【避難情報】九州北部で記録的大雨 引き続き安全確保

福岡県と大分県に発表されていた大雨の特別警報は午後5時半ごろにすべて大雨警報に切り替えられました。

ただ、各地で記録的な大雨となり、すでに川の氾濫や土石流などの土砂災害が相次いでいます。川や斜面などからは離れ、引き続き安全を確保するようにしてください。

大雨の特別警報は解除(17時半ごろ)

気象庁によりますと、本州付近に停滞する前線の活動が活発になった影響で、明け方以降、福岡県、佐賀県、大分県で線状降水帯が相次いで発生しました。

気象庁はきょう午後5時半ごろ、福岡県の朝倉市と久留米市、うきは市、八女市、添田町、東峰村、▽大分県の日田市、中津市に出していた大雨の特別警報を警報に切り替えました。

この時間雨のピークはいったん過ぎましたが、24時間に降った雨の量は
福岡県の▽英彦山で午前9時50分までに423ミリ、▽久留米市の耳納山で午前9時半までに402.5ミリといずれも気象庁が統計を取り始めてから最も多くなりました。

このほか▽朝倉市で午前9時20分までに349ミリ、▽大分県中津市耶馬溪で午前10時10分までに315.5ミリなどと平年の7月1か月分に匹敵する雨量となっているところもあります。

6日の降り始めからの雨量は福岡県の英彦山で600ミリを超えるなど記録的な大雨となっていて、各地で地盤が緩むなど災害のリスクが高くなっています。

「土砂災害警戒情報」が発表されている地域(17時半現在)

福岡県と佐賀県、大分県では、土砂災害の危険性が非常に高くなっているとして「土砂災害警戒情報」が発表されている地域があります。

警戒レベル3相当の「氾濫警戒情報」が福岡県や佐賀県、大分県を流れる「筑後川上中流部」に引き続き出されています。

大分県を流れる山国川上流部と花月川、佐賀県を流れる徳須恵川、福岡県を流れる小石原川、福岡県を流れる巨瀬川、佐賀県などを流れる城原川では氾濫発生情報が出ました。また、福岡県と佐賀県ではほかにも氾濫危険水位を超えている川があります。

今後の見通しです。

前線は11日にかけてほとんど位置を変えずに停滞する見込みで、西日本から北日本の広い範囲で雷を伴った激しい雨が降り、局地的には非常に激しい雨が降るおそれがあります。

11日夜は川や山沿いの渓流斜面などからは離れ、引き続き、安全を確保するようにしてください。

福岡県と大分県の一部で大雨特別警報(8時半現在)

10日午前8時半現在、大雨の特別警報が発表されているのは、
福岡県の朝倉市、うきは市、久留米市、八女市、添田町、東峰村、
大分県の日田市です。

大分県日田市 小野川の氾濫で一部地域が孤立

大分県日田市によりますと小野地区を流れる小野川の水があふれて、鈴連町、殿町、それに源栄町の一部地域が孤立しているということです。

大分中津の三光 耶馬溪 山国 本耶馬渓地域に「緊急安全確保」

大分県中津市は山国川の上流が氾濫したとして10日午前9時15分、三光地域、耶馬溪地域、山国地域、本耶馬渓地域の6056世帯1万2509人に「緊急安全確保」を出しました。これは警戒レベルのうち最も高いレベル5の情報です。

中津市では、近くの建物や自宅の2階以上、斜面から離れた場所など周囲の状況を確認し、少しでも安全な場所で命が助かる可能性の高い行動を取るよう呼びかけています。

福岡県各地に「緊急安全確保」

福岡県大刀洗町は、朝倉市の寺内ダムが緊急放流され、小石原川ダムの緊急放流についても発表があったことを受けて流域の701世帯1924人に「緊急安全確保」を発表しました。

福岡県小郡市は大雨で浸水被害が発生しているため、市内の寺福童区と大崎区、それに小板井2区の2360世帯、4579人に「緊急安全確保」を発表しました。

福岡県朝倉市は、大雨特別警報が発表されたため、10日午前6時58分に、市内に住む2万2005世帯、5万722人に対し「緊急安全確保」を発表しました。

また、福岡県添田町も大雨特別警報が発表されたため、10日午前7時20分に町内全域の4489世帯、8670人に対し「緊急安全確保」を発表しました。

福岡県東峰村も、大雨特別警報が発表されたため、10日午前6時40分に、市内の全域に住む809世帯、1868人に対し「緊急安全確保」を発表しました。

福岡県うきは市も大雨特別警報が発表されたため、10日午前7時半に市内全域の1万1376世帯の2万7988人に対し、「緊急安全確保」を発表しました。

福岡県久留米市も大雨特別警報が発表されたため、10日午前7時35分に、市内の全域に対し「緊急安全確保」を発表しました。

「緊急安全確保」は警戒レベルで最も高いレベル5で、市は少しでも安全な場所で命が助かる可能性の高い行動を取るよう呼びかけています。

気象庁「直ちに安全確保を」

福岡県内に大雨の特別警報が発表されたことを受け、気象庁と国土交通省は合同で記者会見を開き、気象庁の杉本悟史予報課長は、「特別警報を発表した地域ではこれまでに経験したことのないような大雨となっている。特に土砂災害などが想定されている地域では、何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高く、警戒レベル5に相当する。直ちに身の安全を確保しなければならない状況だ」と述べました。

その上で、「指定された避難場所への避難がかえって危険な場合には、崖から離れた建物や少しでも浸水しにくい高い場所に移動するなど身の安全を確保する必要がある。ふだん災害が起きないと思われているような場所でも最大級の警戒が必要だ。今後、ほかの市町村にも大雨特別警報を発表する可能性があり、発表されてからの避難は手遅れとなる。自分の命、大切な人の命を守るため、特別警報の発表を待たず自治体の避難の情報に直ちに従って身の安全を確保してほしい」と呼びかけました。

