【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(12日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる12日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

G7 ウクライナ支援 “長期的な安全の保証への関与”

NATO=北大西洋条約機構の首脳会議が開かれたリトアニアでG7=主要7か国が、ウクライナへの支援について発表する共同宣言の案が明らかになりました。

G7各国は、長期的な安全の保証への関与や取り決めに向けてウクライナとともにそれぞれ作業を進めるとしています。

具体的には、現在のウクライナを守ることができ、ロシアによる将来の侵略を抑止できるような持続可能な軍事力を確保するとして、防空システムや長距離兵器、装甲車両、それに戦闘機といった装備の供与を優先するとしています。

また▽ウクライナの防衛産業の基盤のさらなる発展に向けた支援のほか▽ウクライナ軍に対する訓練や機密情報などの共有も行うとしています。

さらに将来、ロシアによる武力攻撃が発生した場合には、各国は、適切な次の措置を決定するため、ただちにウクライナと協議する意図があるほか、ロシアの侵略によって引き起こされた損害などの賠償のため、国際的な仕組みを設立する必要性を認識し、そのための選択肢を模索する用意があると表明しています。

そして、G7各国は、それぞれの法律や憲法が定めた要件のもとで長期にわたる支援を明確にするために、ウクライナとの交渉を開始すると明記されています。

ゼレンスキー大統領「ウクライナがNATO入ると確信」

ウクライナのゼレンスキー大統領は、NATO首脳会議が開かれているリトアニアで、ストルテンベルグ事務総長とともに日本時間の12日午後7時過ぎから共同で記者会見を開き「ウクライナがNATOを必要としているように、NATOはウクライナを必要としていると信じている。戦争のあと、ウクライナがNATOに入ると確信している。実現に向けてあらゆることを行うつもりだ」と述べました。

その上で「もしG7がウクライナがNATOに加盟するまでの間の安全を保証することで合意すれば、それは非常に重要なことだ」と述べました。

ロシア大統領府 ウクライナ支援の動き「潜在的に非常に危険」

ロシア大統領府のペスコフ報道官は12日、G7=主要7か国によるウクライナの長期的な安全の保証をめぐる支援の動きについて「大きな間違いで、潜在的に非常に危険だ。ウクライナに保証を与えることで、ロシアの安全を脅かすことになる。中長期的にも短期的にもきわめて悪い影響が出る」と批判しました。

また、NATO=北大西洋条約機構について「安定や安全を確保するためにつくられた同盟ではない。不安定と侵略をもたらす攻撃的な同盟だ」と述べ、改めて警戒感を示しました。

NATO首脳会議最終日 ウクライナのNATO加盟初会合へ

NATO首脳会議は12日、最終日を迎え、日本などインド太平洋地域の国も参加して地域を越えた共通の安全保障上の課題などについて意見を交わしました。

このあと、ウクライナの将来的なNATO加盟などに向けて話し合うため、新たに創設された「NATOウクライナ理事会」の初会合がゼレンスキー大統領も参加して行われる予定です。

G7首脳 ウクライナへの長期的支援で合意

NATO首脳会議では、ウクライナが求めていた「加盟に向けた正式な手続きの開始」は見送られ、加盟するまでの安全をどう保証するかが課題となっています。

こうした中、アメリカ・ホワイトハウスの高官は12日、記者団に「アメリカはほかのG7の首脳とともに、ウクライナが自衛し、将来の攻撃を抑止できる軍事力を構築するための支援を行う意向を表明する」と述べ、G7の首脳がウクライナへの長期的な支援を行うことで合意し、ゼレンスキー大統領とともにまもなく表明する見込みだと明らかにしました。

この合意のもと、各国は、ウクライナとの2国間の安全保障に関する協議を行うとしており、ロシアによる将来的な侵略を抑止し、持続的な防衛力を確保するとしています。

ロシア軍大規模攻撃 「NATO首脳会議への反応か」

ロシア軍は首都キーウなど各地で空からの大規模な攻撃を行い、ウクライナ軍の参謀本部は11日、イラン製の無人機28機のうち、26機を迎撃したなどと発表しました。

南部の港湾都市オデーサでは、地元の当局によりますと、港にある穀物などが入った倉庫が無人機の攻撃をうけ、火災が起きるなど被害が出たということです。

さらに12日もキーウなど各地で無人機による攻撃が報告されました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は11日に発表した分析で「ロシア軍の無人機攻撃はリトアニアでのNATOの首脳会議に対する反応だろう。ウクライナへの軍事支援を思いとどまらせる目的がある」と指摘しました。

また、ウクライナ産の農産物の主要な輸出港になっているオデーサが狙われたことについて、農産物の輸出を巡る合意の期限が7月17日に迫るなか、ロシア側が輸出継続を妨害しようとするけん制ではないかという見方も示しています。

ロシアメディア 「ミサイル攻撃で最も階級高い将校死亡」

ウクライナ軍は反転攻勢を続けていて、ロシアの複数のメディアは11日、ウクライナ側が奪還を目指すとされる南部ザポリージャ州の港湾都市ベルジャンシクでウクライナ軍がミサイル攻撃を行い、ロシア軍の将校が死亡したと伝えました。

ロシアメディアは、死亡したのは、ロシア軍の南部軍管区司令部で副司令官をつとめるツォコフ中将で、死亡が確認されれば、ウクライナへの軍事侵攻を行うロシア軍の中で、最も階級の高い将校の死亡だと伝えています。

