日本固有種「ギフチョウ」 植物の多様化に合わせて分布拡大か

「春の女神」と呼ばれる日本固有種のチョウ「ギフチョウ」は、幼虫が食べる植物の多様化に合わせて本州に分布を広げたと考えられることを岐阜大学などの研究グループが遺伝子の解析から突き止めました。日本を代表する昆虫の一種がどのように現在の分布を形成したのかを知るうえで重要な発見として注目されます。

年に一度、春に見られ、色鮮やかな姿から「春の女神」とも呼ばれるアゲハチョウの一種「ギフチョウ」は日本の固有種で各地で保護活動が進められています。

最初に見つかり、名前の由来となっている岐阜県をはじめ東北から中国にかけての本州に分布しています。

岐阜大学の土田浩治教授などの研究チームは、愛好家が各地で採集したギフチョウの標本の遺伝子を解析し、分化の過程を調べました。

その結果、およそ90万年前を境に遺伝的に多様化しており、東北から関西の日本海側にとどまっていた分布が、愛知県などの東海、山口県などの中国、神奈川県など関東の順に段階的に広がったと推定されるということです。

分布拡大のカギになったのが、ギフチョウの幼虫が食べるカンアオイで、この植物はおよそ650万年前には国内で分化しはじめたとされていることから、カンアオイの多様化に適応する形でギフチョウが本州各地に分布を広げたと考えられるとしています。

土田教授は「日本列島におけるギフチョウの“歴史”が分かる結果だ。遺伝子の解析は歴史学のようで昔の出来事を推察できるのがおもしろい」と話していました。