ロシアのウクライナ軍事侵攻開始から500日 戦闘さらに長期化か

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから7月8日で500日となります。領土奪還を目指すウクライナは反転攻勢を本格化させるため、欧米側にさらなる軍事支援を求めていますが、ロシア側は占領した地域の防御を固めるとともに核戦力も誇示してけん制を強めています。

去年2月24日、ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ東部のロシア系の住民を保護する「特別軍事作戦」だとしてウクライナへ侵攻を始めてから8日で500日となります。

ウクライナ軍は6月上旬から反転攻勢を開始し、東部ドネツク州や南部ザポリージャ州などで欧米から供与された戦車などの兵器も投入して領土の奪還を目指していますが、進軍は当初の想定より遅れていると指摘されています。

こうした中、ゼレンスキー大統領は11日からNATO=北大西洋条約機構の首脳会議が始まるのを前に、6日から7日にかけて加盟国のブルガリアやチェコ、スロバキア、そしてトルコの首脳と相次いで会談し、さらなる軍事支援を求めています。

一方、ロシアはウクライナ東部や南部の支配地域で、地雷原を広げたり、塹壕(ざんごう)を掘ったりするなど大規模な防衛線を築いていて、ウクライナ軍の反転攻勢を止めるための防御に重点をおいているとみられます。

さらに、ロシアは同盟関係にあるベラルーシへの戦術核兵器の配備を表明し、核兵器の搬入を進めているとしていてウクライナへの軍事支援を続ける欧米側へのけん制を一段と強めています。

ロシアでは6月下旬、民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏が国内で武装反乱を起こすなど混乱もみられましたが、プーチン大統領は軍事侵攻を続ける構えを崩していません。

ゼレンスキー大統領も占領された領土の奪還を果たすまではロシアとの停戦には応じない構えで戦闘はさらに長期化する見通しです。

双方の犠牲も拡大 ウクライナの市民9000人超が死亡

長引く戦闘により、双方の犠牲も拡大し続けています。

アメリカのシンクタンクは、ことし2月、ロシア軍の兵士や戦闘員の死者数は6万人から7万人で、死傷者数が20万人から25万人だという分析を示しています。

一方、ウクライナの市民への影響も大きく、国連人権高等弁務官事務所は侵攻開始から6月18日までの間に確認できただけでも9083人が砲撃や空爆などによって死亡したと発表しました。

ただ、激しい戦闘が続く地域では正確に状況を把握できておらず実際の総数はこれを大きく上回るという見方を示しています。

市民生活を支えるインフラへの被害も相次いでいます。

去年10月上旬にクリミアとロシア南部をつなぐ「クリミア大橋」で爆発が起きると、ロシア軍は報復としてウクライナ各地の電力施設など重要インフラを狙ったミサイル攻撃を繰り返し、厳しい冬のあいだウクライナでは電力が不足し暖房が使えない状況に見舞われました。

6月にはウクライナ南部ヘルソン州のカホウカ水力発電所のダムが決壊して貯水池の水が流出し、川の下流では大規模な洪水で犠牲者が出た一方、国連は上流では21万人が深刻な水不足に陥っていると推計しています。

ウクライナ 国民の78%「軍事侵攻で家族などが死傷」

ロシアによる軍事侵攻で家族や友人が亡くなったりけがをしたりしたウクライナの国民は、8割近くにのぼることが分かりました。

これは、ウクライナの首都キーウにある調査会社がまとめたもので、調査はことし5月下旬から6月はじめにかけて国内に住むウクライナ人を対象に電話で行われました。

このうち「ロシアの侵攻によってあなたの家族や友人に亡くなった人はいるか」という質問に対して63%が「少なくとも1人はいる」と答えたということです。

さらに「ロシアの侵攻によって家族や友人が亡くなったかけがをした」と答えた人は、78%にのぼったとしています。

調査を行った会社は「ロシアによる戦争は大多数のウクライナ人の悲劇的な共通体験となった。この感情は長期間刻まれるだろう」としてウクライナの国民はいずれロシア側と行う停戦協議などで一切妥協は受け入れないだろうという見方を示しました。

【500日間の戦況】

ロシア軍 3方向から侵攻開始 広い範囲を掌握

去年2月24日、ロシア軍はウクライナ各地にミサイル攻撃を行うとともに北部・東部・南部の3方向から侵攻を開始し、南部の主要都市ヘルソンなど広い範囲を掌握しました。

ロシア軍は、首都キーウ近郊にも迫りましたが、ウクライナ軍の激しい抵抗を受けて撤退しました。

その後、ロシア軍は東部と南部での攻撃を強め、5月下旬にはドネツク州の要衝マリウポリ、7月上旬にはルハンシク州の完全掌握を宣言しました。

ウクライナ軍 徹底抗戦 一部を奪還

徹底抗戦を続けるウクライナ軍は、アメリカから供与された高機動ロケット砲システム=ハイマースなどを活用して反撃を進めました。

去年9月にはロシアに掌握されていた東部ハルキウ州のほぼ全域を、さらに11月には、南部ヘルソン州のドニプロ川の北西側にある中心都市ヘルソンを奪還しました。

ロシア 長期戦見据えた態勢へ こう着続く

一方、ロシアのプーチン大統領は、去年9月30日、東部と南部の4つの州の併合を一方的に宣言しました。

予備役の部分的な動員にも踏み切り、長期戦を見据えた態勢も整えていきます。

冬の間、前線の戦況はこう着していましたが、ことしに入り、ドイツ製の「レオパルト2」など主力戦車を供与する国が相次ぐなど、欧米側の軍事支援の動きが加速します。

ウクライナ 大規模な反転攻勢へ

ウクライナは兵士の訓練など反転攻勢に向けた準備を急ぎ、ことし6月10日、ゼレンスキー大統領が「反転攻勢と防御の軍事行動が行われている」と述べ、反転攻勢の開始を認めました。

作戦が行われているロシア側の支配地域には、塹壕(ざんごう)や地雷原などからなる防衛線が幾重にも張られているほか、ロシア軍による航空戦力の強化などで、反転攻勢の進展が当初の想定より遅れているという指摘も出ています。

さらに、南部にある水力発電所のダムの決壊や、民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏による武装反乱なども起きるなか、ウクライナ側は南部クリミアを含めた領土の奪還を目標に掲げて東部や南部で反転攻勢を進めています。