ゼレンスキー大統領 NATO首脳会議へ「話し合いたい問題3つ」

ウクライナのゼレンスキー大統領は12日、NATO首脳会議の会場に到着し、記者団に対し「きょうは優先して話し合いたい問題が3つある」と述べました。

反転攻勢を進めるウクライナ軍への追加の軍事支援のほか、NATOが判断を先延ばしにした加盟に向けた手続きの開始の問題、それにNATOに加盟するまでのウクライナの「安全の保証」について、各国と協議したい考えを示しました。

NATO事務総長 日本との連携の重要性 強調

NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は12日、日本の岸田総理大臣との会談に先立って「日本ほどNATOに近いパートナーはおらず、私たちは日本とのパートナーシップをとても重視している」と述べました。

そのうえで「岸田総理大臣も繰り返し述べているとおり、アジアで起きていることはヨーロッパにとって重要だし、ヨーロッパで起きていることはアジアにとって重要だ。ウクライナでの戦争が示すように、安全保障は地域的なものではなく世界的なものだ」として、ロシアや中国の動向も念頭に、日本との連携の重要性を強調しました。

フランス 長射程のミサイル供与へ

リトアニアで開かれているNATO=北大西洋条約機構の首脳会議に参加したフランスは11日、新たに射程の長い巡航ミサイルをウクライナに供与することを明らかにするなど、各国は、追加の軍事支援について発表しました。

フランスのマクロン大統領は「相手の敵陣深くまで攻撃する能力を持てるようにするため長い射程のミサイルを供与することを決めた」と明らかにしました。

フランスの有力紙ル・モンドなどが伝えたところによりますと、供与されるのは巡航ミサイル「SCALP」(スカルプ)で、射程が250キロと長いのが特徴です。

「SCALP」はイギリスでは「ストームシャドー」と呼ばれすでにイギリスが供与しています。

NATO 条件整えばウクライナ加盟手続き開始を合意

NATO=北大西洋条約機構はバルト三国のリトアニアで開いている首脳会議で、ウクライナについて条件が整い加盟国が同意すれば、加盟に向けた正式な手続きを始めることで合意しました。

しかし、ウクライナ側が求めてきた手続きの開始は見送りいつ加盟できるかも明確にしませんでした。

ウクライナのゼレンスキー大統領は「NATOへの招待や加盟について期限が設定されないとすればありえず、ばかげた話だ」とSNSに投稿し、強く反発していただけに、NATOとウクライナの結束に影響が出るか、注目されます。

ウクライナ軍にF16の訓練 今夏開始へ

ウクライナ軍のパイロットなどを対象にしたF16戦闘機の訓練が、ヨーロッパを中心とする11か国の支援のもと、この夏から始まることになりました。

ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナは、制空権の確保に向けて欧米各国にF16戦闘機の供与や訓練の実施を求めてきました。

こうした中、リトアニアの首都ビリニュスで行われているNATO首脳会議で11日、ウクライナのレズニコフ国防相とデンマークやオランダなどヨーロッパを中心とする11か国の国防相が会談し、各国がウクライナ軍によるF16戦闘機を使った訓練を支援することで合意しました。

デンマーク国防省などによりますと、訓練はこの夏からデンマークで始まり、その後、ルーマニアでも行われる予定です。

ウクライナ軍のパイロットのほか技術者や支援にあたる要員が対象で、パイロットは選抜試験のあと、語学や飛行の訓練などを受けるということです。

レズニコフ国防相はツイッターに各国への感謝を表明した上で「F16戦闘機はウクライナの空とNATOの東側を守るだろう。ウクライナ空軍は、その扱い方をなるべく早く身につける準備がある」と書き込みました。

訓練に使う機体はデンマークとオランダが提供することになっていて、両国とも将来的にウクライナへの供与を検討する構えも見せています。

ロシア国防相 反転攻勢 撃退と強調

ロシアのショイグ国防相はウクライナ軍の反転攻勢に対して「敵はどの前線でも目的を達成できなかった」として撃退に成功していると強調しました。

NATO=北大西洋条約機構が首脳会議を開く中、ウクライナを支援する欧米に対抗する姿勢を鮮明にしています。

ロシア国防省は11日、ショイグ国防相がロシア中部タタルスタン共和国を訪問し、装甲車やヘリコプター、戦略爆撃機などを製造する兵器工場を相次いで視察したとする映像を公開しました。

一連の視察でショイグ国防相は、兵器の近代化や増産に力を入れる姿勢を強調しました。

また、年内に新型の戦略爆撃機がロシア軍に配備されることがショイグ国防相に報告されたということで、核兵器が搭載可能な戦略爆撃機の存在を示し、欧米側をけん制する思惑もあるとみられます。

さらに、ショイグ国防相は現地で国営メディアに対し先月上旬から始まったウクライナ軍の反転攻勢について「ウクライナ軍は2万6千人以上の兵士を失った。われわれは航空機や戦車などを破壊し、そこにはドイツ製の戦車レオパルト17両などが含まれている。また、巡航ミサイルのストームシャドー27発や無人機などを迎撃した」などと主張し、欧米から供与された戦車やミサイルも破壊したことを誇示しました。

そして「全体として敵はどの前線でも目的を達成できなかった」として撃退に成功していると強調しています。

また「アメリカが、クラスター爆弾をウクライナに供与したらロシア軍はこれに応じて、同様の兵器を使うことを余儀なくされるだろう。ロシアのクラスター爆弾はアメリカよりもはるかに効率的で多様だ」と述べ、クラスター爆弾の供与を発表したアメリカを強くけん制しました。

ショイグ国防相は「多忙なスケジュールの中でも、最高司令官であるプーチン大統領は1日に2回、司令官から詳細な説明を受けている」とも述べ、ロシア側の軍の統制もアピールし、11日からNATOが首脳会議を開く中、欧米に対抗する姿勢を鮮明にしています。