライナに向かう船舶を軍事物資を輸送している可能性があるとみなすと警告しています。
これに対しウクライナ国防省も20日、対抗措置を発表するなど緊張が高まっていて、ロシアとしては黒海で演習を行うことでウクライナや欧米側をけん制した形です。
ゼレンスキー大統領「ロシアは4日間でミサイル70発近く使用」
ロシア軍は20日も、ウクライナ南部オデーサ州やミコライウへの攻撃を行うなど、ウクライナの農産物の積み出し港がある黒海に面するウクライナ南部への攻撃を強めています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は20日の声明で「ロシアのテロリストはわずか4日間で、ミサイル70発近く、イラン製無人機90機近くを南部の地域で使用した」と述べ強く非難しました。
松野官房長官「枠組み復帰強く求める」
ロシアが、ウクライナ産農産物の輸出をめぐる合意の履行を停止したことについて、松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「極めて遺憾で改めて非難する」と述べました。
そのうえで「ロシアが国際的な枠組みに復帰しウクライナから穀物輸出が再開されるように、国際社会と連携しながら国連安全保障理事会の場でも強く求めていく」と述べました。
農産物輸出合意停止で国連安保理が緊急会合へ
ウクライナ産の農産物の輸出をめぐる合意について、ロシアは今月17日に履行停止を発表し、ウクライナの農産物の積み出し港があるウクライナ南部オデーサ周辺での攻撃に加え、19日にはロシア国防省が黒海でウクライナに向かう船舶は軍事物資を輸送している可能性があるとみなすなどと警告しました。
これに対し、ウクライナ側も対抗措置を発表し、黒海周辺でも緊張が高まっています。
こうした状況を受けて国連安保理では21日午前、日本時間の今夜遅くから対応を協議する緊急会合が開かれることになりました。
緊急会合の開催を決めた今月の議長国イギリスは、合意の履行停止による人道的な影響について議論するとしています。
国連安保理では、ロシアが合意の履行停止を発表した17日にも、閣僚級の会合が開かれ、欧米各国などから世界の食料安全保障を脅かすといった意見が相次ぎましたが、ロシアは、自国産の農産物などの輸出が実現しなければ合意には復帰しないと主張し、非難の応酬となりました。
米高官「ウクライナ軍がクラスター爆弾の使用開始」
アメリカのバイデン政権は反転攻勢を続けるウクライナからの要請に応じて、1つの爆弾から多数の小型爆弾が飛び散り、殺傷能力が高いクラスター爆弾を供与することを決め、ウクライナに引き渡しました。
これについてホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は20日、記者団に対しクラスター爆弾が戦場に届き、ウクライナ軍がロシア軍に対して使用を始めたと明らかにしました。
カービー調整官は「ウクライナ軍はクラスター爆弾を適切に、効果的に使っていて、ロシア軍の防御態勢に影響を与えている」と述べて、ざんごうを掘るなどして守りを固めるロシア軍への攻撃に効果を上げているという認識を示しました。
クラスター爆弾は、一部が不発弾として残って民間人に被害を及ぼすおそれがあるとして使用などを禁止する国際条約がありますが、アメリカやロシア、ウクライナなどは加わっていません。
アメリカはロシア軍がすでに戦場でクラスター爆弾を使用しているという認識を示していますが、ロシアのプーチン大統領は、今月16日「もしわれわれに対して使用された場合、同様の対応をとる権利がある」とけん制しています。
中国外務省「総領事館死傷者なし」ロシア軍による攻撃被害で
ウクライナの地元メディアが20日、南部オデーサにある中国の総領事館がロシア軍による攻撃で被害を受けたと伝えたことについて、中国外務省は20日夜、記者の質問に答える形で報道官の談話を発表しました。
談話では「オデーサの中国総領事館の近くで爆発が発生し、その衝撃で壁と窓ガラスの一部が落下した。総領事館の職員は早くから避難しており、死傷者は出なかった」としています。
