19日午前10時半すぎ、秋田市寺内の国道7号沿いでのり面が崩れているのをパトロール中の警察官が確認しました。
土砂は片側2車線の国道の半分以上を覆っていて、事務所の建物1棟と車1台が流れてきた土砂で被害を受けました。警察によりますとけが人はいないということです。
このため警察は国道を現場付近で通行止めにして秋田河川国道事務所が復旧作業を行っています。

【大雨被害】秋田 約3万世帯で浸水推定 国道沿いで土砂崩れも
記録的な大雨となった秋田県では、住宅の浸水被害が広がっているほか、住宅の裏ののり面の一部が崩れ、倒壊するおそれがあるとして市が避難を呼びかけている地区もあります。
これまでの大雨で地盤が緩んだり、護岸が損傷している川もあり、19日も少しの雨でも再び災害の危険度が高まるおそれがあります。
これまでに分かっている被害の情報をまとめてお伝えします。
19日10:30すぎ 国道沿いで土砂崩れ


土砂崩れの現場近くにいた女性は「国道近くで土砂崩れが発生し車の渋滞が起きていると同僚から聞きつけ、様子を見に向かいました。現場から国道を挟んで向かい側に会社の事務所があり、さらに災害が発生してこちらまで土砂が迫ってくることもあるかもしれないので、気をつけたいと思います」と話していました。
19日10:00ごろ 秋田市 地下道が冠水 通行止め

前線の活動が活発になっているため秋田市では再び雨が強まり、19日午前10時までの1時間には26ミリの強い雨を観測しました。この影響で外旭川地区の八幡田地下道が冠水し、午前10時ごろから通行止めとなっています。
現場はJR奥羽本線の泉外旭川駅から北西に500メートルほどの場所にある市道の地下道で、地上の道路と同じ高さまで水につかっていてまったく通れなくなっています。
市道の冠水 数十メートルにわたり腰の高さまで
秋田市添川地区では、18日夜からの雨で市道が数十メートルにわたって深さ1メートルほど水につかり通行できなくなっています。
近くの工場に勤める従業員などによりますと、今月15日からの雨では付近が最大で数十センチほどの深さまで水につかりましたが、ポンプを使って近くの川に排水した結果、18日の昼までに、水はほぼ引いたということです。しかし18日夜からの強い雨で排水が追いつかなくなり、19日は大人の腰の高さほどまで水につかって通行ができなくなったということです。
工場の従業員は「工場の中まで水が入ってこないか心配です。早く天気がよくなってほしいです」と話していました。
秋田市内の浸水被害 約3万2000世帯と推定
秋田市が18日午後6時から開いた災害対策本部の会議の報告によりますと、
▼冠水した道路の沿線や
▼消防や市の職員のパトロール、それに
▼住民からの情報などをもとに秋田市内で浸水したとみられる地区を取りまとめた結果、被害が推定される地域の住民は、およそ3万2000世帯だということです。
市の中心部の広い範囲が浸水したことから、全容の把握に時間がかかっているとしたうえで、市は今後、実際にどれくらいの世帯の人が被害にあったのかを調査していくとしています。

20日と21日にも実態調査 最大200人態勢
秋田市は19日午後にも災害対策本部会議を開き、今後の方針を確認しました。
20日は50人態勢、21日からは200人態勢で浸水被害があった地域を1軒ずつ回り、実態の把握を進めるということです。
職員は2人1組で住宅の浸水の状況などを確認し、必要に応じてその場で、被災した人が公的な支援を受ける際などに必要な「り災証明書」も発行するということで1週間ほどで被害の全容を把握したいとしています。
秋田市の穂積志市長は「19日夜から20日未明にかけてもまだ油断できない状況なので、緊張感を持って住民の安全を第一に考えて対応してほしい」と指示しました。
2m50cmほどまで浸水の住宅も「信じられない」

大雨で氾濫した太平川の流域の秋田市楢山大元町では、住宅の壁に残った泥の跡などから高いところで2メートル50センチほどまで浸水していた住宅もありました。
住民は急に水かさが増して、食料を確保する間もなく、2階に避難せざるを得なかったということです。室内では家具が倒れ、ふすまや畳、それに電化製品が使えない状態になっていて、知人などが協力して家の外に運び出していました。

被害にあった70代の男性は、「50年以上住んでいますが、今までは大雨でもタイヤの半分くらいが水につかるくらいだったので信じられないです。家も取り壊すしかなさそうです」と話していました。
高台では住宅の裏が崩れ 倒壊のおそれも

