カメの化石が見つかったのは岩手県久慈市にある「玉川層」と呼ばれる、およそ9000万年前の白亜紀後期の地層です。
【新種のカメの化石発見!】約9000万年前の地層から 岩手 久慈
恐竜などの化石が相次いで発見されている岩手県久慈市にある、およそ9000万年前の地層から小学生が新種のカメの化石を見つけました。
専門家は現在のカメの祖先を知る上で貴重な発見だとしています。
ことし3月、両親と発掘作業を行っていた当時小学2年生の久保佑さんがカメの下あごの化石を見つけました。
周辺で見つかった甲羅などの化石とともに早稲田大学国際学術院の平山廉教授が詳しく調べた結果、このカメは「リンドホルメミス科」という、現在では絶滅した小型のカメの仲間であることがわかりました。
この仲間はモンゴルや中国などで確認されていますが、今回見つかったものは甲羅のうろこの形が異なり、新種と判断されました。
また、この仲間の下あごの骨が見つかったのは初めてで、かみ合わせの前が狭く、奥が広いという現在のカメに見られない特徴があることも判明しました。
13日に都内で会見した平山教授は「現在、もっとも優勢なリクガメのグループの祖先にあたり、あごの化石も今まで報告がなく貴重な発見だ。詳しく研究を進めたい」と説明しました。
今回発見された化石は岩手県久慈市の久慈琥珀博物館で、7月15日から11月30日まで展示されるということです。
化石の発見相次ぐ 玉川層とは
今回、新種のカメの化石が見つかった岩手県久慈市にある約9000万年前・白亜紀後期の玉川層では、これまでにも恐竜やカメなど数多くの化石の発見が相次ぎ、日本の恐竜時代の生物相を解明する上で重要な地域となっています。
2018年には、こはくの採掘体験場で高校生が肉食恐竜ティラノサウルスの仲間の歯の化石を見つけました。
2019年には国内では初となる古代のサメ「ヒボダス類」の背びれに付いていたとげの化石も見つかりました。
2021年には、以前見つかった化石をもとに現在のスッポンに近いカメ類の新種「アドクス・コハク」も発表されています。
現地で調査を続けている久慈琥珀博物館と早稲田大学によりますと、2023年6月現在で玉川層から発見された脊椎動物の化石は30種類前後、2955点にのぼっています。
化石を発見した小学生は
化石を見つけたのは現在、小学3年生の久保佑さんです。ことし3月、両親とともに、こはくや恐竜の化石で有名な岩手県久慈市を訪れ、発掘調査に参加しました。
両親は古生物などの研究者で、久保さんも2021年から調査に参加し、これまでもサメの歯やワニの歯などの化石を見つけてきました。
久保さんは今回の調査中、履いていた長靴が汚れたため近くの川にゆすぎに行ったところ、手のこぶし大くらいのかたまりが落ちていたのを見つけました。
そこで拾い上げて割ってみたところ化石を見つけたということです。
この化石がおよそ9000万年前に生きていたカメの仲間、「リンドホルメミス科」に属する新種の下あごで、貴重な発見となりました。
会見に出席した久保さんは「うれしかった。発掘調査は昆虫探しみたいに探すのが楽しいです。見つけた化石は落とさないように注意しています」と話していて、将来の夢は昆虫学者になることだということです。
研究にあたった早稲田大学の平山廉教授は久保さんについて、「佑くんは集中力があるので大発見する予感があった」と話し、貴重な発見に称賛のことばをおくっていました。
国内で発見!新種のカメの化石とは
国内では、福岡県や千葉県などでも新種のカメの化石が見つかっています。
「アドクス・コハク」2008年発見 岩手・久慈
おととし(2021年)には、今回と同じ岩手県久慈市で、およそ9000万年前の地層から発掘されたカメの化石が、すでに絶滅したスッポンの仲間に近いカメが進化した新種のものだったことが判明しました。
この化石は2008年、久慈琥珀博物館の採掘体験場で玉川層と呼ばれる地層から発掘されました。
依頼を受けた平山廉教授が調査した結果、化石は現在のスッポンに近い「アドクス」という絶滅したカメの甲羅だとわかりました。
「アドクス」の化石はアジアや北米でも報告されていますが、この時見つかった化石には甲羅に周辺のうろこの拡大や前方のうろこの消失といった特徴が見られたほか、大きさもアジアで発見された中で最大だったということです。
このため平山教授は「アドクス」の中でも特殊化や大型化が進んだ新種だとして、学名を「アドクス・コハク」と名付け、国際誌に論文を発表しました。
「タネガシマハナガメ」2003年発見 鹿児島・種子島
2013年、種子島の1600万年前の地層から見つかった古代のカメの化石が、甲羅の特徴から日本固有の新種のカメと確認されました。
この化石は2003年、南種子町教育委員会の学芸員がおよそ1600万年前の地層から発掘。
長さおよそ33センチの甲羅がほぼ当時の形のまま見つかりました。
岡山理科大学高橋亮雄専任講師らの研究グループで種類を見分ける決め手になる甲羅の構造を詳しく調べたところ、現在、台湾やベトナムなど国外で生息している淡水のカメ「ハナガメ」の祖先で、首近くのおなか側の甲羅の大きさや背中の甲羅の形から日本固有の新種だとわかりました。
研究グループではこのカメの化石を「タネガシマハナガメ」と名付け、2013年、国際学術誌に新種として記載されました。
「オカディアニッポニカ」2001年発見 千葉・袖ケ浦
こちらのカメの化石が千葉県袖ケ浦市のおよそ20万年前の地層から見つかったのは2001年。
千葉県立中央博物館の研究員や大学の研究者らでつくる研究グループが発掘しました。
甲羅や手足、あごの骨など150点余りにのぼります。
台湾やベトナムなどに生息する「ハナガメ」に似ていますが、「ハナガメ」よりも甲羅が大きく、あごのかみ合わせの部分も幅広いことから日本古生物学会が新種のカメと認定しました。
この新種のカメには「オカディアニッポニカ」という学名がつけられました。
「アドクス・センゴクエンシス」1994年発見 福岡・宮若
福岡県宮若市の千石峡でカメの甲羅の化石が見つかったのは1994年。
2015年になって、福井県立恐竜博物館などの調査で新種のカメだったことがわかりました。
見つかったのは1億2000万年から1億1000万年前の白亜紀前期の地層です。
7点あり、大きさ29センチほどの甲羅の一部と考えられています。
福井県立恐竜博物館などが調査した結果、甲羅の表面の模様から、3400万年前に絶滅した原始的なスッポンの仲間「アドクス類」の新種と確認されました。
首のすぐ後ろにある甲羅の台形型の模様をほかのアドクス類と比べると幅が広くなっている点が決め手になったということです。
発見された場所にちなんで「千石峡のアドクス」を意味する「アドクス・センゴクエンシス」と名付けられました。