「2024年問題」高速道路のトラック速度引き上げ検討へ 警察庁

物流業界で人手不足の深刻化が懸念される「2024年問題」に対応するため、警察庁は大型トラックの高速道路での最高速度を時速80キロから引き上げることについて、有識者の検討会を設け、具体的な議論を始めることになりました。

物流業界では、来年4月からトラックドライバーへの時間外労働の規制が強化されることから人手不足の深刻化や輸送量の減少が懸念されていて、「2024年問題」と呼ばれています。

政府が、先月取りまとめた新たな対策の中で、事業者がより効率的に荷物を配送できるよう、80キロとされている高速道路でのトラックの最高速度を引き上げる方向で調整する方針が示されたことを受けて、警察庁は検討会を設け、議論を始めることを決めました。

対象となるのは車両の総重量が8トンを超えるトラックなどで、積み荷の重さでハンドル操作が難しいことなどから、普通乗用車の100キロよりも制限されていますが、近年は自動ブレーキなどの新たな技術により、安全は確保できるという指摘もあります。

警察庁は交通工学が専門の有識者や物流業界の関係者などでつくる検討会を今月末に開催し、事故の状況や、新たな技術の普及の程度など、論点を整理したうえで年内にも提言をまとめることにしています。

高速道路の速度引き上げ経緯について

高速道路での最高速度をめぐっては、大型トラックなどを除き順次、引き上げられてきました。

高速道路の法定速度は道路交通法の施行令で定められていて、普通乗用車は時速100キロ以下ですが、車体の性能向上などにより、昭和40年に大型バスなども同じ100キロ以下に引き上げられました。

このほか、都道府県公安委員会の個別の決定に基づいて、新東名高速道路など12の区間で普通乗用車などの最高速度は120キロに緩和されるなどの措置もとられています。

一方、車両の総重量が8トン以上のトラックなどについては、積み荷の重さで車体のバランスが取りづらいことなどから、これまで引き上げられたことはありませんでした。

こうした中、近年は自動ブレーキといった新たな技術によってより安全に運転できるようになっているなどとして、先月開かれた「2024年問題」に関する関係閣僚会議で最高速度を引き上げる方針が政府から示されました。

去年は、高速道路上で大型トラックなどが絡む死亡事故が24件発生していて、警察庁は最高速度の引き上げによる安全への影響などを踏まえて検討会で具体的な議論を進めていく方針です。

警察庁 露木長官「年内をめどに提言」

警察庁の露木康浩長官は定例の会見で、「検討にあたっては高速道路における大型貨物自動車の事故件数が平成23年をピークに減少傾向にある一方で、大型貨物自動車の事故は死亡事故などの重大事故につながりやすいことも踏まえる必要がある。車両の安全装置として衝突被害を軽減するブレーキが普及しつつある中で、速度規制の在り方について有識者にご意見を頂き、年内をめどに提言を取りまとめたい」と話していました。