メンズ医療脱毛クリニック “営業停止” 利用者が返金求め提訴

東京や大阪などで展開していた男性向けの医療脱毛クリニックが営業を停止し、サービスを受けられなくなったとして、利用者たちが支払い済みの代金の返還を求める訴えを19日、東京や大阪などの裁判所に一斉に起こしました。

原告の男性「気持ち踏みにじられた」

さいたま地方裁判所に訴えを起こした会社員の佐々木ディエゴ剛実さん(30)は、友人の話やSNS上の広告がきっかけで脱毛に興味を持ったということです。

佐々木さんは「仕事などで人と接する機会が多く、脱毛をすれば清潔感があるとよい印象を持ってもらえるのではないかと考えた」と話しています。

医師が担当してくれた方が安心だと考えて、東京・池袋にある医療脱毛クリニックを選びました。

当初はひげの脱毛をするつもりでしたが、説明を聞くうちに全身脱毛をしようと思い、ことし3月に契約。代金40万円あまりを一括で振り込んだということです。

しかし予約日の3日前にクリニック側から「別の店舗と統合する」と連絡があり、予約をキャンセルされたといいます。

佐々木さんは別の店舗には通うのが難しいとして返金を依頼し、クリニック側からも応じると返答がありましたが、4月中旬に突然「休業する」というメッセージが届き、その後は連絡がつかなくなったということです。

結局、施術は1回も受けられていないということで、佐々木さんは「返金もされず強い憤りを覚えます。体毛に悩みやコンプレックスがある人が利用するケースも多いと思う。そうした人の気持ちを踏みにじっていると感じる」と話しています。

支払い済み代金の返還求め110人が提訴

19日、訴えを起こしたのは東京の渋谷や池袋、それに関西などで展開していた男性向け医療脱毛クリニック「ウルフクリニック」を利用していた男性合わせて110人で、クリニック側に対し支払い済みの代金を返還するよう求めています。

弁護士によりますと、各地にある店舗はことし4月に営業を停止しサービスが受けられない状態になっていて、なかには1回もサービスを受けていない人もいるということです。

これまでに20代や30代を中心に700件以上の相談が寄せられ、契約代金の平均は21万円だとしています。

クリニック側の弁護士 “何らかの救済すべく尽力したい”

クリニックの運営に関わっていた会社は、これまでに事業を停止して破産手続きに向け準備を進めているということで、代理人の弁護士はNHKの取材に対し「被害を訴えている人のことは認識しているので、何らかの救済をすべく速やかに破産の申し立てを行うよう尽力したい」と話しています。

トラブルを防ぐポイントは?

国民生活センターによりますと、脱毛サービスをめぐるトラブルなどの相談は増加傾向で男性からの相談も増えているということです。

今回訴えが起こされたような医師がいるクリニックなどで行われる「医療脱毛」を含む「美容医療サービス」全体の相談件数は、昨年度3708件で、このうち男性からの相談はおよそ2割にあたる775件でした。

国民生活センターはトラブルを防ぐポイントとして
▼『お試し』などと低価格を強調する広告をうのみにしないこと、
▼強引に契約を迫られてもきっぱりと断ることなどをあげていて、「契約は内容や条件をよく確認して慎重に判断し、少しでも不安があれば消費生活センターなどに相談してほしい」と呼びかけています。