大谷翔平「三冠王」も視野に~進化止まらぬシーズン前半戦~

大リーグ6年目の今シーズンも投打でフル回転を続ける大谷選手。シーズンMVP=最優秀選手を受賞した2年前と同様に、ホームラン数リーグトップでシーズン前半を折り返しました。
ことしは打率も3割を超え、打率、ホームラン、打点の「三冠王」も視野に入る活躍を見せています。さらに、投手としても最多奪三振のタイトルを争うなど、その勢いはとどまるところを知りません。開幕から3か月半の間に見せた大谷選手の進化を振り返ります。

WBC優勝からシーズンイン歩み止めず

3月、WBC=ワールド・ベースボール・クラシックで日本を優勝へと導き自身もMVPを受賞した大谷選手は、WBC決勝からわずか9日後の開幕戦に投打で先発出場、2年連続の開幕投手として6回を無失点、10奪三振を奪う力投を見せました。

試合後、開幕投手を務めた心境を尋ねられるとWBCからの疲れも感じさせずにさらりとこう答えました。

「WBCの最後、クローザーでいった時の方が緊張していた。WBCのああいう舞台で気持ちも上がる、出力も出るという場面をこなせたのはプラスじゃないかな」。

4月は今シーズンから始まった新ルール、投球間の時間制限「ピッチクロック」で、投打に違反を取られた初めての選手になるなど対応に手を焼く場面もありました。

しかし、すぐに持ち前の修正力を発揮し、投手としては中5日のローテーションで登板をこなしました。

シーズン前半の投球回数は、これまでで最も多かった昨シーズンの87イニングを大きく上回る100と3分の1イニングで、初めて100の大台を超えました。

5月から6月にかけて、横に大きく曲がるスライダーの「スイーパー」を狙い打たれるケースもあり、勝利数や防御率は昨シーズンの成績を下回ったものの、奪三振数はここまでリーグ3位の「132」でタイトル争いに食い込んでいます。

シーズン後半に向けては、ここ最近状態が思わしくない右手中指の割れた爪や、昨シーズン終盤も苦しんだマメの影響をどれだけ最小限に抑え、万全の状態で投球できる試合を増やせるかがカギになりそうです。

打率とホームランの両立

一方、打者としては6月に月間MVPを受賞するなど、ここまで自己最高のシーズンを送っています。

昨シーズン、打率2割7分3厘、ホームラン34本だった大谷選手はシーズンを振り返り「打率3割近く打てるイメージでいこうと思っていた。その中でホームランがどれくらい出るかが1つのチャレンジだった」と話していましたが、この『打率とホームランの両立』という目標を今シーズンの前半戦で見事に実現しています。

打率3割2厘、ホームラン32本、71打点をマーク。自己最速で100安打にも到達し、このペースをシーズン終了まで保てば打率3割とともにホームラン56本、126打点、183安打となり、いずれもキャリアハイ、自己最高の成績を大きく更新する勢いです。

打球速度の平均などは去年やおととしと比べても大きな差はありませんが、注目すべきはストレートやツーシームといった速球に対する打率です。

おととしは打率2割7分7厘、去年は打率3割2厘でしたが今シーズンは3割3分1厘と大きく数字を伸ばしています。

相手の投手たちが大谷選手に投げるボールのおよそ半数を占めるストレートを確実に捉えていることが、打率アップにつながっています。

さらに、今シーズンから大谷選手はバットのメーカーを変更し、長さもおよそ2.5センチ長くしたものを使っています。

一般的に、バットは長くなると遠心力が出て飛距離のアップにつながりますが、その分、操作は難しくなります。

ことし2月のキャンプでバットについて、「心地よくスイングできるかがいちばん大事」と語っていた大谷選手は、操作の難しくなったこの新しいバットを使いこなし、目標である打率とホームランの両立につなげています。

大谷にかかる期待 後半戦も

大谷選手の躍進の一方で、チームの成績は芳しくありません。

チームの大黒柱、トラウト選手をはじめことしも主力選手にけが人が相次ぎ、6月17日に今シーズン最多の「8」あった勝ち越しは徐々に無くなり、チームは負け越し「1」でシーズン前半を折り返しました。

大谷選手は指名打者として先発出場するオールスターゲームをはさみ、シーズン後半初戦、7月14日のアストロズ戦で投打に先発出場する予定です。

WBCの優勝後、エンジェルスに合流した際に「やっぱりこのチームでも優勝したいという気持ちになった」と語っていたように、チームを2002年以来のワールドシリーズ優勝に導けるか、残されたレギュラーシーズンはあと71試合です。