米 バイデン政権 “ウクライナにクラスター爆弾供与” 発表

アメリカのバイデン政権はロシアへの反転攻勢を続けるウクライナを支援するため、殺傷能力が高いクラスター爆弾を供与すると発表しました。使用を禁止する国際条約がある兵器で議論を呼びそうです。

アメリカのバイデン政権は7日、ロシアへの反転攻勢を続けるウクライナからの要請に応じてクラスター爆弾を新たに供与すると発表しました。

クラスター爆弾は、1つの爆弾から多数の小型爆弾が飛び散る殺傷能力の高い兵器です。

一部が不発弾として残り、長期的に民間人に被害を及ぼすおそれが指摘されていることから使用を禁止する国際条約がありますが、アメリカやロシア、ウクライナは加盟していません。

ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は記者会見で「供与は容易な決断ではなかった」としたうえで「民間人へのリスクは認識しているが、ロシア軍がこれ以上、ウクライナの領土や民間人を支配下におくことも大きなリスクになる」と述べて供与を正当化しました。

サリバン補佐官はまた、民間人への被害を抑えるためクラスター爆弾のなかでも不発弾になる確率が低いものを供与すると説明し、国際条約に加盟している同盟国からも理解を得たとしています。

アメリカはクラスター爆弾についてロシア軍がすでに使用し、ウクライナの反転攻勢に必要な兵器だと強調していますが国際的な人権団体はウクライナ国内で使用されるべきではないと訴えていて、今回の決定は議論を呼びそうです。

ゼレンスキー大統領「勝利に近づける決定的な一歩」

ウクライナのゼレンスキー大統領は7日、アメリカのバイデン政権がクラスター爆弾を供与すると発表したあと、ツイッターを更新し「アメリカからの防衛支援はタイムリーかつ広範囲に及んでいて、われわれが必要としていたものだ。ウクライナを勝利に近づける決定的な一歩であり、アメリカ国民とバイデン大統領に感謝する」などと謝意をつづりました。

ロシア大使「アメリカの挑発 新たな世界大戦に近づけている」

ワシントンに駐在するロシアのアントノフ大使は声明を発表し、「現在のアメリカの挑発のレベルは常軌を逸していて人類を新たな世界大戦に近づけている。アメリカはロシアを倒すという考えに執着し、自分たちの行為の重大さに気づいていない」などと強く反発しました。

一方、ウクライナの軍事侵攻では、ロシア軍もクラスター爆弾を使用しているとアメリカ政府は指摘しています。

国連はクラスター爆弾使用に反対の立場

アメリカがウクライナにクラスター爆弾を供与することについて、国連のハク副報道官は7日、定例の会見で、記者団から国連の立場を尋ねられたのに対し「グテーレス事務総長はクラスター爆弾の使用を禁止する国際条約を支持している。当然、戦場でのクラスター爆弾の使用は望んでいない」と述べました。

アメリカによる供与への直接の言及は避けましたが、国連としてクラスター爆弾の使用に反対するという立場を明確にした形です。

バイデン大統領「供与は一時的なもの」

バイデン大統領は7日、CNNテレビのインタビューに対し、クラスター爆弾の供与に踏み切った理由について、ウクライナで砲弾が不足しているうえ、アメリカでの製造が追いついていないことを念頭に、供与はアメリカが追加の砲弾を製造するまでの一時的なものだという考えを明らかにしました。

バイデン大統領は「供与は難しい決断だった。われわれは同盟国や議会とも相談した」としたうえで「重要なのはウクライナがいま、ロシアを止めるための武器を持つのか、それとも持たないのかだ。彼らは必要だったと考える」と述べ、供与を正当化しました。

ウクライナ国防相 “使用にあたって5つの原則を守る”

ウクライナのレズニコフ国防相は7日、ツイッターでアメリカが発表したクラスター爆弾の供与を歓迎したうえで、使用にあたっては5つの原則を守ると表明しました。

具体的には、
1 ウクライナはクラスター爆弾を国際的に認められた自国の領土の解放にのみ使用し、ロシアの領土では使用しない。

2 ウクライナ市民のリスクを避けるため都市部では使わず、ロシア軍が集中している地域でのみ使用する。ウクライナ兵の危険を最小限にしながら敵の防衛線を突破するために使う。

3 ウクライナはクラスター爆弾の使用や使用された地域について厳格に記録をとり続ける。

4 領土が解放されたあとは、これらの記録に基づいて、クラスター爆弾が使用された地域で優先的に地雷除去を行う。これにより不発弾によるリスクをなくすことができる。

5 クラスター爆弾の使用とその効果について、パートナーの国々に報告し、透明性のある報告と管理の適切な基準を確実にするとしています。

レズニコフ国防相はこうした基準に比べ、ロシアは軍事侵攻の開始直後からクラスター爆弾を無差別に使用したとし、そのうえで「われわれの立場は単純だ。占領された領土を解放し国民の命を救う必要があり、敵に損失を与える必要がある」として、クラスター爆弾を使用する意義を強調しました。