社会

安倍元首相銃撃事件1年 様変わりする現場 そして被告の供述は

安倍元総理大臣が奈良市で演説中に銃撃された事件から8日で1年となります。

現場の状況は様変わりし、旧統一教会の元信者を支援してきた弁護士グループはきょう、声明を発表しました。

これまでの被告の供述から見えてきたものは。

人工芝の広場や花壇が

去年7月8日、奈良市の大和西大寺駅前で参議院選挙の応援演説をしていた安倍元総理大臣が銃撃されて死亡した事件では、無職の山上徹也被告(42)が殺人や銃刀法違反などの罪で起訴されています。

事件現場は、ことし3月末に、奈良市が進めていた道路整備が終わり、近くには人工芝の広場や花壇が設けられています。

事件から1年となる前日の7日、花壇に花束を供えたり、足を止めて手を合わせたりする人の姿が見られました。

8日は、自民党の有志らで作る団体が現場付近に、献花台を設けることにしています。

団体は、不審物への対策などとして、花以外のものは供えないよう協力を呼びかけています。

捜査関係者によりますと、山上被告は捜査段階の調べに対し、母親が多額の献金をしていた「世界平和統一家庭連合」、旧統一教会に恨みを募らせた末、事件を起こしたなどと供述していました。

事件は裁判員裁判で審理される予定ですが、争点を絞り込む公判前整理手続きがいつ始まるかは未定で、弁護団によりますと、初公判は来年以降になる見通しだということです。

銃撃事件当時から様変わりした現場

安倍元総理大臣が銃撃された大和西大寺駅近くの現場は、奈良市がもともと進めていた道路の整備計画が完了し、事件の発生当時から大きく様変わりしています。

奈良市は事件の前から、現場となった駅前について道路や広場を整備しようと作業を進めていました。

しかし、銃撃事件を受けて、市には慰霊碑といった事件があったことを示すものを設置するよう求める声が寄せられるようになりました。

このため、市はこの場所を、
▽緑地帯にする案、
▽「歩道」にして近くに慰霊碑などを設ける案、
▽従来の計画どおり「車道」にして慰霊碑などを設けない案の3つの案を示し、有識者や住民などから意見を聞きました。

その結果、「車両や歩行者の通行の妨げにならない場所に何か残せたらいい」といった慰霊碑などの設置に賛成する声もありましたが、「市民にとっては思い出したくない」とか、「住んでいる人や、子どもたちがやすらぎ、集える場所になるようにしてほしい」など、設置しないほうがいいという意見が多く寄せられたということです。

市はこれらの意見を踏まえて、当初の計画どおり「車道」として整備し、周辺に花壇を設ける一方、慰霊碑など弔意を示すような「構造物」は作らないことを決め、ことし3月末に工事は終了しました。現場周辺には時折、花や飲み物などが供えられています。

山上被告の供述と発言

山上徹也被告は殺人の罪のほか、手製の銃を所持していた銃刀法違反や許可を得ずに武器を製造した武器等製造法違反などの罪で起訴されています。

山上被告は母親が多額の献金をしていた「世界平和統一家庭連合」、旧統一教会に恨みを募らせた末、事件を起こしたとみられています。

捜査関係者によりますと、被告は捜査段階の調べに対し「母親が旧統一教会にのめり込み多額の寄付をするなどして家庭生活がめちゃくちゃになった」といった趣旨の話をしたということです。

元総理をねらった理由については「政治信条への恨みではなく、安倍元総理が教団と近しい関係にあると思った。これまで教団の総裁をねらっていたがうまくいかず、新型コロナの影響で来日しないため、安倍元総理を標的にすることを決めた」などと供述していたということです。

奈良地方検察庁は、供述と事件との間に飛躍があるため、去年7月からことし1月までの半年近くにわたって「鑑定留置」をして精神鑑定を行い、その結果を踏まえて刑事責任能力があると判断しました。

捜査関係者によりますと、この鑑定の際、被告は「旧統一教会などについてもっと話を聞いてほしい」という趣旨の発言をし、旧統一教会や家族との関係などについて話し足りない様子だったということです。

一方、被告の弁護団は、経緯や動機などについては、裁判に影響が出るとして明らかにしていません。

弁護団によりますと被告は現在、大阪拘置所で勾留されていて、親族や弁護士以外との接見は拒否しています。

ことし4月からは弁護団を通じて報道陣の質問に一部答え、旧統一教会の問題を受けて整備された被害者救済の法律については「意見を持つほど分かっていないが、被害者が救済されることを願っている」と話したということです。

6月12日には、裁判に向けて争点を絞り込む1回目の公判前整理手続きが、奈良地方裁判所に不審物のおそれのある段ボール箱が届いたため、中止となりました。

弁護団によりますと、被告は「爆発物でなくてよかった」、「自分が出席することでこのような騒ぎが起きた。手続きに出席するかどうかはよく考えたい」という趣旨の話をしたということです。

山上被告と旧統一教会

「世界平和統一家庭連合」、旧統一教会によりますと、山上徹也被告の母親は、25年前の1998年ごろに入会した信者だということです。

被告の供述や親族の話などから被告が奈良県内の進学校に通う高校生だったころ、母親は教会への信仰を深めていったとみられています。

母親は、長年にわたり、死亡した父親の生命保険金や、家族が所有していた不動産を売って得た金などあわせて1億円近くを旧統一教会に献金していたとみられています。

被告は数年前からSNSで、旧統一教会について繰り返し投稿していたとみられていて、このなかで、
「すべての原因は25年前と言わせてもらう。なぁ統一教会」
「オレが憎むのは統一教会だけだ」などと投稿されていました。

被告は、銃撃事件の前日に、奈良市内の旧統一教会の関連施設が入る建物を銃撃して傷つけた罪でも起訴されています。

弁護士グループ「多くの問題は解決されず残されたまま」

旧統一教会の元信者を支援してきた全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士らは7日、記者会見を開き、安倍元総理大臣が銃撃された事件から1年となることについて声明を発表しました。

声明を読み上げた木村壮弁護士は「被害者救済新法の成立や宗教虐待などを念頭においたガイドラインの作成など大きな変化があったが、多くの問題はいまだに解決されずに残されたままだ。今後、旧統一教会による種々の被害を再び生み出さないためにどうするべきか、すでに生じた被害をいかに救済すべきかを改めて考えるべきだ」などと訴えました。

声明ではこのほか、
▽被害者救済新法の執行の強化や見直し、
▽速やかな解散命令請求の申し立て、
▽いわゆる宗教2世への宗教虐待などに対処するための法整備などを求めていて、旧統一教会や主要政党、関係省庁などに対して送るということです。

奈良県警 安枝亮本部長コメント

「事件発生から1年を迎えるにあたり、あらためて、心より、お亡くなりになられた安倍晋三元内閣総理大臣のご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご遺族にお悔やみを申し上げます。当県警察では、二度とこのような事態を発生させないとの決意のもと、警護体制の強化などの取り組みを進めております。引き続き、全職員が一丸となって、県民・国民の皆様の信頼回復に努めてまいります」

松野官房長官「選挙での暴力行為は断じて許されない」

松野官房長官は、記者会見で「民主主義の根幹をなす選挙での卑劣な暴力行為は断じて許されない」と述べました。

その上で、選挙活動を安全に行えるように候補者らの陣営と警察が適切に連携して対応していく必要があるという認識を示しました。

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