福岡県内のダムで緊急放流

福岡県は、県が管理するダムで緊急放流を行う予定だとしています。

緊急放流は、大雨で流れ込む水の量が多くなり、貯水できない状態に近づいた場合に流入する水と同じ程度の量を放水する緊急的な操作です。

緊急放流が予定されているのは、太宰府市を流れる山の神川の「北谷ダム」が午前8時すぎ、添田町を流れる中元寺川の「陣屋ダム」と大野城市を流れる牛頸川の「牛頸ダム」が10日午前9時半ごろとなっています。

県は、下流では氾濫のおそれがあるとして、市町村が出す避難情報にそって行動するよう呼びかけています。

筑後川水系で福岡県朝倉市内にある寺内ダムでは10日午前9時50分ごろから緊急放流が始まりました。

ダムを管理している水資源機構はこのほか、同じ朝倉市にある小石原川ダムでも、10日午前11時半ごろに緊急放流を行う可能性があるとしています。川の増水や避難の情報に警戒が必要です。

豊口課長は「今後の水位次第だが、緊急放流すると小石原川や佐田川、それに筑後川では水位の高い状態が続くとみられ、川の増水などに警戒が必要だ。現段階からの早めの避難をお願いしたい」と話していました。

「大雨の特別警報」とは

大雨の特別警報は、土砂災害や浸水など、重大な災害が発生している危険性が、極めて高いときに発表されます。

5段階の警戒レベルのうち最も高い「レベル5」にあたる情報で、数十年に1度しかないような、いわば「緊急事態」であることを示す最大級の警報です。

特別警報が出た地域の方は、少しでも命が助かる可能性が高い行動をとってください。

避難指示など自治体が発表する情報に注意して周りの状況をよく確認し、安全な場所に避難する必要があります。

ただ、激しい雨が降り続いているため、土砂災害や川の氾濫が発生していたり、浸水が広がっていたりする地域では、外に出て避難すると、かえって危険な場合があります。

周りの状況をよく確認し、外に出ることが難しい場合には無理に避難せず、建物の2階以上に上がったり、崩れるおそれがある斜面から離れた部屋に移ったりして建物の中のできるだけ安全な場所で身を守ってください。

また、特別警報が出ていない地域でも、すでに大雨や洪水の警報が出ている場合には、今後、状況が悪化して、重大な災害が発生するおそれもあります。

特別警報以外の警報が出ている地域の方も、天候の変化や、避難指示などの自治体からの情報に注意して安全な場所に避難しておくなど、早めに安全を確保してください。

土砂災害の警戒点は

九州北部では福岡県や佐賀県などで土砂災害が発生しています。

土砂災害の危険性が非常に高くなっている地域があり、厳重な警戒を続けてください。

「土砂災害警戒情報」が発表されている地域で、山の斜面や渓流の近くなど危険な場所にいる方は、ためらわず早めに安全な場所や避難所に避難してください。

すでに状況が悪化している場合は建物の2階以上に避難してください。

土砂災害から身を守るために斜面の反対側の高い階の部屋に移動することも有効です。

川の近くや低い土地、斜面といった危険な場所にないマンションなど頑丈な建物で高い階に住んでいる人は、自宅で避難生活する「在宅避難」も考えてください。

ただ、周囲に不安があれば、ためらわず避難所に移動してください。

川の氾濫に最大級の警戒を

線状降水帯が発生した福岡県や大分県、佐賀県ではすでに川の氾濫が発生し、そのほかの河川でも氾濫の危険性が非常に高くなっています。

川の氾濫や浸水の被害に最大級の警戒が必要です。

【中小河川の氾濫に警戒を】

気象庁の危険度分布=キキクルでは中小河川の洪水の危険度は警戒レベル5に相当する「災害切迫」になっている川が多数あります。

特別警報の出ている自治体では洪水や土石流に最大級の警戒をしてください。

山間部の中小河川では、土砂が一気に流れ下る、土石流のおそれがあります。

土石流の危険のある渓流沿いでは木造家屋も押し流されるおそれがあります。

また、土砂や流木などが川に流れ込むと水位が急に上昇して川の氾濫が起きるおそれもあります。

【大きな川の氾濫警戒点】

現在、雨雲が東西の方向にのび、九州北部の山あいの広い範囲で大雨になっています。

川の流域に広く雨が降っていて、降った雨が大きな川に流れ込み、今後、水位がさらに上昇するおそれがあります。

下流に当たる地域でも油断せず、自治体からの情報などに注意してください。

特に、河川のすぐそばでは堤防が決壊すると住宅が流されるおそれがあり、非常に危険です。

周囲の状況が確認できた場合には川から離れ、高台の頑丈な建物などで身の安全を確保してください。

気象台と河川を管理する国や県は、氾濫の危険性が非常に高くなっている川の流域に「氾濫警戒情報」や「氾濫危険情報」を共同で発表します。

水位が上がり氾濫の危険がある川には近づかず、気象台や自治体からの情報に注意して早めに避難することが必要です。

【むやみな移動は危険・車移動は危ない】

非常に激しい雨が降り続き、線状降水帯が発生しています。

周囲の状況がわからない場合にはむやみな移動は危険です。

国土交通省などによりますと氾濫した水の流れは勢いが強く、水深がひざの高さほどまであると大人でも歩くのが困難になります。

車での移動も危険があります。

浸水の深さが10センチから30センチでブレーキ性能が低下するほか、30センチから50センチでエンジンが停止、50センチ以上は車が浮き、閉じ込められ、流される危険があるとされています。