【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(9日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる9日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア軍 損失多大で旧式戦車を投入

ウクライナ侵攻を続けるロシア軍は、戦車や装甲車などに多大な損失が出ていると伝えられるなか、旧ソビエト製の戦車を次々と送り込んでいます。

イギリス国防省はことし3月、ロシア軍が60年前の戦車を配備しているとした上で「去年の夏以降、およそ800両が倉庫から引き出された。こうした年代物の車両は、現代の戦場においては多くのぜい弱性を抱えることになる」と指摘していました。

また、ロシアの調査報道サイト「インサイダー」もことし5月、ロシア軍は新しい戦車の供給が追いついていないと指摘した上で「ソビエト時代の在庫が今になって役立っている」としています。

その上で目撃情報などをもとにロシア軍は、1960年代に生産されたT62型戦車や、冷戦時代に使われたT55型戦車などを配備していると分析しています。

ロシア国内では、ロシア軍が旧式の戦車を前線に送っているとする様子がたびたび目撃されています。

今月5日にもSNS上に、ウクライナと国境を接する西部ボロネジ州で複数の戦車を載せた列車が通過しているとする動画が投稿され、撮影したとみられる人が「T55型ではないか。新しい戦車を使い果たし、古いものを送っている」などと話しています。

ウクライナへの戦車供与 全体の6割余を引き渡し

ドイツの「キール世界経済研究所」によりますと、各国がことし5月末までの間に、ウクライナに対して供与を発表した戦車の数は、757両に上るということです。

このうち、5月末の時点ですでに引き渡しを終えたのは全体の60%余りにあたる471両で、残りの40%近くにあたる286両は、引き渡しが済んでいないとしています。

最も多く供与を表明したのは▽ウクライナの隣国のポーランドで324両、次いで▽チェコとオランダがそれぞれ89両、▽アメリカが76両、▽ドイツが55両などとなっています。

一方、供与を表明した数のうちすでに引き渡しを終えた割合を見ますと、▽ポーランドが81%、▽チェコが100%と、ロシアへの警戒感が強い国で高い傾向が見られるのに対し、▽オランダは21%、▽アメリカは24%、▽ドイツは33%などとなっています。

この研究所は、声明で各国の軍事支援について「実際は、約束された分を大幅に下回っている」として表明された支援と実態には大きな隔たりがあると指摘しています。

ウクライナ次官 クリミア橋爆発への関与認める

ウクライナ国防省のマリャル次官は8日SNSで「273日前に、ロシアの物流を寸断するためクリミア橋への最初の攻撃が行われた」と投稿し、去年10月、ロシアが一方的に併合しているウクライナ南部のクリミアと、ロシアをつなぐ橋で起きた爆発にウクライナ側が関与していたことを認めました。

橋の爆発をめぐっては、ことし5月、ウクライナ保安庁のマリュク長官も「適切な措置が講じられた」と述べていました。

マリャル次官の投稿をうけて、ロシア外務省のザハロワ報道官は9日、SNSで「テロリスト政権だ」などと投稿し、ウクライナ側を批判しました。

「アゾフ大隊」元指揮官ら トルコから帰国へ

ゼレンスキー大統領は8日にSNSで、ウクライナ東部の要衝マリウポリなどで防衛に関わった当時の「アゾフ大隊」の指揮官ら5人がトルコからウクライナに帰国することを明らかにしました。

元指揮官らはロシア軍の捕虜になったあと、トルコが仲介したロシアとウクライナの捕虜交換で解放され、その後、トルコで生活を続けていたということです。

捕虜交換にあたっては、元指揮官らがトルコにとどまることが条件になっていたとされ、ロシア大統領府のペスコフ報道官は8日、国営のロシア通信に対し、捕虜交換の合意に反する行為だと不快感を示しました。

トルコのエルドアン大統領は来月にもロシアのプーチン大統領を招いて会談を行いたい考えを示していますが、ロシアとトルコとの今後の関係に影響が出るのか注目されそうです。

ウクライナ軍 バフムトで前進か 専門家“反転攻勢はこれから”

ウクライナ軍は先月上旬から反転攻勢を続けていて、戦況を分析するイギリス国防省は「過去7日間、バフムトが激戦地の1つとなった。ウクライナ軍はバフムトの北と南で着実に前進した」と指摘しました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も7日「ウクライナ軍はバフムトで戦術的に重要な進展を果たした」としていてロシアが5月に掌握を宣言した東部の拠点バフムトでウクライナ軍が前進しているという見方が出ています。

ロシアの安全保障や核戦略に詳しい軍事専門家のユーリー・フョードロフ氏はNHKのインタビューに対し「ウクライナは12の旅団を投入する予定とされるが、戦闘に参加しているのは3つの旅団で、9つの旅団は温存されている」と述べ反転攻勢はこれから本格化するという見方を示しました。

そのうえで欧米諸国から戦車だけでなく、戦闘機やATACMSと呼ばれる地対地ミサイルなどの軍事支援を得られることが重要だと指摘しました。

ロシア軍の攻撃でリマンの市民7人死亡

ウクライナ内務省のテレグラムより

ロシア軍の侵攻も続いていて、東部ドネツク州のリマンでは8日、ロシア軍からの攻撃で市民7人が死亡し、ドネツク州のキリレンコ知事は「ロシアのテロリストが市民を攻撃し続けている」と強く非難しました。

米のクラスター爆弾の供与めぐり ロシアが批判

アメリカのバイデン政権は殺傷能力が高いクラスター爆弾をウクライナに供与すると発表しましたが、ロシア外務省のザハロワ報道官は8日、声明を発表し「アメリカは敵対行為への関与をさらに深めている。クラスター爆弾の供与はウクライナ軍の反転攻勢が失敗していることの絶望の表れだ」などと批判しています。

アメリカ政府としては、ウクライナの反転攻勢の本格化に向けて後押ししたい考えですが、使用を禁止する国際条約があるクラスター爆弾の供与について、国際的な人権団体などから批判の声も上がっています。

「自由ロシア軍」副司令官 “武装反乱後に部隊への志願者増”

「シーザー」と名乗る「自由ロシア軍」の副司令官が8日、NHKのオンラインインタビューに応じ、ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏が先月、武装反乱を起こして以降、ワグネルの部隊を戦地で目にしていないと明らかにしました。

副司令官は「『ワグネル』はロシアにとって、どんなに大きな犠牲を出しても攻撃に使うことができる唯一の道具だった」として、ワグネルの部隊がこのまま戦闘から離脱すれば、ロシア側の戦力の低下につながっていく可能性があるという認識を示しました。

また「ワグネルの武装反乱は失敗したが、その後、自由ロシア軍に加わりたいと志願するロシア人が増えている」と強調し、今回の武装反乱が、プーチン政権に反対するロシア人を勇気づける結果にもなったという見方を示しました。