そのうえで「中国は関係者と意思疎通を続け、ウクライナにある中国の団体や職員の安全を守るため、あらゆる必要な措置を講じる」と述べるにとどめ、ロシア軍による攻撃で被害を受けたかどうかについては触れませんでした。
ウクライナ外相 ロシアが合意に復帰の必要性改めて訴え
ウクライナのクレバ外相は20日、パキスタンを訪問し、ブット外相と共同で記者会見を行いました。
この中で、クレバ外相はロシアがウクライナ産の農産物の輸出をめぐる合意の履行を停止したことについて「世界の食料安全保障を損なっている」と非難したうえで「ウクライナから陸路では十分な穀物を輸出できず、食料価格が上昇する」と述べ、ロシアが合意に復帰する必要性を改めて訴えました。
一方、パキスタンでは、去年の大規模な洪水により経済が混乱し、食料品などの価格が上昇していることも踏まえブット外相は「この問題はすべての発展途上の国々にとって関心事だ」と述べ、解決に向けて、仲介役のトルコなどの担当者と話し合う姿勢を示しました。
ロシア検察 反体制派のナワリヌイ氏に禁錮20年を求刑
ロシアでプーチン政権を批判する急先ぽうとして知られ、刑務所に収監されている反体制派の指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏に対し検察側は過激派団体を創設した罪などで新たに禁錮20年を求刑しました。
アレクセイ・ナワリヌイ氏は、プーチン政権を批判してきた急先ぽうとして知られ、毒殺未遂事件で2021年に療養中のドイツから帰国した際に過去の経済事件を理由に逮捕されました。
ナワリヌイ氏はすでに実刑判決を受け、刑務所に収監されていますが、ナワリヌイ氏の支援団体やロシアのメディアによりますと20日、検察側はナワリヌイ氏に対し、過激派団体を創設した罪などで新たに禁錮20年を求刑したということです。
これに対し、ナワリヌイ氏は、政治的な動機によるものだとして無罪を主張しています。
ナワリヌイ氏は刑務所に収監されたあともプーチン政権の批判を続け、ロシアによるウクライナ侵攻についても繰り返し非難しています。
これに対し、政権側はナワリヌイ氏への支持が広がらないか、神経をとがらせているとみられています。
支援団体などによりますと、判決は8月4日に言い渡される予定だということです。
ロシア軍 南部オデーサ周辺で攻撃強める 中国総領事館も被害
ロシア軍は、ウクライナの農産物の積み出し港がある黒海に面する南部オデーサ周辺で攻撃を続け、死傷者が出ています。
ロシア政府は今月17日に、ウクライナ産農産物をめぐる合意の履行停止を発表しましたが、その後もロシア軍は農産物の積み出し港がある南部オデーサ周辺で攻撃を強めています。
オデーサ州の知事は20日、ミサイルや無人機を使った攻撃によりオデーサ市内で1人が死亡し、8人が巻き込まれたと明らかにしました。
さらに、市内にある中国の総領事館も被害が出たとしていて、地元出身の議員はSNSに総領事館だとする写真を投稿し、建物の窓ガラスが割れている様子が見て取れます。
ロシア軍の攻撃について、ウクライナ空軍の報道官は地元メディアに対し、高速で低空を飛行する対艦ミサイルが使われたとした上で、迎撃が困難だったとしています。
ウクライナ国防省 黒海をめぐりロシアに対抗措置発表
ロシアは、ウクライナの港に向かう船舶は軍事物資を輸送している可能性があるとみなすと警告したのに対し、ウクライナ側も対抗措置を発表し、黒海周辺でも緊張が高まっています。
ロシア国防省は19日に黒海でウクライナに向かう船舶は軍事物資を輸送している可能性があるとみなすなどと警告し、アメリカ政府はロシアがウクライナの港への航路に追加の機雷を設置した情報があるとして、懸念を示しました。
これに対しウクライナ国防省は20日、声明を発表し「ロシアは貿易ルートに軍事的な脅威を生み出した。黒海で、ロシアの港と、ロシアに一時的に占領されているウクライナ領土の港に向かうすべての船舶は、軍事物資を輸送している可能性があるとみなす」として対抗措置を示しました。
声明では、ロシアが一方的に併合したクリミアとロシアの間のケルチ海峡や、黒海の北東部での船舶の航行についても「危険であるため禁止する」としていて、黒海周辺でも緊張が高まっています。