紙だけでできた服 知ってますか?

連日、暑い日が続いていますが、みなさんの服、どんな素材が使われていますか?実はいま、紙だけで作られた服が注目されているんです。シャツやズボンなど、紙のイメージとは違って軽くて丈夫で洗濯もできるそうなんです。なぜ、紙なのか。取材しました。

紙の糸を生産する工場では

都内に本社がある服の素材などを作るメーカー。新潟県阿賀野市の工場ではおととしから和紙の糸を生産しています。

工場ではまず、マニラ麻を原料にした紙を細長く裁断します。そして何度も何度もねじり、強度を上げていきます。

伸び縮みしやすくなるよう、筒状に編み、それをほどくなどの工程を重ねていきます。

紙の糸が完成するまでに早くても1か月半はかかるといいます。

紙の糸にはすき間が多いため、通気性もよく、消臭効果もあるとされています。

このメーカーでは大学とも連携して試行錯誤を重ねた結果、およそ8年かけて紙の糸の製品化を実現。

工場からは紙の糸が1か月に3トンから5トンほどが生産され、シャツや靴下、ズボン、ストールなどさまざまな商品が作られ、販売されています。

軽くて洗濯も可能

実際に紙の服を着てみると、とても軽く、さらさらした肌触りでした。

独特の製法により、紙で出来ていても一般的な衣料品と同じように洗濯もできます。実際に水に浸して思いっきり引っ張っても、変化はありませんでした。

紙の糸の価格は、綿の糸のおよそ10倍です。それでも環境への意識の高まりや、機能性の高さから、アパレル業界やカーテンメーカーなど、さまざまな業界から引き合いがきていると言います。

環境面でも期待

紙の服は、環境面でも期待されています。

原料になるマニラ麻は、少ない水で育ち、農薬もほとんど使いません。

また、紙だけでできた服は、土にかえります。

廃棄の際にも環境の負荷が少ないと言われています。

メーカーによりますと、紙の服は、3か月から半年で完全に分解されます。分解される過程で土の中の微生物を増やす効果があるとされていて、野菜を育てるのにも役立てられています。

キュアグループ 藤代政己 会長
「インテリアやカーテンベッドリネンの関係からも問い合わせがきていて期待を持っていただいているところが増えてきています。そういう意味ではチャンスはまた十分出てくるのかなと思っています」

紙の服は昔からあった

紙の服について専門家にも話を聞きました。

日本では昔から服の素材として使われてきたといいます。

被服の材料に詳しい 大妻女子大学 平井郁子教授
「紙を糸にせず、そのまま服にしたものは “紙衣(かみこ)”と呼ばれ、奈良時代からありました。風を通さないので防寒の役割を担ってきました。また武士が鎧の下に着る服も紙のものがありますが、これも防寒のためです。紙は保温性が高く、重宝されてきた」

広がる紙の糸!

紙の糸を使った商品の開発は服以外にも広がっています。

アパレル向けに紙の糸を販売してきた都内のメーカーは、紙の人工芝を開発しました。

紙を太くねじることで、本物の芝のような質感を生み出しました。プラスチック製の人工芝と比べて摩擦熱が発生しにくいため、ケガをしにくく、軽くて水はけがよいというメリットもあるといいます。

またメーカーによりますとプラスチックの場合は、破片が海に流れ出して生態系への影響が懸念されていますが、紙であれば、自然に分解されるのでこうした心配もないといいます。

今後、より耐久性をあげるとともにコスト削減に取り組むなどして、紙でできた人工芝の今年度中の商品化をめざしています。

王子ファイバー 平井雅一社長
「天然の素材で人工芝が作れれば、環境に対して貢献が出来るんじゃないかなと考えました。価格の面も含めまして、紙の糸がより皆様に近い商品としてご提供できるようになっていくのではないかと思います」