生成AIの取り扱い 大学に指針を作るなどの対応促す通知 文科省

大学などでの教育活動における生成AIの取り扱いについて文部科学省は、それぞれの大学に指針を作るなどの対応を促す通知を出しました。

文部科学省は生成AIの急速な広がりを受け、小中学校や高校での暫定的なガイドラインを今月4日に発表するなど、対応を急いでいます。

大学と高等専門学校での教育面での取り扱いについては13日、それぞれの大学に指針を作るなどの対応を促す通知を出しました。

高校までのガイドラインと比べると、通知では教育の実態に応じて各大学が対応することが望ましいとされていて、「生成AIへの質問や指示を工夫するなど、使いこなす観点を取り入れることも考えられる」などとして、利活用が想定される場面を例として挙げています。

一方、留意すべき点として、
▽生成AIの回答内容に事実関係の間違いが含まれることや、
▽個人情報の流出、著作権の侵害などのおそれがあることも挙げ、取り扱いの方針やルールに反した場合の措置なども検討して示すことが望ましいとしています。

また、生成AIについては今後も急速な進歩が続くと想定されるため、技術の進展などに応じて対応を適宜見直すことが重要だとしています。

生成AIをめぐり、大学では授業やレポートでの扱い方などについて方針を示す動きが出ていますが、今回の通知でこうした動きがさらに広がりそうです。

それぞれの大学の指針は

大学の中には、授業やレポートでの生成AIの扱い方などについて、すでにホームページなどで示しているところもあります。

東京大学は生成AIの授業における利用方針をホームページで随時更新していて、一律に利用を禁止することはせず、教員が、
▽授業や課題ごとに生成AIを利用するか、禁止するかを学生に伝えることや、
▽得られた結果ではなく、解答を得る過程が重要であることを説くように伝えています。

東北大学もホームページで留意事項を示し、教員が取る対応方法として、
▽持ち帰ってレポートを書かせるのではなく、教室で記述させる試験形式にすることや、
▽提出したレポートを自分のことばで説明させたうえで採点するなどの参考例を挙げています。

近畿大学もホームページで学生に向けて、「参考・相談は可/依存は不可」などと示していて、「生成された文章をうのみにするのではなく、文献や公式資料などみずから根拠を確認し、表現することを必須とします」としています。

武蔵野美術大学もホームページで学生向けの学長メッセージを発表し、「美術大学においては著作権のことが大きな問題になる。プロの制作者として、自分の作品を世に出す人は先に類似の意匠や商標がないか調べる責任がある」などとして注意を呼びかけています。

東洋大学の情報連携学部は学部長の見解を発表し、「学生がChatGPTを使って自分の考えを深め、より高度な思考力を身につけられるように、適切な環境・指導・教材の提供を積極的に進めていく」などとして、使用を推奨する方針を明らかにしています。
学部では個人情報の漏えいを防ぐ対策を行っているほか、学生が使ったAIの状況を教員が確認しているということです。

生成AI すでに活用している学生は

生成AIについて、すでに活用している学生たちに聞きました。

東洋大学情報連携学部ではことし4月から大学の負担で、すべての学生が有料版の「ChatGPT」を使えるようにしています。
個人情報が外部に漏れないような設定にしているうえ、教員が学生の使用状況を確認しているということです。

生成AIについて2年生の男子学生は、「授業でのぼんやりとした疑問について、理解できるまで何度も質問できるので便利です。ただ、答えが正確でないこともあるので、回答の内容は本で調べています。指針がないとAIを使った課題をどう評価すればよいのか混乱することがあると思うので、指針は必要だと思います」と話していました。

大学院2年生の女子学生は「研究で使っているプログラミングでエラーが出たときに、解決方法について質問するなどしています。いつでも繰り返し質問できるので学習効率が飛躍的に上がりました。ただ、AIの回答をそのまま信じるなど、学びにつながらない使い方もあると思うので、指針を示すことは必要だと思います」と話していました。

研究以外で活用する学生もいました。

3年生の女子学生は「就職活動のエントリーシートの添削などで利用していて、ことばづかいや自己アピールに足りない要素などを指摘してもらっています。一方でエントリーシートもAIの回答をそのまま出すのは問題だと思うので、勉強以外でも適切な使い方などの指針は必要だと思います」と話していました。

東洋大学情報連携学部の坂村健学部長は「使い方に迷っている学生もいるので、生成AIについて各大学に指針を出すよう通知したことは評価できると思います。生成AIの活用を前提にすると、課題の出し方やカリキュラムの在り方なども大きく変わる可能性があります。教員も対応していかなければいけないと思います」と話していました。