“東西5000キロ余にわたる大量の水蒸気”が九州北部大雨の要因

九州北部に記録的な大雨が降った要因について、専門家は日本の上空に「大気の川」と呼ばれる大量の水蒸気が東西5000キロ余りにわたって流れ込んでいたことが影響したと指摘しています。背景には世界の天候に影響を及ぼす「エルニーニョ現象」があるということで「ことしは大気の川ができやすく大雨には今後も警戒が必要だ」と指摘しています。

気象学が専門の筑波大学の釜江陽一助教は、九州北部で雨が強まった9日から10日にかけての人工衛星のデータから水蒸気を分析しました。

九州北部で線状降水帯が発生した10日午前3時ごろのデータをみると、上空に大量の水蒸気が帯状に流れ込む「大気の川」が、日本付近と日本の南の海上の2か所に形成されていたことが分かりました。

このうち、大陸から九州、太平洋と日本の上空に伸びた大気の川は、南北の幅が500キロ、東西の長さは5400キロにわたっていました。

水蒸気量は九州北部のこの時期の平均より40%多かったとみられています。

釜江助教によりますと、2017年の九州北部豪雨の際は、大気の川と言えるほど水蒸気の規模は大きくなかったということで、今回、大分県から佐賀県にいたる広い範囲に大雨をもたらしたことにもつながったとみています。

“エルニーニョ現象”の存在

ではなぜ、今回「大気の川」ができたのか。

釜江助教は「エルニーニョ現象」の存在が大きいとしています。

ことしの夏、「ラニーニャ現象」から南米ペルー沖の海面の水温が平年より高い「エルニーニョ現象」になりました。

「エルニーニョ現象」の際は、日本の南の太平洋高気圧が西に張り出して水蒸気が九州の南西側へ流れ込みやすくなり、大気の川ができやすいということです。

釜江助教は「これだけ長い大気の川が形成されることは珍しい。ことしは日本の上空に水蒸気が流れ込みやすい特徴があるので、今後も『大気の川』による大雨に警戒する必要がある」と話しています。