猛暑で熱中症とコロナの患者増加 “対策の両立を”

猛烈な暑さが続く中、関東地方では熱中症と新型コロナの患者がどちらも増えている病院があります。
病院では受け入れ態勢がひっ迫するおそれもあるとして、熱中症対策と、手洗いなどの基本的な感染対策を両立してほしいと呼びかけています。
熱中症と感染症の対策、どう両立すればよいのでしょうか。

“受け入れ態勢 ひっ迫しかねない”

千葉県成田市にある国際医療福祉大学成田病院では7月はじめごろから、熱中症の疑いで病院に運ばれる人と、発熱の症状を訴え、新型コロナの感染が確認される人が徐々に増えているということです。

今週に入ってからは、暑さで体調を崩して病院に運ばれる人は1日あたり5人前後とさらに増えていて、12日も屋外に長時間いた男性が熱中症の症状を訴え、意識がはっきりしない状態で病院に運ばれていました。

病院の救急科では、熱中症の疑いがある人でも、体温が38度以上あるときは感染の可能性があるとして、医師や看護師は防護服を着て検査などを行っています。

病院では、熱中症で重症化した場合などに入院できるベッド数を11日から増やして対応にあたっていますが、熱中症や新型コロナの患者がさらに増えれば、受け入れ態勢がひっ迫しかねないとしています。

国際医療福祉大学成田病院の志賀隆救急科部長は、「高齢者を中心に搬送が増えていて、熱中症に限らず、肺炎や感染症などさまざまな理由で体調が悪化するケースが多い。コロナが5類になったことで、この夏のイベントなども増えると思うが、炎天下での活動を控えつつ、手洗いや体調が悪いときはマスクをするなど、熱中症対策と基本的な感染対策の両立を心がけてほしい」と話しています。

猛暑から子どもたちを守るために

一方、千葉県八千代市にある保育園では、建設現場や学校などで使われている気温や湿度などから熱中症の危険度を測る計測器を購入し、子どもたちを外で遊ばせるかどうか毎日判断しています。

測定器は熱中症の危険度を5段階に分けて表示するもので、保育園では一番上の「原則中止」と2番目の「厳重警戒」だった場合には外で遊ばせないことにしています。

12日は午前中、上から2番目の「厳重警戒」が表示されたことから保育士が子どもたちに暑いので外では遊べないことを伝え、子どもたちは部屋の中でボールを使うなどして遊んでいました。

測定器を購入するまでは保育園が気温などを参考に外で遊ばせるか決めていましたが、より具体的な指標をもとに判断できるようになったということです。

保育園ではほかにも、直射日光が室内に入らないよう光を遮るシートを設置するなどして対策を進めています。

勝田保育園の丸山純園長は「熱中症は大人の配慮で防げるものだと思うので、しっかりと防いで、子どもを病気なく帰すことを大切にしていきたい」と話していました。

八王子で39度超 都内では熱中症の疑い41人搬送

気象庁によりますと、12日は関東甲信を中心に気温が上がり、東京・八王子市では午後1時すぎに39.1度を観測。ことし全国で1番の暑さになりました。

東京消防庁によりますと、都内では12日午後3時までに、3歳から94歳までの男女、あわせて41人が熱中症の疑いで救急搬送され、このうち18人が中等症、23人が軽症だということです。

各地の日中の最高気温は東京・練馬区で38.6度、さいたま市で38.5度などと危険な暑さとなったほか、東京の都心と水戸市で37.5度、静岡市で36.3度、津市で35.7度などと猛烈な暑さとなりました。

西日本と北日本でも気温が上がり、名古屋市で34.6度、大阪市で33.3度、仙台市で32.9度、福岡市で32.6度などと厳しい暑さとなりました。

夜になっても気温が下がらず、13日の朝にかけて西日本と東日本を中心に各地で気温が25度を下回らない熱帯夜が予想されています。

また、13日も西日本から北日本の広い範囲で厳しい暑さが続く見込みで、記録的な大雨となった九州北部の被災地でも大分県中津市で32度、福岡県久留米市で31度などと予想されています。

引き続き、熱中症への警戒を続けてください。

熱中症と感染症の対策 どう両立?

暑さと感染症の対策はどう両立すればいいのか。
国際医療福祉大学成田病院の志賀隆 救急科部長に聞きました。

屋外の活動の注意点

屋外では、マスクの着用により熱中症のリスクが高まります。

マスクの着用は個人の判断に委ねられていますが、特に暑い時期に運動をする時には忘れずに外すようにしてください。

通勤や通学などの際も屋外であれば基本的には着用の必要はないといいます。

そのうえで、基本的な熱中症対策を心がけ、
▽気温が35度以上の猛暑日や熱中症警戒アラートが出ているときは、できるだけ外出を控える
▽どうしても避けられない屋外での活動があるときには、1時間に1回など定期的に休憩することも大事だといいます。

このほか、
▽帽子や日傘を利用したり涼しい服を着たりすること
▽こまめに水分補給するなどの対策も有効です。

屋内の活動・自宅などでの注意点

屋内のイベントなどで、たくさんの人が集まるときは、
▽できるだけ換気の良いところで
▽大声での会話は避ける
▽体調が悪いときは参加を自粛するといったこれまでの基本的な感染対策を守ることが重要です。

そのうえで、室内であっても汗をかき、体に負担がかかることもあるため、
▽こまめに水分や塩分を補給すること
▽活動は自身の体調を判断しながら適度な範囲で行うこと
▽室内の温度は28度以下が望ましいとされていることから、自宅ではエアコンはためらわずに使うことを心がけるようにしてください。

子どもは特に注意

子どもは大人と比べて身長が低いため、地面から反射される熱を受けやすく、体温を調節する機能が未発達で汗がうまくかけない、熱がこもりやすいなどの特徴があります。

このため、水分の摂取ものどが渇いてからでは遅いので、保護者や年長者がこまめに水分をとらせる必要があります。

また、高齢者は自身の体調の変化をうまく伝えられないケースがあり誰かが注意してあげる必要があります。

こんなときはすぐ救急車を

意識がもうろうとしている、あるいは意識がないときは、緊急を要するときです。

患者を涼しい場所に移して、すぐに119番をしてください。

熱中症の症状がひどくて、歩けなくなっている場合や、吐き気などで水分がとれない場合は点滴が必要となりますので、救急車を呼ぶことを早めに検討してください。

迷ったらここに

体調が悪化した場合、通常、かかりつけの医療機関に相談しますが、すぐに電話がつながらない、受診できないというケースもあります。

相談が難しい場合や判断に迷った場合は、必要な対応について詳しく教えてくれる電話相談窓口があります。

▼#7119(救急要請相談)
すぐに病院に行ったほうがよいか、救急車を呼ぶべきかを悩んだり、ためらったりした時にかけます。

▼#8000(こども医療相談)
こどもの症状に保護者がどう対応したらいいか判断に迷った時、家庭での対処方法や状態の観察ポイントを詳しく知りたい時にかけます。

▼このほか、自治体の電話相談窓口もあります。自治体や地域によって実施状況や受け付け時間が異なりますのでご確認ください。