7月11日は「世界人口デー」 インドが世界最多 人口の増加続く

7月11日は国連が定める「世界人口デー」です。国連人口基金によりますと、世界の人口は去年11月に80億人を上回り、ことし半ばの国別の推計値では、インドが14億2860万人と中国を上回り世界で最も多くなるなど、人口の増加が続いています。

国連人口基金がことし4月にまとめた白書によりますと、世界の人口は去年11月に80億人を上回り、ことし半ばの時点の推計では80億4500万人に達するとしています。

また、ことし半ばの国別の推計値ではインドが14億2860万人と、中国の14億2570万人を上回って最も多くなり、次いでアメリカが3億4000万人、インドネシアが2億7750万人、パキスタンが2億4050万人となっています。

インドの人口は今後も増え続け、2050年にはおよそ16億7000万人に達するとされています。

世界の人口は2037年ごろには90億人、2058年ごろには100億人に達すると見られますが、増加のペースは鈍っており、2080年代に104億人に達したあとは徐々に減少していくと予測されています。

インド人口増加の背景は

インド政府は1950年代以降、人口を抑制するため夫婦の子どもを2人までとすることなどを目標にした政策を展開し、一時は避妊手術なども行われましたが、現在は国としての厳格な制限はありません。

人口は毎年およそ1000万人のペースで増えていて、背景の1つには衛生環境の改善などによる乳幼児の死亡率の低下があるとみられています。

政府の統計によりますと、乳幼児が亡くなる割合は2000年には1000人当たり68人でしたが、2020年には28人へと大幅に減りました。

また、高い経済成長が続いていることや食料の面でカレーのナンなどに欠かせない小麦やコメの自給率が高いことなども背景にあるとみられ、平均寿命は1970年代前半には49.7歳だったのが、2000年代後半には69.7歳へと、20年も長くなっています。

2050年には16億人を超えると推計されるなど、人口が減り始めた隣国の中国とは異なり、インドの人口の増加は当面続くとみられています。

世界人口 3人に1人がインドまたは中国 国連推計

国連の推計に基づくと、世界の人口、80億人のうち、3人に1人はインドまたは中国という割合になります。

インドの人口を世界のほかの地域と比べると、EU=ヨーロッパ連合のおよそ3倍、ASEAN=東南アジア諸国連合のおよそ2倍、アフリカ全体とほぼ同じとなります。

「全方位外交」展開で存在感高めるインド

インドは、国益を最優先に必要な国と協力する「全方位外交」を展開し、国際社会での存在感を高めています。

隣国の中国やパキスタンと国境をめぐって対立しているインドにとって、ロシアは兵器の輸入で大きく依存している伝統的な友好国で、ウクライナへの軍事侵攻後も関係を維持しています。

国連総会などで採択されたロシアを非難する決議には棄権を続けてきたほか、欧米諸国が経済制裁を続ける中でもロシアから原油や肥料の輸入を大幅に増やすなど結びつきを強めています。

一方で、ロシアと対立する欧米などとも関係を深めており、日本やアメリカ、オーストラリアとの枠組み「クアッド」の一角を担い、安全保障などさまざまな分野で連携を進めています。

6月下旬にモディ首相はアメリカを訪問してバイデン大統領と会談し、防衛協力の強化や、先端技術分野での協力を盛り込んだ共同声明を発表しました。

また、モディ首相は2023年1月、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国に呼びかけたオンライン会議を主催するなど、こうした国々をけん引する姿勢を鮮明にし、特定の国や立場に縛られない外交方針を続けています。

インド GDP 2027年にはアメリカ中国に次ぐ世界3位の見通し

IMF=国際通貨基金のまとめによりますと、インドのGDPは2021年、宗主国だったイギリスを抜いて世界5位となり、2027年には日本とドイツを抜いて、アメリカと中国に次ぐ世界3位の経済規模になる見通しを示しています。

14億人を超える巨大市場と堅調な経済成長をビジネスチャンスととらえ、多くの企業がインドに進出を強めています。

このうち、アメリカのIT大手アップルはことし4月、インドで初めてとなる直営店をオープンしたほか、iPhoneの現地生産を拡大すると発表しました。

また、スズキの子会社「マルチ・スズキ」は、乗用車で国内最大のシェアを維持するなど、日本から進出する企業の活躍も目立っており、JETRO=日本貿易振興機構によりますとインドに進出した日系企業はおととしの時点で1439社と、この10年間でほぼ2倍となっています。

人口増加で生まれた課題も

巨大な人口を抱え、多くの異なる民族や文化、宗教が入り交じるインドは多くの課題を抱えています。

その1つはエネルギーの確保です。

石油は9割近く、石炭は4分の1を輸入に頼っています。

このうち石油はこれまでイラクやサウジアラビアといった中東の国々のほかアメリカから主に輸入してきましたが、ウクライナ侵攻以降は割安で手に入るとして、ロシアからの輸入が急増。

インド政府のまとめによると、2022年1年間の輸入量は2021年の8.5倍になり、国別の割合で1%から2%程度に過ぎなかったロシアが、最近ではイラクやサウジアラビアを抑え最も多くなっています。

また、若者の雇用の確保も課題で、世界銀行は、インドの15歳から24歳までの失業率は去年の時点で23.2%と、4人に1人が職につけていないという推計を出しています。

専門家 「インドの台頭劇的に 世界はもはや無視できない」

中国とインドを合わせた造語、「台頭するチャインディア」という本の著者で、アメリカ・エモリー大学のジャグディシュ・シェス教授は「かつての中国のように、インドの台頭は劇的なものになる。世界は中国とインドという2つの巨大な経済大国をもはや無視できない」と指摘しています。

その上で日本との関係については「高齢化が進む日本が優秀な人材を獲得するのにインドは最適な国だ。インドの巨大市場で勝負しなければ過去の日本の競争優位性は確保できない」と述べ、インドとの関係の強化が日本の利益につながるという見方を示しています。

一方、人口統計に詳しい「インド国際人口研究所」のデワラム・ナグデベ教授は「すでに人口が多すぎるため、喜ぶべき状況だとは言いがたい。人口が増えるとエネルギー資源や食料の需要が高まり、将来、さまざまな問題に直面することになる」と述べ、14億の人口を支える資源や食料を確保することが難しくなるおそれがあると指摘しています。

その上で「人口ボーナスを生かせるかどうかは、政府が教育や雇用にどれだけ投資するかで決まる」と述べ、豊富な若い労働力を経済成長につなげるためには、若い世代への教育や雇用創出などの対策が急務だとしています。