日韓首脳会談 原発処理水の放出計画に理解求める

リトアニアを訪問している岸田総理大臣は、韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領と会談し、福島第一原発の処理水を薄めて海に放出する計画に理解を求めたのに対し、ユン大統領は、IAEA=国際原子力機関の報告書を尊重する立場を説明しました。また、両首脳は、北朝鮮のミサイル発射を非難するとともに、連携して対応していくことを確認しました。

ことし5月以来となる日韓首脳会談は、日本時間の12日夜7時すぎから、およそ30分間行われました。

冒頭、岸田総理大臣は「再び、われわれが2国間協力や国際社会の諸課題について率直に意見を交わすことで、日韓関係の強化に一層弾みをつけていきたい」と呼びかけました。

これに対し、ユン大統領は「韓国と日本の両国がともに協力すれば、地域の平和と繁栄、そしてグローバルな懸案を解決するうえで大いに役立つと考えており、緊密な意思疎通を図っていきたい」と応じました。

そして会談で、岸田総理大臣は、福島第一原発にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画について、安全性に万全を期し、健康や環境に悪影響を与えることはないと説明しました。

そのうえで、放出の開始後、モニタリングで放射性物質の濃度が基準を超えれば、計画どおり直ちに中止すると伝え、理解を求めました。

これに対して、ユン大統領は、IAEAの報告書を尊重することも含めた韓国政府の立場について説明し、当局間で緊密に意思疎通を続けていくことで一致しました。

また、両首脳は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を非難するとともに、日韓、日米韓3か国で連携して対応していくことを確認しました。

このほか会談では、財務や輸出管理などの分野での対話や協力の進展を確認するとともに、日韓ハイレベル経済協議の年内開催に向けて調整を進めていくことになりました。

韓国 ユン大統領「国民の健康と安全を最優先に考慮」

韓国政府によりますと、ユン・ソンニョル大統領は「国民の健康と安全を最優先に考慮すべきだ。放出がすべて計画どおりに行われるかモニタリングした情報をリアルタイムで共有し、点検する過程に、韓国の専門家も参加できるようにしてほしい」と述べるとともに、放射性物質の濃度が基準を超えるなどの異常があれば、直ちに放出を中断し、韓国側に事実を知らせるよう求めました。

また、北朝鮮による12日のミサイル発射については、国連安保理決議に違反し、朝鮮半島や地域の緊張を高める深刻な挑発だという認識を両首脳が共有したほか、日韓、日米韓の首脳間で緊密に意思疎通を行い、協力を続けていくことで一致したとしています。