林外相 王毅氏と会談 処理水放出“科学的観点で対応求める”

林外務大臣は、中国で外交を統括する王毅政治局委員と会談し、福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する計画について説明し、科学的な観点で対応するよう強く求めました。

会談は、インドネシアのジャカルタで日本時間の午後2時半ごろから、1時間余り行われ、冒頭、林大臣は「日中関係にはさまざまな可能性があると同時に、多くの課題や深刻な懸念にも直面していて非常に重要な局面にある。建設的で安定的な関係構築を進めたい」と述べました。

そして、福島第一原発にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画について、国際的な安全基準に合致しているとするIAEA=国際原子力機関の報告書を踏まえて実施するという日本の立場を説明しました。

放出計画をめぐって王毅氏は、13日「汚染水」という表現を使って反対の立場を示していて、これに対し林大臣は「政治問題化することに反対する」と述べた上で、科学的な観点で対応するよう強く求めるとともに、中国と科学的観点から意思疎通を行う用意があると伝えました。

また林大臣は、沖縄県の尖閣諸島を含む東シナ海の情勢や、中国がロシアと連携して日本周辺で軍事的活動を活発化させていることなどに重大な懸念を伝え、台湾海峡の平和と安定の重要性を訴えました。

さらに、中国で拘束された大手製薬会社の日本人男性らの早期解放を強く申し入れました。

一方で両氏は、引き続き首脳や外相を含むあらゆるレベルで緊密に意思疎通を図っていくことを確認しました。

中国 反対の考え改めて強調

東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を薄めて海に放出する計画について、中国外務省の汪文斌報道官は、14日の記者会見で「われわれは一貫して日本に汚染水の排出計画を直ちにやめるよう求めており、その立場にいかなる変化もない」と述べ、反対する考えを改めて強調しました。

その上で「近隣諸国や太平洋島しょ国の人々の安全と利益を無視するやり方は、国際社会から一層強い疑問や反対を引き起こすだけだ」と反発しました。

13日、インドネシアで開かれたASEAN=東南アジア諸国連合と日中韓3か国の外相会議では、福島第一原発にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画について、中国で外交を統括する王毅政治局委員が「汚染水」という表現を使って放出に反対したのに対し、林外務大臣は、科学的根拠に基づかない主張だとして国際基準にのっとって実施していくと反論していました。

中国 “海洋環境の安全や命と健康に関わる”

中国外務省は、外交を統括する王毅政治局委員が林外務大臣との会談で、「日本からの『核汚染水』の放出は、海洋環境の安全や人類の命と健康に関わるものだ」と発言したと発表しました。

また、王氏は「原発事故による海洋放出は、世界的にも前例がなく、共通して認められた基準もない」と指摘し、改めて反対する考えを示したということです。

そして、「日本側は、すべての関係者の正当な懸念と専門家のさまざまな意見を直視し、誠実な態度で近隣諸国と十分に意思疎通しみずからのやり方に固執することなく、慎重に対応すべきだ」と述べ、日本側をけん制したとしています。