水泳世界選手権 2日目結果 乾友紀子 ASで初の大会連覇

福岡市で行われている水泳の世界選手権、アーティスティックスイミングの女子ソロテクニカルルーティンで乾友紀子選手が金メダルを獲得し、世界選手権のソロで日本選手で初めてとなる連覇を達成しました。

福岡市で行われている水泳の世界選手権は大会2日目、アーティスティックスイミング、女子ソロのテクニカルルーティンで予選をトップで通過した乾選手は15日、決勝に臨みました。

演技序盤、予選よりも難易度を上げた連続の足技を決めると、上半身をダイナミックに使った豊かな表現力も見せ、276.5717をマークして金メダルを獲得し、世界選手権のソロで日本選手で初めてとなる連覇を達成しました。

連覇の乾「ミスなく泳げて安心した」

アーティスティックスイミングの女子ソロテクニカルルーティンで連覇を達成した乾友紀子選手は「本当に皆さんが応援してくれたので、しっかり金メダルを獲得して、君が代を会場に流すことができてよかった」と笑顔で話しました。

予選より難易度を上げた足技については「もともと構想はあって、練習で試してできそうだったので難易度をあげた。ミスなく泳げたことに安心した」と振り返りました。

そのうえで「日本チームはいい結果も悪い結果もあると思うが、この金メダルがほかの選手の励みになって、この先の種目に臨めると思うので、すごくいい流れ、チームに貢献できたのかなと思う」と話していました。

佐藤陽太郎 2種目で決勝に進む

また、今シーズンからチーム種目では最大2人まで男子選手が出場可能となり、アクロバティックルーティンの予選で男子の佐藤陽太郎選手を起用した日本は4位で決勝に進みました。

さらに佐藤選手は、姉の友花選手とのペアで去年銀メダルを獲得した種目、混合デュエットのテクニカルルーティンの予選に臨み、3位で決勝に進みました。

佐藤選手は「たくさんの歓声をいただけて最初から最後まで、観客の皆さんに後押しされているような気分で楽しく泳ぎ切れた。まだ自分たちができること、もっと改善できるポイントがあると思うので、決勝までに改善して臨みたい」と話しました。

続いて出場した混合デュエットではミスを取られたということで「アクロバティックルーティンに出て、ちょっと疲れているまま試合に出ることになった。原因はまだ分からないが、ミスしてしまったことは変わらないので、解決してから万全の状態であすの決勝を迎えたい」と話していました。

混合シンクロ高飛び込み 伊藤と板橋ペアが日本勢初の銅メダル

飛び込みでは、オリンピック種目ではない混合シンクロ高飛び込みの決勝に伊藤洸輝選手と板橋美波選手のペアが出場しました。

6位で迎えた3回目の演技で、課題としてきた後ろ向きに踏み切って前向きに3回半回る「407C」をしっかりと決めると、その後も息の合った演技を見せて305.34で銅メダルを獲得しました。

この種目で日本勢がメダルを獲得したのは初めてです。

伊藤選手は「世界選手権に初めて出場して初めてメダルを獲得することができて、正直、本当に泣きそうになったが、頑張ってこらえた。みんなに笑顔でありがとうと伝えた」と話していました。

板橋選手は「今までメダル候補と言ってもらっているなかで、なかなか結果を残せなかった。今回やっとメダルを獲得できたので、たくさんの人に恩返しできたんじゃないかなと思う」と笑顔で話しました。

そのうえで板橋選手は、16日の女子シンクロ高飛び込みに向けて「この銅メダルはうれしいが、もう1回あすのことを考えて、もっといい演技ができるように頑張りたい」と意気込みを語りました。

男子シンクロ板飛び込み 須山と荒木ペアは五輪内定獲得ならず

パリオリンピックの出場権がかかる男子シンクロ板飛び込みの決勝には、予選を8位で通過した須山晴貴選手と荒木宥図選手のペアが出場し、安定した演技を見せたものの、合計得点375.90の7位で上位3位以内に入ることができず、今大会での代表内定はなりませんでした。

須山選手は「悔しいし、ことばが出てこない。ベストは出せなかった。表彰台に絶対上がって、オリンピックへの出場を決めると言っていたが達成できず、悔しさと申し訳なさがある」と話しました。

そのうえで、19日に予選が行われる男子板飛び込みについて「きょう、めちゃくちゃ悔しかったので、個人では絶対にオリンピックの出場権を勝ち取る気持ちでいく。有意義に時間を使って臨みたい」と話していました。

荒木選手は「表彰台をねらっていたので、この結果には納得できないし、悔しい気持ちもある。強い選手たちと戦えたことはひとつの経験になると思うので、これから頑張らないといけない。来年の世界選手権に向けて練習に励んで、確実にオリンピックの出場権を獲得したい」と話していました。

このほか、オープンウォータースイミングの女子10キロで日本勢は蝦名愛梨選手が28位、加藤はなの選手が33位でした。

快挙の乾友紀子 これまでの歩みと次なる目標は

快挙を成し遂げた乾友紀子選手。

今大会にかける思いは人一倍強いものがありました。

もともと今大会は、東京オリンピックの翌年、2021年に開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で2度延期されました。

自国開催の世界選手権に向け、32歳の乾選手が現役を続けてきたのは、「東京オリンピックは無観客だったので、日本の観客がいるなかで泳ぎたい」という強い思いがあったからです。

3大会連続のオリンピック出場となった東京大会後には「もっと追求したい。もっと上を目指したい」と女子ソロに専念することを決めた乾選手。

長年、乾選手を指導してきた井村雅代コーチがその思いに応えて二人三脚で練習を重ね、去年の世界選手権では、日本勢初となる女子ソロで2冠を達成しました。

今シーズン、アーティスティックスイミングは大きなルール改正が行われました。

フィギュアスケートのように一つ一つの技ごとに難易度が設定され、その技の出来栄えで採点される方式に変わったのです。

技の難易度が重視される新たな採点方法への対応に手探りが続きましたが、2人が目指す方向性は変わりませんでした。

「世界一の難易度と、世界一の表現力を求める。両方できるのが世界チャンピオンだ」。

こう掲げた井村コーチに呼応した乾選手も「私にしか泳げない演技を見せていきたい」とギリギリまで追い込んで練習してきました。

潜る時間を長くし難易度の高い足技を入れながら、指先まで神経が通った高い表現力を追究した演技を目指し、大会を重ねるごとに技の難易度を上げていきました。

迎えた15日の決勝では、みずから提案したという、予選より難易度を上げた演技序盤の連続した足技を決めると、表現力も豊かに泳ぎ切り、金メダルを獲得しました。

表彰台の中央に再び立ち、充実した表情を見せた乾選手は「福岡での世界選手権にこだわって頑張ってきたので、たくさん応援に来てくれて、その方々の前でメダルを獲得できたのですごくうれしい」と喜びを語りました。

待ち望んでいた日本の観客の前で、自分にしかできない演技で連覇を果たした乾選手。

次なる目標は女子ソロのフリールーティンを制し2種目での連覇達成です。