九州北部 きょうも大気不安定 土砂災害に引き続き警戒を

記録的な大雨となった九州北部では雨が弱まったあとも地盤が緩み、災害の危険性が高い状態が続いています。11日も大気の不安定な状態となっていて、引き続き土砂災害に警戒し、危険な場所には近づかないようにしてください。

気象庁によりますと前線の活動が活発になり、九州北部では10日、線状降水帯が相次いで発生して福岡県と大分県に一時、大雨の特別警報が発表されました。

11日午前11時の時点で、福岡県で5人、佐賀県で1人の死亡が確認されたほか、佐賀県と大分県であわせて3人の安否がわからなくなっています。

今月6日の降り始めからの雨の量は、福岡県の英彦山で600ミリを超えるなど各地で記録的な大雨となりました。

前線は対馬海峡付近に停滞していて、午前10時20分までの1時間には長崎県の対馬市鰐浦で31ミリの激しい雨が降りました。

これまでの雨で対馬市では土砂災害の危険性が非常に高くなっているとして「土砂災害警戒情報」が発表されています。

また前線の影響で、東北や北海道でも局地的に雨雲が発達しています。

これまでの雨で九州北部では地盤が緩んでいたり、川の堤防や護岸が損傷したりしているところがあり災害のリスクが高い状態が続いています。

前線北上 大気不安定続く

今後の見通しです。

前線は徐々に北上する見込みですが、11日も西日本から北日本の広い範囲で大気が不安定な状態が続く見込みです。

特に関東甲信では局地的に雷を伴って1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨が降るおそれがあります。

大雨となった地域では今後、ふだんより少ない雨でも土砂災害や川の氾濫などの災害の危険度が急激に高まるおそれがあります。

土砂災害や川の増水に引き続き警戒し、川や山の斜面など危険な場所には近づかないようにしてください。

また、東北の日本海側でも13日にかけて大雨のおそれがあります。

今後の情報に注意してください。

土の中の“タンク”には大量の水が

2018年の西日本豪雨では、天気が回復し復旧作業が進む中で広島県府中町を流れる榎川の上流で土石流が発生し、住宅に土砂が流れ込みました。

また1997年には鹿児島県出水市で雨がやんだおよそ4時間後に大規模な土石流が発生し、21人が死亡しました。

線状降水帯が発生するなど記録的な大雨となった九州を中心に、土砂災害の危険度の指標となる「土壌雨量指数」が高くなっている地域があり、今後の雨で土砂災害の危険度が急激に高まるおそれがあります。

「土壌雨量指数」は降った雨がどれくらい土の中にたまっているか、水分量を示す指標です。気象庁の大雨警報や土砂災害警戒情報はこのデータをもとに発表されています。九州では線状降水帯が発生した10日の明け方から朝にかけて「土壌雨量指数」が高くなり、夕方になってもふだんよりも高い状態となっています。

土砂災害に詳しい専門家によると、一般的に雨がやんで1日や2日では土の中の水分はほとんど抜けず、地質の違いを考慮しても、ある程度の水分が残ったままの状態が続くということです。つまり、土の中の“タンク”は水がたまった状態で抜けきっていないため、今後、少しの雨で土砂災害が発生したり、規模の大きな災害につながる危険性があります。

気象庁の土砂災害警戒情報や自治体からの避難の情報などに注意してすぐに避難できるよう準備をしておいてください。

前兆現象が起きることも

また、土砂災害が発生する前には「前兆現象」が起きることがあります。

例えば、
▽斜面から小石が落ちてくる、
▽斜面に亀裂ができる、
▽斜面から突然水が湧き出したり川の水が急に少なくなったりするほか、
▽「山鳴り」や「地響き」がするといったものです。

土砂災害警戒情報や避難の情報が出ていなかったとしても、こうした、いつもと異なる現象に気付いた場合は、すぐに崖や斜面から離れて安全な場所に避難してください。※土砂災害の前に必ず前兆が見られるわけではないことに留意してください※

特別警報解除後に氾濫 大河川の水位すぐに下がらず

2019年の台風19号では、大雨の特別警報が解除されたあと、長野県の千曲川や宮城県の吉田川など複数の河川で氾濫が発生しました。

長野市では大雨特別警報が解除されたあと避難所から自宅へ戻り、その後、川の氾濫によって自宅が浸水したという人もいました。

九州の雨は弱まっていますが、福岡県では筑後川上中流部で避難指示の発令の目安となる「氾濫危険情報」が発表されているほか、現在も水位が高い状態が続いている川があります。

山あいの広い範囲に降った雨が大きな川に流れ込むまでには時間がかかるため、雨がやんだり降り方が弱まったりしても時間差で水位が上昇するおそれがあります。
増水した川には近づかず、自治体の情報などをもとに引き続き安全な場所で避難を続けてください。