九州の土砂災害 “避難難しい「谷底平野」で相次いだ” 専門家

九州北部の各地で起きた土砂災害について、専門家は、周りが崖や斜面に囲まれた「谷底平野」と呼ばれる避難が難しい地域で被害が相次いだとしたうえで、今後の災害に備えて周囲に少しでも安全な場所がないか事前に確認するよう呼びかけています。

土砂災害に詳しい砂防学会の大野宏之会長は、九州北部の各地で相次いだ土砂災害について、現場の映像から特徴などを分析しました。

このうち、佐賀県唐津市で発生した土砂災害は、斜面の表層が崩れて土石流が起きたとみられるということです。

斜面の表層が崩れる「表層崩壊」は、平成29年の九州北部豪雨でも相次いでいて、避難などの対策が必要な「土砂災害警戒区域」や「土砂災害特別警戒区域」に自宅がある住民は、安全を確認した上で、その場から避難する必要があるとしています。

また、各地で相次いだ被害は、「谷底平野」と呼ばれる谷沿いの土砂が堆積してできた地域に多く見られるということです。

こうした地形では、雨が降ると土砂が集まり、川の氾濫も重なって同時多発的にさまざまな災害が起きるということで、「崖や斜面に囲まれているため災害から逃げるうえでものすごく難しい地形と言える」と指摘しています。

さらに、被害が出た地域は林業地帯のため、流木が水に浮きながら速いスピードで下流に流れくだり橋桁などに引っかかって川の流れをせき止めるほか、建物に衝突して非常に大きな被害を及ぼすおそれがあるとしています。

大野会長は、平成29年の九州北部豪雨でも流木の被害が際立ったとしたうえで「当時は、少し高台にある大きな建物に逃げ込んで、助かったケースもあった。避難場所へ行けないときには、地域の中の建物でより安全な場所に移動することも頭に入れて行動してほしい」と話しています。