秋田市によりますと、秋田市山手台の高台の上の住宅地では、住宅の裏ののり面の一部が崩れ、住宅の柵が壊れたり土台が見えたりする被害が確認されました。このため市はのり面が崩れた周辺の8世帯に対し、倒壊のおそれがある状況だとして危険性を説明し避難を呼びかけているということです。
市によりますと8世帯のうち4世帯の住民が避難していて、市はのり面がこれ以上、水を含まないよう17日ブルーシートで覆う処置をしたということです。住宅の中には大雨のあと、土台の土の部分がなくなってくいが見えているものや玄関の前の階段が崩れているものもあるということです。
秋田県内1100棟の住宅が浸水
秋田県内では確認されているだけでもおよそ1100棟の住宅が浸水したことが、18日開かれた県の災害対策本部会議で報告されました。
それによりますと、県内では18日午前10時現在、
▼床上浸水が▽五城目町で490棟▽能代市で106棟▽秋田市で91棟など、11の市町村で725棟、
▼床下浸水が▽能代市や潟上市など11の市町村で376棟と、住宅の浸水被害は合わせて1100棟余りに上っています。
ただ秋田市や五城目町などでは広い範囲で浸水が起き全容の把握に時間がかかっていることから、浸水被害の件数は今後大幅に増える見通しです。
五城目町 職員が浸水地域で住宅の訪問調査

五城目町は被害の全容を把握するため浸水した地域で住宅の訪問調査を17日から進めています。
このうち町の中心部の東磯ノ目地区では、職員が住民から話を聞きながら浸水した場所を計測したり、被害の状況をカメラで撮影したりしていました。
自宅が床上浸水し中に土砂が流れ込んだ60代の男性は「ようやく町の人が見回りをしてくれて、これからもっと情報共有が進んでいくとうれしいです。再建の見通しが立たず、日常を取り戻すまでに時間がかかると感じています」と話していました。
調査を担当している五城目町総務課の小玉重巌課長補佐は「初めてこのような被害が出た地域なので、皆さん困惑されていると思う。まずは被害を把握してできることを進めていきたい」と話していました。
五城目町では2週間ほどかけて調査を行い、被害状況を把握した上で、り災証明の速やかな発行につなげることにしています。
秋田新幹線 20日の始発から運転再開

秋田新幹線について、JR東日本秋田支社は、20日の始発から通常のダイヤで運転を再開すると発表しました。
秋田新幹線は、大雨の影響で今月15日の午前中から盛岡駅と秋田駅の間の上下線で運転の見合わせが続いていましたが、線路など設備の安全が確認されたということです。

JR五能線 少なくとも2か所で線路付近の盛り土流出

JR東日本秋田支社によりますと、秋田県内と青森県内を走るJR五能線では、運転を見合わせている区間のうち秋田県八峰町の少なくとも2か所で、線路付近の盛り土が流出する被害が確認されています。
このうち秋田県八峰町にある岩館駅と青森県深浦町にある大間越駅の間で撮影された写真でも、線路脇の土砂が数メートル流出している様子が確認できます。
JRではこのほかにも被害が発生している可能性があるとして、状況の確認を進めています。
秋田大学医学部附属病院 救急受け入れ再開
秋田市の秋田大学医学部附属病院は、15日夜から救急搬送の受け入れを停止していましたが、周辺の道路の水が引いたことなどから17日から救急の受け入れを再開しました。
ただ出勤できない医師や看護師が多く体制が整わないとして、18日以降は当面通常の外来診療は行わず、症状が重い場合を除いて診療は電話で行うということです。
病院によりますと、大雨による施設への被害はなく、電気や水道も通常どおり使えるということで入院患者への影響はないとしています。
佐竹知事 「激甚災害」指定を国に求める考え示す

佐竹知事は19日、八峰町役場を訪れて、堀内満也町長から被害状況について説明を聞き、被害の調査に携わる職員の応援や復旧費用の支援を求める要望書を受け取りました。
このあと、町道が崩れた現場へ向かい、道路の土台が崩れたことで水沢ダムからの水道管が破損し、断水につながっている現状を確認しました。また、土砂が流れ込んだ田んぼも視察し、川の堤防を越えて流れ込んだ泥を実際に手に取って確かめていました。
視察のあと佐竹知事は「市町村と県の財政力ではどうしようもないので、なんとか国の財政支援をお願いしていきたい」と述べ、来週、国に対し、復旧にかかる費用を国が負担する「激甚災害」への指定を求める考えを示しました。