財務省が発表した先月の貿易統計によりますと、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は430億円の黒字となりました。
原油やLNG=液化天然ガスなどの輸入価格が下落したことで、輸入額は8兆7010億円と、去年の同じ月と比べて12.9%減りました。
輸出額はアメリカ向けの自動車などが伸びたことで8兆7441億円と、去年の同じ月と比べて1.5%増えました。
この結果、貿易収支はおととし7月以来、1年11か月ぶりの黒字となりましたが、最大の貿易相手国である中国への輸出が11%減少していて、貿易黒字も小幅にとどまりました。
一方、ことし1月から6月までの上半期の貿易収支は6兆9604億円の赤字となりました。
原油などエネルギーの輸入価格が落ち着いた一方で、自動車や食料品などの輸入が増えて、輸入額は0.7%増加しました。
輸出額は半導体の供給制約の緩和で自動車の輸出が増えたことなどから3.1%増加しました。
貿易赤字は、上半期としては過去最大だった去年よりも12.9%減りましたが、依然として大幅な赤字が続いています。
6月貿易収支 430億円の黒字 半年間の収支は依然として大幅赤字
先月の貿易収支は、原油などの輸入額が大幅に減ったことから430億円の黒字と、1年11か月ぶりの貿易黒字となりました。一方で、ことし6月までの半年間の貿易収支は6兆9000億円余りの赤字と、依然として大幅な赤字が続いています。
中国に製品輸出する企業の中には輸出量減少するケースも
中国に向けて製品を輸出する企業の中には景気回復の勢いが減速したことなどから輸出量が減少するケースが出ています。
東京 品川区にある従業員20人余りの専門商社では、テレビやスマートフォンに使われる電子部品の素材であるアルミはくなどを、国内のメーカーから仕入れて中国などに輸出しています。
中国の企業への売り上げは昨年度およそ30億円で、この商社の売り上げ全体の27%となっています。
会社によりますと中国の企業への売り上げは、いわゆるゼロコロナ政策の影響で落ち込んでいましたが、部品の供給制約が緩和されたことなどから去年の秋ごろからは回復すると見込んでいました。
しかし、ことし4月から先月までの3か月間の売り上げの平均は、昨年度の平均と比べて10%余り減少しているということです。
取引先である中国の電子部品メーカーからは景気回復の勢いが失速したことなどから、中国国内の家電などの消費が低迷していることが要因だと説明を受けたといいます。
また、この電子部品メーカーの工場の稼働率は下がっていて、商社が輸出する素材が余剰になっていることなどから、取引量の落ち込みが長期化する可能性があるという連絡も受けているということです。
「川竹エレクトロニクス」の矢部秀一社長は「会社としては非常に苦しい状況になっている。中国では若者の失業率が非常に高く消費意欲が下がり、今後の影響を懸念している」と話しています。
この商社では今後、中国だけでなく欧米や東南アジアへの輸出を増やしていきたいとしています。
また、需要の増加が期待されている電気自動車や風力発電設備などの製品を手がける中国のメーカーに製品を売り込んでいきたいとしています。
矢部社長は「気候変動の問題などについて中国も対策を立てていて、電気自動車や風力発電などの関連では生産は伸びているので、そういったところに製品を売り込んでいきたい」と話しています。
なぜ大幅な貿易赤字 専門家は
ことし6月までの半年間の貿易収支が6兆9000億円余りの赤字となったことについて第一生命経済研究所の副主任エコノミスト大柴千智さんに聞きました。
Q.
なぜ貿易赤字が続いている?
A.
大きくは2つの要因がある.1つは去年急速に上がっていった資源価格の上昇だ。
日本はエネルギーを輸入に依存しているので、輸入価格がどんどん上がり、それが貿易赤字を拡大させた。
もう1つは輸出の伸び悩みだ。
特に中国経済が去年のロックダウンの影響や半導体や自動車部品の供給制約の影響で減速し、それが日本国内の生産を下押しした。
Q.
今回の数字はどうみている?
A.6月単月で見ると久しぶりの黒字になったが、黒字額は小幅で黒字の基調になったということではない点に注意が必要だ。
特に中国の景気についてはゼロコロナ政策から転換したにも関わらず弱い動きが続いていて、中国向けの輸出の停滞が足を引っ張っている。
Q.
今後の見通しは?
A.
欧米向けの自動車輸出については持ち直しの動きが見られているが、欧米では去年からの金融引き締めの影響で景気の減速が顕在化してくる懸念もある。
さらに中国経済の回復もまだ見えてこない状況なので、順調な持ち直しは期待しづらい。
輸出の持ち直しは緩やかなペースにとどまり、年内は貿易赤字が続くと見込んでいる。
Q.
貿易赤字の解消に向けては何が求められているか?
A.
中国など特定の国に生産や販売が集中することのリスクを再認識し、調達先や販売経路について国内外のバランスを見直していくことが重要だ。
海外経済の影響や環境変化に強くなっていくことが日本企業に求められている。
一方でいま、日本企業の設備投資の意欲は強い。
設備投資によって国内で付加価値の高い、国際的な競争力の高い製品をつくることができるようになることも重要だ。